【専門家監修】共働きだと年金はどのくらいもらえる?
年金の種類について
公的年金は、国民年金と厚生年金の2種類があります。年金はよく「2階建て」にたとえられ、1階部分が国民年金(基礎年金)で2階部分が厚生年金である、と説明されます。
© every, Inc.
『公的年金制度の仕組み 』(厚生労働省)を元に作成
20歳以上60歳未満の全員が加入する国民年金
国民年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満の全員が加入しなければなりません。そのため国民年金の給付を基礎年金と言います。
個人事業主や学生や無職の人などは、国民年金では第1号被保険者になり、次に紹介する厚生年金に加入せず、国民年金のみ加入します。
国民年金の保険料は定額で、2020年度は月16,540円です。そして20歳から60歳までなど40年間、保険料を支払い続けると、原則65歳から月額約65,000円の年金を受給できます(2020年度)。
会社員や公務員などは厚生年金に加入する
会社員や公務員などは、厚生年金に加入しますが、同時に国民年金(第2号被保険者)にもなります。
厚生年金と国民年金に加入しますが、払う保険料は厚生年金保険料のみです。月々の保険料は報酬によって異なります。
厚生年金の保険料は、年収の18.3%です。ただ、18.3%を労使(労働者と会社)で折半するので、従業員(第2号被保険者)の負担額は給料の約9%です。
厚生年金の受取額は計算が複雑なのですが、たとえば、20歳から60歳までの40年間の平均年収が520万円だった場合、年額113万1,000円。国民年金(基礎年金)78万1,200円を足すと191万2,200円。月額約16万円を65歳から受け取ることができます。
もし、共働き夫婦が同じ条件で厚生年金に加入していたら、老後に毎月約32万円以上の年金収入が得られるわけです。
会社員と専業主婦(主夫)の場合、専業主婦・主夫(第3号被保険者)は、保険料を支払う必要はありません。65歳から同じように基礎年金を受け取れます。
いくらもらえるのか
実際に年金受給者はいくらの年金をもらっているのでしょうか。
平均では年73万6,980円
2018年度の年金受給者の年金総額は、55兆5,904億円です。
一方、同年度の年金受給者数は7,543万人です。
単純に割り算をすると、年金受給者1人あたり、年736,980円の年金を受給していることになります。これを12で割ると、1ヶ月61,415円になります。
厚生年金の保険料の上限について
厚生年金の保険料について、もう一度みてみます。
ここでは、保険料の上限について解説します。
先ほど厚生年金の保険料は「月額で給料の18.3%(これを労使で折半する)」と紹介しましたが、保険料は、正確には、次のように計算します。
© every, Inc.
標準報酬月額は、実際に受け取っている給与の額の4月から6月の平均月額をだし、標準報酬月額表に当てはめます。これを9月から翌年の8月まで1年間の月収として計算します。給与の変更があり、標準報酬月額に2等級以上の差が生じたときは、月額変更もあります。
標準報酬月額には上限があり、その額は65万円です(2020年8月までは62万円)。
標準報酬月額に上限があるということは、厚生年金の保険料にも上限があり、その額は月118,950円です。そして労働者の負担分はその半分の月59,475円になります。
どれだけ高額な給料を得ていても、労働者の毎月の厚生年金の保険料の負担額は月59,475円より多くなりません。
パートの厚生年金
共働き夫婦の場合、どちらかがフルタイムで働き、どちらかがパートやアルバイトなど(以下、パート)で働いていることがあるでしょう。
パートでも厚生年金に加入しやすくなっています。
従来は週30時間以上働いていないと厚生年金に加入できませんでしたが、2016年10月から従業員500人超の企業であれば、週20時間以上働くなどの条件を満たしていれば、厚生年金に加入することができるようになっています。また、この従業員数500人超の企業は、2022年10月からは100人超、2024年10月からは50人超と、段階的に厚生年金に加入する人を拡大していきます。国民年金のみより、厚生年金にも加入しているのほうが、将来もらえる年金が多くなります。
これから更に、パートでも厚生年金に加入しやすくなっていきます。将来のことを考えると「週20時間以上働いて、厚生年金に加入したほうがよいかもしれない」と検討することは、十分価値があることだと思います。
夫婦の「今の」働き方によって、夫婦の「老後の」年金収入は大きく変わってきます。
将来に向け、老後に備える
共働き夫婦は、夫婦ともに厚生年金に加入できる可能性が高まるので、現役時代の収入だけでなく、引退後の年金収入でも有利になります。
「仕事を始めようかな」「仕事を辞めようかな」「会社員を辞めて個人事業主になろうかな」と思ったとき、年金についても検討したほうがよいでしょう。
出典
『公的年金制度の仕組み 』(厚生労働省)
『平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況 』(厚生労働省)
『厚生年金保険における標準報酬月額の上限の改定 』(日本年金機構)
『平成28年10月1日から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がります! 』(厚生労働省)
写真提供:ゲッティイメージズ
※当ページクレジット情報のない写真該当