【専門家監修】子ども・児童手当拠出金とはなに?(2020年度版)
そのほか子育て支援事業も、子ども・子育て拠出金でまかなっています。
今回は、子ども・子育て拠出金がどういった制度なのかご説明します。
そのほか子育て支援事業も、子ども・子育て拠出金でまかなっています。
今回は、子ども・子育て拠出金がどういった制度なのかご説明します。
子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)とは
子ども・子育て拠出金は、かつては児童手当拠出金と呼ばれていました。
2015年から子ども・子育て拠出金に名称変更されました。
拠出金とは「相互扶助のために出し合うお金」
子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)は税金のような役割もありますが、「消費税」や「所得税」のように名称に「税」とはいわず、「拠出金」といいます。
拠出金には「相互扶助のために出し合うお金」という意味があります。
税金制度は、行政サービスを運営するためなどの費用をまかなうものですが、子ども・子育て拠出金は、それとは少し性質が異なります。
子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)は、企業など従業員を雇用している組織が負担します。従業員は負担しません。
しかし、集めた子ども・子育て拠出金を使った行政サービスを受けるのは、従業員たちです。企業などではありません。
つまり企業などは、行政サービスを受けないのに「税金のようなもの=子ども・子育て拠出金」を負担しなければなりません。
そこには相互扶助の精神があるわけです。
集めたお金は何に使われるのか
子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)は、児童手当などの、子育てを支援するお金の財源になります。
このお金は児童手当以外にも、「地域子ども・子育て支援事業」や「仕事・子育て両立支援事業」などに使われています。
地域子ども・子育て支援事業には、「放課後児童健全育成事業」や「延長保育事業」「病児保育事業」があります。
仕事・子育て両立支援事業には、「企業主導型保育事業」「ベビーシッター利用者支援事業」があります。
このような事業によって、子どもの親たちはしっかり働けるようになります。親たちがしっかり働くことは、企業などにとって大きなメリットです。
それで政府は、企業などに、子ども・子育て拠出金を支出してもらっているわけです。
企業の負担は年々増加している「拠出金率とは」
企業などはいくらくらい、子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)を負担しているのでしょうか。
額を知るために、政府が決める「拠出金率」の仕組みについて解説していきます。
拠出金率は税率に似ています。税率が高くなると支払う税金の額が上がりますが、拠出金率も同じ仕組みです。
子育て支援策の充実は国の重要課題なので、拠出金率は次のように年々増加しています。
<子ども・子育て拠出金の拠出金率の推移>
2015年度:0.15%
2016年度:0.20%
2017年度:0.23%
2018年度:0.29%
2019年度:0.34%
そして2020年度は0.36%に引き上げられました。
出典
「子ども・子育て拠出金率が改定されました。(平成31年4月) 」(日本年金機構)
企業は子ども・子育て拠出金をいくら負担しているのか「計算方法の解説」
子ども・子育て拠出金は、「標準報酬月額」に「拠出金率」をかけて算出します。
標準報酬月額は、社会保険における毎月の給料とみなされます。標準報酬月額については、あとで詳しく解説します。
企業が負担する子ども・子育て拠出金は、次のように算出します。
- 子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)=標準報酬月額×拠出金率
従業員に多くの給料を支払っている企業ほど(標準報酬月額が高い企業ほど)、子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)の負担額が高くなります。
標準報酬月額の詳しい説明
標準報酬月額とは、「従業員が会社などから受け取る毎月の給料で、社会保険料の計算の元になる額」です。
社会保険料を毎月計算するのは、煩雑になるので、4月から6月の3ヶ月の平均の給与(報酬月額)を等級表に当てはめます。これが標準報酬月額です。
たとえば、給料(報酬月額)が「210,000円以上~230,000円未満」の間の場合、標準報酬月額は「220,000円」になります。
つまり、毎月の給料が210,000円の人も、220,000円の人も、229,999円の人も、標準報酬月額は220,000円になります。
給料の大幅な変動がない限り、9月分から8月分まで、この標準報酬月額を元にし、計算を簡素化しているのです。
出典
「厚生年金保険料額表」(日本年金機構) 、2020年9月分から
シミュレーション
実際に、企業がいくら負担するのかシミュレーションしてみます。
Aさん(標準報酬月額150,000円)
Bさん(標準報酬月額300,000円)
計算例
A.標準報酬月額報酬 150,000円 拠出金率 0.36%
150,000×0.0036=540
B.標準報酬月額報酬 300,000円 拠出金率 0.36%
300,000円 × 0.0036 = 1,080
雇用者側が支払う児童手当拠出金(子ども・子育て拠出金)は
(A)540+(B)1,080=1,620円
子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)は税金でありながら、行政サービスを受ける者と税金を負担する者が異なります。
子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)を使って行われている子育て支援事業は、働く人たちへの行政サービスですが、
働く人たちは子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)を負担しません。
負担するのは、働く人たちを雇っている企業などです。
ただ、従業員が子育て支援事業のサポートを受けて働くことは、企業にとって大きなメリットです。
したがって、企業が子ども・子育て拠出金を負担することは「理にかなっている」といえます。
参考:
「令和2年度概算要求の考え方(拠出金関係)」(内閣府)、2020年8月閲覧
「厚生年金保険料額表」(日本年金機構) 、2020年9月分から
「子ども・子育て拠出金率が改定されました。(平成31年4月) 」(日本年金機構)
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