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【形成外科医監修】傷の消毒、する?しない? 「湿潤治療」についてプロに聞いてみた

【形成外科医監修】傷の消毒、する?しない? 「湿潤治療」についてプロに聞いてみた

「包丁で手を切った」「転んですりむいた」日常の中で発生しがちな切り傷や擦り傷。
傷ができたらたらまず消毒……!と考えがちですが、現代では消毒をせず、傷を乾かさずに治療する「湿潤治療」があります。傷ができても慌てず正しくケアする方法を形成外科の先生に聞きました。
「包丁で手を切った」「転んですりむいた」日常の中で発生しがちな切り傷や擦り傷。
傷ができたらたらまず消毒……!と考えがちですが、現代では消毒をせず、傷を乾かさずに治療する「湿潤治療」があります。傷ができても慌てず正しくケアする方法を形成外科の先生に聞きました。

切っちゃった!切り傷や転んでできた擦り傷は消毒するべき?

転んだり刃物などで切ってしまいできた傷。
早く処置しなくちゃ!と、痛いのを我慢してあわてて消毒液で消毒しているという方も少なくないのではないでしょうか。
切っただけでも痛いのに、消毒液が傷にしみて痛みも倍増しますよね。
でも実は、消毒しない方が早く傷が治るのだとか。

先生からのひとこと

「傷はきれいに洗い、消毒しない方が、実は“早く”しかも“キレイ”に治るのです」

(てしまクリニック院長・手島玲子先生)

「傷ができた時の正解は、“傷を消毒しない”こと、そして“乾かさないこと”。
傷を消毒せず、そして乾燥させずに治す方法を『湿潤治療(うるおい治療)』といいます」
と手島先生は説明してくれました。

「傷は消毒」その常識の裏側

これまでの生活で、傷は消毒するものであると思っている方には、ちょっとびっくりする事実ではないでしょうか。
では、なぜ今までの常識では“消毒した方がよい”と考えられてきたのでしょうか。

それは、まだ医療が今ほど発展していない時代に理由がありました。

「昔は、術後の傷から入る細菌が感染症を起こし、感染症により死亡する人もいました。
傷をきれいに洗うための水道設備も十分ではなく、抗生剤などない時代の話です。

そんな中、イギリスのジョセフ・リスター(1827年4月5日生〜1912年2月10日没)という外科医が、感染症は傷から入る細菌によるものだと気づき、消毒をすることで感染症による死亡率を軽減させたのです。
それ以来、“傷を消毒することが大事である”という考えが外科医の間で広まりました。

さらに、傷を乾燥させると、菌が繁殖できなくなります。
そのためガーゼを当て、包帯を巻くことで保護した傷口を乾燥させ、菌が繁殖するのを防いでいました。
こうした方法が徐々に一般常識となっていったのです。

そもそも消毒とは、皮膚の表面に付着した細菌を殺すことをいいます。
消毒薬は、細菌の細胞膜と細胞質を破壊することで細菌を死滅させます。

傷のない皮膚はふだん、角質層というバリアに守られています。

しかし、傷ついた皮膚は細胞膜がむき出しの状態になってしまっている状態なのです。

消毒液自体に、細菌と人体細胞の見分ける能力はありません。
しかも、細菌の細胞は細胞壁という丈夫な構造で守られています。
そのため、傷に消毒液をかけると、むき出しになった人体細胞の方がダメージを受けてしまい、かえって傷が深くなってしまう可能性があるのです。
以上のことから、傷は消毒しない方が、皮膚の細胞が早く再生するのです」(手島先生)

また、傷の完治には細胞が再生する必要がありますが、乾燥した環境では細胞が増えることができず、十分に皮膚の再生ができなくなってしまうそうです。

「洗ったあとは、創傷被覆材で傷を保護し、ほどよく潤った状態をつくり、傷が治りやすい環境を保つのが大切です」(手島先生)

傷を消毒すると、皮膚の細胞の再生を遅らせてしまう理由はお分かりいただけたでしょうか。
また、傷が再生するのに最適な環境をつくるには、適度に潤いを保ち乾燥させないことも重要なのですね。


子どもが走りまわれるようになると増えてくるのが、転んでできる傷ではないでしょうか。
外出先で転んで傷ができた場合も、まずは一番に洗うことがポイントなのだそう。

「まずは水道水でしっかり洗い、傷についてしまった砂利などの汚れを落としましょう。消毒せずに、洗えば充分です」(手島先生)

子どもが治りかけの傷をいじってしまう……!傷いじりをやめさせる方法

先日、子どもが怪我をしました。

先日、子どもが転んでできた傷が治りかけてきました。かさぶたができてきたのですが、子どもがいじってしまい傷がひどくならないか心配です。傷いじりをやめる方法はありますか?

  • まずは叱らないことが大事

    「いじるのやめなさい!」と叱りたくなる気持ちはわかりますが、叱らないようにしてあげましょう。
    傷は治ってくるとかゆみができます。触ることによる刺激で余計かゆさが増すので、その刺激を止めてかさぶたを剥がしてしまうのを防ぐため、傷を上から保護してあげることが大事です。
    たとえば、かわいらしい柄の絆創膏を貼ってあげてみてください。お気に入りのイラストのものなら貼っている間、機嫌もよいでしょうし、傷の保護になります。
    絆創膏でかぶれやすいお子さんには、ワセリンを塗って乾燥を防いであげるのもよいでしょう。かゆみは乾燥によって増す傾向があるので、ワセリンで保湿するのは効果的です。舐めても安全なので、安心して使えます。(手島先生)

_______

傷ができた時の正しい手当ての仕方を通して、湿潤治療をご紹介しました。
新しい治療方法に、驚く方も少なくなかったのではないでしょうか。

軽い傷ができてしまった時には、ぜひ参考にしてみてください。

ただし、手に余るような傷や深い傷の場合は病院にかかることもお忘れなく!

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