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妊娠中毒症

【医師監修】妊娠中毒症とはどんな病気?妊娠高血圧症候群の診断・症状・予防について

妊娠高血圧症候群はママと赤ちゃんの生命にかかわる重大な病気で、かつては妊娠中毒症と呼ばれていました。誰でもかかる可能性がある病気ですが、どのような症状やリスクが伴うのでしょうか。今回は妊娠高血圧症候群についてお伝えします。

妊娠高血圧症候群はママと赤ちゃんの生命にかかわる重大な病気で、かつては妊娠中毒症と呼ばれていました。誰でもかかる可能性がある病気ですが、どのような症状やリスクが伴うのでしょうか。今回は妊娠高血圧症候群についてお伝えします。

妊娠中毒症から妊娠高血圧症候群へ

妊娠中に高血圧、たんぱく尿、浮腫(むくみ)のいずれかを発症する病気を、かつては「妊娠中毒症」と呼んでいました。これは、妊娠することで胎児や胎盤から発生した毒素が、母体にさまざまな異常を引き起こすと捉えられていたためです。

しかし医学研究が進むにつれて、高血圧が「妊娠中毒症」の主体であるとの考えが強まり、2005年に「妊娠高血圧症候群」へと名称が変更されました。

最近では浮腫の症状はほとんどの妊娠中のママに見られ、単独での症状だけではママと赤ちゃんへの影響を及ぼさないことから、浮腫は定義から削除されています。

妊娠高血圧症候群とは?

妊娠中に高血圧を認めた場合を妊娠高血圧症候群といいます。

これは妊娠前からもともと血圧が高かったケースも含みます。

高血圧の診断基準となる血圧の数値の目安は、収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上です。

妊娠高血圧症候群はママとおなかの赤ちゃんに重篤な影響を及ぼす場合もあるため、妊娠中に気をつけなければならない病気の一つです。

妊娠高血圧症候群の原因は?

通常妊娠すると、子宮の血管であるらせん動脈が拡がり、胎盤にママの血液を送り込みます。しかし場合によっては、らせん動脈がうまく広がらず胎盤への血流が悪くなり、酸素の運搬も十分でなくなります。

胎盤の低酸素状態により、胎盤内で異常に作り出された物質が、ママの全身の血管に作用するためではないかといわれています。

また、妊娠高血圧症候群は、もともと高血圧・糖尿病などの持病がある、肥満(BMI25以上)、40歳以上、多胎妊娠、初めての妊娠といった場合、発症するリスクが高くなります。

ママと赤ちゃんへのリスク

妊娠高血圧症候群が重症化すると、けいれん発作(子癇)、肝機能障害に血小板減少と溶血を伴うHELLP(ヘルプ)症候群、肝臓や腎臓の機能障害などを引き起こすことがあります。

また、胎児発育不全や常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり/正常な位置にある胎盤が出産前に子宮壁からはがれた状態)、赤ちゃんの状態が悪くなるなど、ママと赤ちゃんの生命にかかわる危険な状態に至る場合もあります。

食事や、日常生活をコントロールしても血圧が下がらない場合には入院して治療をします。安静や降圧剤などによっても血圧の値が改善せず、ママの体の負担が大きい場合には、出産の時期を早めることもあります。

妊娠高血圧症候群の症状

初期の段階では自覚症状がないため、注意が必要です。

妊婦健診を欠かさないようにして、定期的に血圧をチェックしましょう。

また重症化すると、目がチカチカする、頭痛や耳鳴り、吐き気などの症状が出ることがあります。何かいつもと違う症状がある場合には無理せず医師に相談しましょう。

出産後に気をつけること

出産後は症状が軽くなる場合が多く、出産後12週までには妊娠前の状態に戻ることがほとんどです。

しかし、妊娠高血圧症候群を発症すると、将来高血圧になるリスクが比較的高いことが分かっています。

産後も自分の血圧をチェックし、食生活や体重の変化などにも注意していくことが大切です。

妊娠高血圧症候群の予防法は?

低用量アスピリン療法

現在、実際に広く使用されている予防法は低用量アスピリン療法です。

ただし、全ての妊娠中のママに効果があるわけではないため、妊娠高血圧症候群を発症するリスクの高いママに対してのみ使用することが勧められています。

たとえば前回の妊娠で妊娠高血圧腎症※を発症していたケースや、妊娠前から高血圧や、抗リン脂質抗体症候群※を診断されている場合などが挙げられます。

※妊娠高血圧腎症:高血圧に加え、たんぱく尿を認めるか、ママの肝臓や腎臓などの働きに障害や、赤ちゃんの発育不良等を伴うもの。

※抗リン脂質抗体症候群:血液中に抗リン脂質抗体があり、血栓症になることがあります。妊娠した場合、流産や妊娠高血圧症候群を起こすことがあります。

規則正しい生活を送る

ストレスや睡眠不足、疲れにより血圧が上昇することもあります。規則正しい生活を送り、体調を整えましょう。

食事を管理する

妊娠中に食べ過ぎたり、塩分を取り過ぎたりすると、妊娠高血圧症候群になりやすいと考えられています。

自分の体重の変化を目安に、カロリーや塩分を摂りすぎないようにしましょう。

適度に運動する

ウォーキングやマタニティヨガなど、医師の許可のもと、無理のない程度に運動しましょう。

ただし、お腹が張るときは中止してください。

妊娠高血圧症候群の症状の中には、誰にでも起こりうる症状から始まるケースも多くあります。生理的な症状なのか、異常な症状なのかを自分で判断するのは難しいことです。

気になることがあれば、迷わずかかりつけの医師に伝えるようにしましょう。

参考:

  • 公益社団法人 日本産科婦人科学会・公益社団法人 日本産婦人科医会(編集・監修)

「産婦人科診療ガイドライン2020」

  • PERINATAL CARE(ペリネイタルケア )、メディカ出版、2020年5月号

  • 妊娠高血圧症候群の診療指針ー2015、日本妊娠高血圧学会(編集)、メジカルビュー社、2015年

http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/hypertension_in_pregnancy/hypertension_in_pregnancy.pdf

(2020年8月26日閲覧)

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写真提供:ゲッティイメージズ

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