トモニテ
帝王切開 麻酔

【医師監修】帝王切開の麻酔はどんなもの?

現在日本では、約5人に1人のママが受けている帝王切開。とはいえわからないことも多く、不安を抱えているママも多いのではないでしょうか?今回は帝王切開を受けるママを痛みやストレスから守り、欠かすことのできない麻酔についてご紹介します。

現在日本では、約5人に1人のママが受けている帝王切開。とはいえわからないことも多く、不安を抱えているママも多いのではないでしょうか?今回は帝王切開を受けるママを痛みやストレスから守り、欠かすことのできない麻酔についてご紹介します。

帝王切開の麻酔とは?

ママかおなかの赤ちゃんに何らかの問題が生じ、通常のお産(経腟分娩)が難しいときに行う帝王切開。麻酔をして手術でおなかと子宮を切開し、赤ちゃんを出産する方法です。

帝王切開時の麻酔は、手術中に意識があり、下半身だけに効く麻酔(腰椎麻酔・硬膜外麻酔)を行うことが一般的です。ママと赤ちゃんの一刻を争う緊急時には全身麻酔を使用することもあります。

どの方法を行うか、併用するのかは、施設の方針やママや赤ちゃんの状態によって異なります。

帝王切開の麻酔の種類は?

脊髄(せきずい)くも膜下麻酔(腰椎(ようつい)麻酔)

腰椎麻酔、正確には脊髄くも膜下麻酔といいます。

手術台で横向きになり、エビのように体を丸めます。背中をできるだけ突き出すような姿勢をとり、腰から針を刺して脊髄くも膜下腔というスペースに麻酔薬を注入します。5分ほどで下半身の感覚がなくなりますが、麻酔の持続時間は約3時間と短めです。

硬膜外(こうまくがい)麻酔

脊髄くも膜下麻酔と同じように手術台で横になり、腰から細いチューブを入れ、硬膜外腔(こうまくがいくう)というスペースに麻酔薬を注入します。

脊髄くも膜下麻酔より麻酔がかかるまでに時間がかかり、効果もやや弱いことから手術自体は脊髄くも膜下で行うケースが多いでしょう。

硬膜外麻酔は脊髄くも膜下麻酔とは違って、腰にチューブを繋いだままとなるので麻酔の追加ができます。

この硬膜外麻酔は無痛分娩でも使用され、無痛分娩から帝王切開となったケースではこの方法で帝王切開を行うことがあります。

全身麻酔

全身に作用する麻酔です。短時間で麻酔が効くので、緊急時に使われることがあります。ママは薬で眠り、全身の筋肉の緊張と痛みを取ります。呼吸を助けるため、チューブを気管から挿入します。

帝王切開の麻酔に痛みはあるの?

背中に針を刺して行う帝王切開の麻酔。

麻酔をすること自体に痛みがないのか不安に思うママもいるのではないでしょうか?

腰椎麻酔も、硬膜外麻酔も、麻酔の処置をする前に痛み止めの注射を行います。その際、ちくっとした痛みが生じることがありますが、その後の麻酔の処置では痛みはありません。

帝王切開の麻酔が効かないこともあるの?

麻酔薬を注入したあとは、どのレベルまで麻酔が効いているかどうかを確認するために、ママにアルコール綿や、氷などを当てて冷たく感じるかどうかを調べます。

冷たく感じない部分は、痛みも感じなくなっているため麻酔が効いていると判断されます。この際冷たさや痛みは感じませんが、触られている感覚は残ります。

そのため、皮膚の感覚が残っていることに驚いて麻酔が効いていないと感じてしまうことがあるかもしれません。帝王切開の間、皮膚を触られたり、引っ張られたりする感覚は残ることを覚えておきましょう。

何らかの理由で麻酔の効きが不十分なケースでは、効果が出るのを待ったり、追加の麻酔をしたり、あらためて麻酔をやりなおすこともあります。

もし効果に違和感があるときは、我慢せずに周囲のスタッフに伝えてみましょう。

帝王切開の麻酔に副作用は?

頭痛

手術後、脊髄くも膜下麻酔で注射針を刺した穴から、圧が抜けることで頭痛が生じることがあります。また硬膜外麻酔で硬膜に傷ついた場合でも起こることがあります。安静にしたり、痛み止めを使用したりして治療し、数日で改善します。

症状がよくならない場合には、硬膜の穴をふさぐ処置をすることがあります。

低血圧

帝王切開の麻酔が効いてくると、血管が広がり血圧が下がることがあります。

急激に血圧が下がると気分が悪くなったり、意識が遠のいたりすることがあります。そのようなときはすぐに血圧が上がる薬を投与します。

また、脊髄には血圧に関係する神経がありますが、麻酔によりその神経をブロックしてしまうことで低血圧が生じることがあります。

大きくなった子宮が血管を圧迫、仰臥位低血圧(ぎょうがいていけつあつ)症候群

手術台で仰向けでいると、大きな子宮がその下を走る大静脈を圧迫し、血流が悪くなり血圧が下がってしまうことがあります。これを「仰臥位低血圧症候群」といいます。妊娠中にも同じように仰向けで寝ていると気分が悪くなるママもいるかもしれません。少し左向きになると大静脈への圧迫が減らせるため改善されます。

吐き気・嘔吐

麻酔の副作用で血圧が下がったときに、吐き気や嘔吐が生じることがあります。

血圧が低い場合には血圧を上げる薬を使用します。

また、手術中、腹膜を引っ張ったりする操作が原因となるときには、吐き気どめを使用することもあります。

足のしびれや知覚障害

脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔で使用した麻酔薬が神経部分に長時間とどまっていることで、足のしびれや知覚障害を起こすことも。

回復には時間がかかるケースがあります。

しかし麻酔の影響というより、手術時の体勢などによって足のしびれや知覚障害が残ることのほうが多いとされています。

帝王切開の麻酔、赤ちゃんへの影響は?

帝王切開をするにあたってママのためには欠かせない麻酔。

なかには生まれてくる赤ちゃんへの影響が気になるママもいるのではないでしょうか。

しかし一般的な帝王切開でママに行う麻酔の量はとてもわずかで、赤ちゃんへの影響はほとんどありません。

一方、緊急で帝王切開をするときには、ママに全身麻酔をかけて行われることがあり、少しだけ赤ちゃんに影響することがあります。

全身麻酔で使う吸入麻酔はママの胎盤を通過するため、赤ちゃんが眠った状態で生まれることがあります。とはいえ、赤ちゃんを起こしてあげれば問題がないことが

ほとんどです。必要なときには呼吸を助ける処置をします。

麻酔の影響がなくなれば、赤ちゃんは起きて呼吸もできます。

帝王切開の麻酔による赤ちゃんへの影響を心配しすぎる必要はありません。

_______

帝王切開の麻酔についてお伝えしました。脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔で行うことがほとんどですが、どちらで行うか、併用するのかは各施設やママと赤ちゃんの状態によって異なります。不安なことがある場合には、医師に相談してみましょう。

参考:

  • 『PERINATAL CARE(ペリネイタルケア )』、メディカ出版、2018年新春増刊号

  • (監修)竹内正人、細田恭子、横手直美、

   『ママのための帝王切開の本 産前産後の全てがわかる安心ガイド』、中央法規出版株式会社、2013年

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写真提供:ゲッティイメージズ

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