【助産師監修】抱き癖はいつからつく?抱っこが必要な赤ちゃんの寝かしつけ方法
「抱き癖」という言葉について
いつの時代からでしょうか、「抱き癖」という言葉が子育て用語の中に出てきました。調べてみると、1950年代のアメリカのスポック博士の育児書が日本に入った頃から使われ始めたようです。この本では、子どもの自立心を養うため泣いても抱っこしないことをおすすめしていました。
しかし、これは愛着の形成を大切にする現代の子育てからいうと、時代錯誤な考え方になっています。
そもそも、生まれたばかりの新生児時期というのはどんなときか、をもう一度考えてみましょう。
生まれる前まで温かな胎内で、周りをしっかりと覆ってくれる子宮と羊水の中に暮らしていたので、肉体的なストレスはほとんどありません。
そんな環境にいた赤ちゃんが、出産を乗り越えてママの体外で暮らすことが始まると、重力やまぶしさ、大きな音を感じながら、胎内よりもおよそ10度も低い室温で過ごさなくてはなりません。
そのなかで赤ちゃんが持つ唯一の発信手段が「泣くこと」。そして、温かく安心できる子宮での環境に近い「抱っこ」されることで、泣き止むことが多くなります。
泣いているときにレスポンス(反応)を感じるなど環境に働きかけることで、環境を変化させ自分のニーズを満たしていくことを「コンピテンス」と呼ぶのですが、赤ちゃんの成長にとって大切な力になります。
例えば、泣いているときに抱っこされるという周囲のレスポンス(反応)を感じるなどが当てはまります。泣くことと抱っこされることは、赤ちゃんが環境と交渉する力を育むことでもあるのです。
生まれて3ヶ月までは「おなかすいた、おむつが濡れた、服のしわがいたい」など、生理的な不快感について訴えます。
3ヶ月以降は、「自分に関わってほしい」というような泣き方をするかもしれません。これを「抱き癖」と呼ぶ人がいるかもしれませんが、これは先ほどのコンピテンスを成長させるために大人が必要な反応をすることが大切です。
抱き癖はいつからつく?
赤ちゃんにはそれぞれ個性があるので、一概に「いつから始まる」ということはできません。
抱き癖という考え方よりも、「赤ちゃんのニーズ」としてとらえ、できる限り抱っこしてあげましょう。
物理的に難しい場合は、ねんねする場所の工夫や赤ちゃんをおくるみで巻いて、安心感を持たせてあげることで少しは解消されるかもしれません。
大切にしなくてはいけないのは、赤ちゃんをコントロールすることではなく、赤ちゃんにどんなサポートができるかを考えることです。家族のサポート以外にも、産後ケアやファミリーサポートなど、外部サービスもできるだけ活用していきましょう。
抱っこしないとなかなか寝てくれない赤ちゃん……どうすればいい?
月齢が低いほど、抱っこしていないと寝てくれないというケースも増えます。
特に生後0〜3ヶ月までは、大人が育児に慣れていない中、頻繁な授乳やおむつ替えが重なり、一番大変な時期でもあります。
そのため、可能な限り周囲のサポートも受けながら、お互いに支え合って子育てをしていきたいところです。
赤ちゃんが眠るための環境作りの工夫としては、夕方から夜にかけて少し明かりを暗くしたり、テレビやスマートフォンの液晶画面を見せないようにするなどがおすすめです。
もっとたくさんの人の手を借りて子育てを
ママだけでなく、パパも積極的に育児休業をとるように政府も動き始めています。ぜひ活用しましょう。
家族だけで頑張っていくとどうしても苦しくなっていくこともあります。「抱っこしていないとすぐに泣いてしまう……」などのお悩みを持つ場合は、外部の子育てサポートを受けるほか、宅配サービスや食事の作り置きサービスなど、家事のアウトソーシングも利用してみましょう。
それぞれ個性はあるものの、多くの赤ちゃんは寝返りやハイハイなど、自分で動くことが楽しくなってくると泣く回数も抱っこの回数もだんだん減っていきます。
赤ちゃんは日々少しずつ成長していきます、ずっとこのような状態ではなく、できることも少しずつ増えて、大人も赤ちゃんとの暮らしに少しずつ慣れていくはずです。
焦らず、サポートなども活用しながら過ごしてくださいね。
・参考:林洋一(監修)、「史上最強よくわかる発達心理学」、ナツメ社、2010年
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