
【医師監修】帝王切開の傷はどんなもの?傷痕のケアは?
帝王切開とは?
帝王切開とは、ママのおなかと子宮を切開し、赤ちゃんを取り出す手術のことです。
逆子や、これまでママが子宮の手術をしたことがあるなどの理由で、経腟(けいちつ)分娩が難しいケースでは、妊娠中から帝王切開を予定する「予定(選択的)帝王切開」の適応となります。
また、通常のお産の途中で赤ちゃんやママに予期せぬトラブルがあった場合には、「緊急帝王切開」に切り替わります。
どちらもママと赤ちゃんの安全を守るために行う手術で、現在日本では約20%、5人に1人が帝王切開による出産です。
詳しい帝王切開の情報については以下の記事も参考にしてみてください。
帝王切開の傷痕は?
皮膚の切り方(術式)縦切開・横切開とは?
麻酔が十分に効いていることを確認したあとは、消毒し、体にシートをかぶせ手術が始まります。はじめにメスで、皮膚を切開します。
皮膚の切り方には下腹部正中(縦)切開と、下腹部横切開があります。最近では傷跡が目立たないよう、横に切開するケースが増えてきています。
一方で、縦に切ると、手術時間が短く赤ちゃんを早く取り出せるというメリットもあります。
帝王切開の傷の保護は?
傷の上から紙テープ、透明なフィルムなどで保護します。傷を保護するテープを貼ることで、傷の管理に必要な清潔や適度に湿った環境を作り、密閉することができます。
保護の方法は施設により違いがあります。
以前は傷の上から消毒をしてガーゼを毎日交換していました。しかし現在では、消毒をすることで傷が治るのに必要な細胞も殺してしまい、傷の治りが遅れる傾向があることがわかってきたため行われていないことがほとんどです。
帝王切開の傷のテープ はいつまで?
手術後に縫合した傷は、術後24〜48時間で表面の皮膚はくっついてきます。以降は外部からの細菌に汚染されないことがわかっています。
このことから、施設にもよりますが、手術後2日までは傷の部分を滅菌のテープなどで覆っておくことが多いでしょう。
また無理にはがさずに、自然にはがれるまで貼っておくテープもあります。
ただし、ケロイドや肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)を予防し、傷をきれいに治すためにその後も特別なテープを貼る施設もあります。
※肥厚性瘢痕:何らかの異常で傷の治りが遅くなった場合、傷がミミズ腫れのように盛り上がることがあります。適切な治療で治る可能性があります。
傷痕はいつまで残る?
個人差はありますが特別に問題がなければ、帝王切開の傷は以下のような経過をたどり、徐々に目立たなくなってきます。
帝王切開手術当日
傷口は少し赤い。
術後2〜4日目
傷口の組織が少しもり上がってきて、表面の組織がくっついてくる。
術後8〜9日目
傷口にかさぶたができてくる。
術後2〜4週間後
傷口は赤くもり上がった細い線状に見える。
術後6ヶ月〜1年後
肌の色に近い色に落ち着く。
傷が化膿したりケロイド状になることもあるの?
帝王切開の手術をする恥骨部周辺は、傷痕がもり上がり赤みや痛みを伴う、ケロイドや肥厚性瘢痕のできやすい部分とされています。
また、ケロイドや肥厚性瘢痕は、アレルギー体質の人や家族にケロイドができたことのある人などに多く起きるといわれています。
傷痕ができるかどうかはおもに体質にもよりますが、縫合の仕方やケアによるところも少なからずあります。前回の手術で傷口がケロイド状になったことがあるなど、傷の治り具合について心配なママは医師や助産師に相談しておきましょう。
予防のためにできるケアは?
ケロイドとなった傷を自分自身でケアすることは難しいため、出産した施設や形成外科の医師に相談することが望ましいでしょう。
ただ、なるべくケロイドにならないように注意することは可能です。
たとえば物理的な刺激が重なることで、傷がケロイド化しやすくなるため、なるべく刺激を避けるようにすることです。
治癒を促進させるテープやシリコン性のシートを使用することで、衣服との摩擦を防いだり、過剰な皮膚の進展を防いだりすることもできます。傷痕に不安があるママは、産婦人科の医師や形成外科の医師などに傷やテープの使用方法についても確認できると安心です。
帝王切開後のシャワー浴、ケアのポイントは?
手術後初めてのシャワーは傷の扱いに不安があるものです。以下のように優しく洗うようにしてみましょう。
- 温水で皮膚の汚れを流す。
- せっけんやボディソープを十分に泡立て、皮膚への摩擦を避けて泡で洗う。
- せっけんやボディソープが残らないように十分に流す。
- 乾いたタオルで軽くおさえて拭き取る。
こんなときは注意、相談しよう
退院してからもシャワー中などに帝王切開の傷を観察してみましょう。
もし痒みがひどい場合、出血がある、赤くなってくる、腫れてくるなどの変化が気になるときには傷口から感染を起こしている可能性も。早めに医療機関に相談してみましょう。
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帝王切開の傷は、時間とともに改善することがほとんどですが、普段の生活で力が入りやすい部分でもありケロイドなどの異常が生じやすくもあります。
清潔を保ちつつ、刺激をなるべく避けるようにし、傷に気になる部分がある場合には医師に相談しましょう。
参考:
- 武谷雄二・上妻志郎・藤井知行・大須賀穰(監修)、「第3版プリンシプル産科婦人科学②産科編」、メジカルビュー社、2017年
- 岡井 崇、綾部 琢哉(編集)、『標準産婦人科学 第4版』医学書院、2011年
- 竹内正人、細田恭子、横手直美(監修)、『ママのための帝王切開の本 産前産後の全てがわかる安心ガイド』、中央法規出版株式会社、2013年
- PERINATAL CARE(ペリネイタルケア )、メディカ出版、2018年新春増刊号
写真提供:ゲッティイメージズ
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