【小児科医監修】はしか(麻疹)
【症状】高熱が続いて体力を消耗。合併症も怖い病気
高熱が続いて全身に発疹が広がり、症状が重く体力を消耗するので、子どもにとって非常につらい病気です。
はしかに伴って起こる合併症も深刻で、見逃せません。肺炎や中耳炎のほか、脳炎を起こすこともあり、重大な後遺症を残したり、最悪の場合は生命にかかわるケースもあります。
はしかは、昔は「命定め」といわれたほど死に至る人が多く、人々におそれられた病気です。ほんの50年ほど前までは、日本でも数千人規模の人がはしかで死亡していました。
その後、ワクチンの普及や医療の進歩により、はしかで命を落とす人は激減しましたが、それでも毎年20人ほどがはしかで亡くなっています。しかもその大半は0〜4歳の乳幼児です。
原因
原因は、麻疹ウイルスの感染です。くしゃみやせきで飛び散ったウイルスを吸い込む飛沫感染や、空気中を漂っているウイルスが鼻やのどの粘膜につく空気感染でうつります。
麻疹ウイルスは大変強力なウイルスで、はしかにかかっている子といっしょに遊んだり、きょうだいがかかると、必ずといっていいほどかかります。
赤ちゃんは、ママのおなかの中にいるときに、ほかの病気の抗体とともに麻疹の抗体ももらって生まれてきます。しかし、生後6か月ごろになると、その抗体はなくなるので、それ以降ははしかにかかりやすくなってしまいます。
はしかの経過
■カタル期(2~4日間)
麻疹ウイルスの潜伏期間は、10〜12日くらい。その後発症し、カタル期には、38度前後の発熱とともに、せきやくしゃみ、鼻水といったかぜに似た症状が現れます。この段階では、かぜと見分けがつかないかもしれません。
しかし、3〜4日目になると、せきや鼻水がひどくなり、目が充血し、目やにがべったりと出て、ふつうのかぜとは異なる重症感があります。
さらにこのころ、ほおの内側の粘膜に小さな口内炎のような、白っぽいプツプツが数個から数十個現れます。これはコプリック斑と呼ばれるはしか特有の症状です。これが出てくれば、はしかと診断がつきます。このコプリック斑が出る前だと、たとえ受診しても、はしかだと診断できません。
■発疹期(3~4日間)
コプリック斑が出た後、3〜4日続いた熱はいったん37度台まで下がりかけ、その後半日から1日後に再び上昇。40度前後の高熱になります。
このころ、小さな赤い発疹が耳の後ろあたりから出始め、胸、おなか、背中から手足の先へと出て、全身に広がります。しだいに隣り合った発疹どうしがくっついて大小さまざまな形になり、皮膚がまだらになったように見えてきます。
発熱や発疹以外にも、口の中がただれたり、目の充血や目やに、下痢などの症状が見られます。せきも激しくなり、声もかすれて、子どもはグッタリしてしまいます。この期間がもっとも症状が重い時期といえるでしょう。
■回復期(3~4日間)
発症から7〜10日ほどたつと、熱が下がってせきや鼻水も治まります。しかし、完全に体力が回復するには、それからさらに2週間ほどかかり、せきだけがしばらく続くこともあります。赤い発疹は茶色のしみになり、1か月ほどで消えてなくなります。あとが残ることはありません。
合併症
はしかそのものの症状の重さもさることながら、気をつけなければならないのは、麻疹ウイルスや細菌の二次感染による合併症です。可能性としては、肺炎、気管支炎、クループ、心筋炎、中耳炎などが起きる心配があります。
特に、はしかで抵抗力が落ちているときに、肺炎球菌、インフルエンザ菌、化膿連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などほかの細菌が二次感染して細菌性肺炎になると重症になります。
また、1000人に0.5〜1人とまれではあるものの、ウイルスが脳に侵入して麻疹脳炎を併発することがあります。けいれんや意識障害を起こし、約15%の人は命を失います。治ったとしても、20〜40%の人には手足のまひや知的障害などの後遺症が残ってしまいます。
この肺炎と脳炎が、はしかからくる二大死因とされています。
亜急性硬化性全脳炎
さらに、はしかにかかった人10万人に1人程度の割合で、完治して数年から十数年後に亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を起こすことがあります。これは、知能の低下、けいれん、意識障害などの症状が徐々に出てきて、発症から6〜9か月で亡くなるという病気です。現在のところ、この病気の治療法はありません。
【治療】ケアをしながら安静に過ごす
熱が続いていたら、小児科を受診しましょう。受診の際は、必ず事前に連絡を入れること。ほかの子にうつさないためのマナーです。すでに発疹が出ていたら、そのようすも伝えます。
入院
はしかにかかると、飲んだり食べたりできず、さらに眠れなくなって全身状態が悪化し、体力を消耗します。そのため、入院してようすを見ながら治療するケースが多くなります。ただ、麻疹ウイルスに有効な薬はないため、症状に応じた治療が中心になります。
安静
入院せずに家庭でケアをする場合は、熱が下がって発疹が薄くなるまで、家の中で安静に過ごしましょう。室温を調整し、温めすぎや着せすぎに注意して熱を発散させるようにします。
中耳炎や肺炎など、二次的に起きる細菌感染の予防のため、抗生物質が処方されるので、医師の指示どおりに飲ませてください。
なお、呼吸が苦しそう、頭痛、嘔吐、意識がなくグッタリしている、などのようすがあるときは、合併症を起こしている可能性もあります。至急受診を。
水分補給
高熱が続くので、脱水症の予防に水分をたっぷり与えます。赤ちゃん用イオン飲料、湯ざまし、麦茶などの水分を、時間や回数にこだわらずにこまめに与えます。食事は、無理に与えなくてもかまいません。水分がとれないほど状態が悪いときは、至急受診してください。
おふろ
熱がある間は、短時間のシャワー程度に。湯ぶねに入るのは、体力が落ちているので体に負担になってよくありません。入浴は熱が下がって3〜4日たってからにしましょう。
1歳になったら早めに予防接種を
はしかは症状が重く、合併症や後遺症も怖い病気。かかる前に予防することがなによりです。1歳になれば、麻疹ワクチンを含む麻疹風疹混合(MR)の予防接種を定期接種として公費で受けることができます。
まだ予防接種を受けないうちに、はしかにかかった子に接触した場合は、72時間以内であればワクチンで発症をくいとめられる場合があります。また、72時間以上経過した場合でも、6日までならガンマグロブリンという血液製剤で発症を抑えたり症状を軽くできる可能性が。かかりつけの小児科で相談してください。
ただ、どちらも100%の効果があるわけではありません。それにガンマグロブリンは相当量を注射する必要がありますし、その後3か月間は、他の予防接種を受けられなくなってしまいます。
ですから、これらはあくまでも緊急措置です。やはり1歳になったら、できるだけ早くワクチンを接種するのがいちばんです。
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