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【医師監修】早産で生まれた赤ちゃんの生存率は? 後遺症の可能性は?

【医師監修】早産で生まれた赤ちゃんの生存率は? 後遺症の可能性は?

早産の可能性がある妊婦さんや、早産で生まれたばかりの赤ちゃんがいるママにとって、赤ちゃんの生存率や後遺症の可能性については心配になることがあるかもしれません。生まれた週数別の生存率などについて、詳しくみてみましょう。
早産の可能性がある妊婦さんや、早産で生まれたばかりの赤ちゃんがいるママにとって、赤ちゃんの生存率や後遺症の可能性については心配になることがあるかもしれません。生まれた週数別の生存率などについて、詳しくみてみましょう。

早産の週数は?

「早産」とは妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことをいいます。それ以前の、妊娠21週6日までの出産は「流産」と呼ばれ、残念ながら生まれてもその後生きることが難しいとされています。

妊娠37週0日から妊娠41週6日までの出産は「正期産」といい、いつママのお腹の中から生まれてきても問題ないとされている時期です。この正期産よりも前に生まれてくる早産は、赤ちゃんがお腹の外の世界に適応できない可能性のある出産になります。

早産で生まれたらどうなるの?

生まれる週数が早いほど、亡くなる確率も後遺症が残る確率も高くなるため、1日でも長くお腹の中で育てたいところですが、赤ちゃんやママの状態によってはそれが叶わないことがあります。出産を早めることが、ママや赤ちゃんの命を助けるのに必要な場合もあるのです。

そのような場合に、赤ちゃんがお腹の外の世界でも生きられるようにサポートするのが「NICU」(新生児のための集中治療室)です。NICUでは、赤ちゃんが体の機能を保てるように人工呼吸器や保育器などを使用し、医師や看護師が24時間体制で経過を見守り、ケアをします。しかし、特に早い時期に生まれた赤ちゃんは体が未熟なため、ケアを行っても助からないケースもあるのが現実です。

NICUから退院できる確率は?

早産で生まれた赤ちゃんがNICUを退院できる確率はどれぐらいなのでしょうか。週数別にみてみましょう。

妊娠22週~23週

最も流産に近い週数での出産になるのが妊娠22~23週です。2018年には918,400人の赤ちゃんが生まれ、そのうち445人、約0.05%がこの週数に生まれています。

この週数での出産は、約半数がNICUを退院することなく亡くなります。2008~2012年のデータでは、22~23週に生まれた赤ちゃんの約66%がNICUから退院でき、約34%が命を落としました。

この差は、赤ちゃんの出生体重も影響していると考えられます。この頃の赤ちゃんの体重は、500g前後が平均です。しかし、成長の状態によっては300~700g台と約400gの差があります。体重500g以下の場合と、体重501~750gでは死亡率の差が約30%もあるため、週数だけでなく、赤ちゃんがお腹の中でどれだけ成長しているかも重要になります。

妊娠24~25週

妊娠24~25週になると、死亡率はぐっと下がります。2008~2012年のデータでは、24~25週に生まれた赤ちゃんの約87%がNICUから退院しています。

この頃の赤ちゃんの体重は600~700g台あり、現代の医療では700gあると、約90%以上は退院して家に帰れるようになります。

妊娠26~27週

妊娠26~27週ではさらに死亡率は下がり、2008年~2012年のデータによると約94%がNICUから退院できています。

妊娠28~29週

妊娠28~29週では死亡率が約3%になり、約97%以上がNICUから退院できています。28週以降になると体重は1,000gを超えるため、生存率が上がり、さらに視力に影響する「網膜」(目の奥にある光や色を感じる部分)が発達するため、目の病気にかかる確率も下がります。

妊娠30~31週

妊娠30~31週を迎えると、死亡率は3%以下とかなり低くなり、約98%がNICUから退院できています。

妊娠34週

妊娠34週を超えると、自分で呼吸できる機能が完成するため、人工呼吸器のサポートがなくても大丈夫なケースが多くなります。

後遺症の可能性は?

早産の赤ちゃんの生存率は、医療の発展によってかなり高くなりました。しかし、退院までにはさまざまな合併症の危険があること、退院後もなんらかの後遺症を持つ可能性があることを知っておいてください。

短期的な合併症

短期的な合併症をいくつかご紹介します。

■呼吸障害

妊娠34週までは、肺が十分に発達していないため、自分で呼吸ができません。さらに脳も未熟なため、呼吸を中断したり、完全に止まったりすることもあります。そのため、人工呼吸器を使って呼吸を助けてあげる必要があります。

■脳室内出血

早産の赤ちゃんはまだ脳の血管がもろく、血流のコントロールも未熟なことから脳の血管への負担が大きくなります。さまざまな要因が合わさって、脳室内に出血が起こると考えられています。重症の場合には麻痺や発達の遅れなどの後遺症がみられる可能性があります。妊娠32週未満で生まれた赤ちゃんに起こりやすいとされています。

■高ビリルビン血症

一般的に黄疸と呼ばれており、血液中のビリルビンが増えすぎた状態です。正期産の赤ちゃんでも一時的にみられますが、早産の赤ちゃんは肝臓や脳が未熟なことから重症化しやすく、早期から光線療法や輸血などの治療が必要です。重症化すると脳にダメージを与える、ビリルビン脳症という状態になる可能性があります。

■壊死性腸炎

早産の赤ちゃんの未熟な腸管に、血液の流れの障害や感染が起こり、ダメージを受けた状態です。妊娠32週未満で生まれた赤ちゃんに起こりやすく、重症の場合には手術が必要になります。

長期的な合併症

成長に伴って見られる長期的な合併症には、脳性まひやてんかん、知的障害、目や耳の障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉性障害などがあります。出生後すぐにはこれらの合併症や障害が出るかはわかりません。後遺症がない場合もあれば、いくつかの合併症や障害が重なる場合もあります。

早産の赤ちゃんの成長を追跡調査した結果が下記になります。

■出生体重1,000g未満で生まれた赤ちゃんの3歳時点での後遺症(2003~2005年生まれ)

・脳性まひ 約11%

・失明(両目もしくは片方のみ)約2%

・補聴器使用 約1%

■出生体重1,000~1,500gで生まれた赤ちゃんの3歳時点での後遺症(2003~2005年生まれ)

・脳性まひ 約7%

・失明(両目もしくは片方のみ)0.2%

・補聴器使用 0.5%

以上のように、出生体重が小さいほど、後遺症の可能性が高いことがわかります。

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早産によって赤ちゃんの命が失われる可能性は、以前に比べて大幅に低くなりました。早産で生まれても、成人を迎え、元気に暮らしているケースもあります。赤ちゃんの力を信じて、今できることを精一杯して、赤ちゃんを応援してあげましょう。

参考:

・鮫島 浩・岡井 崇・平松 祐司、「クリニカルカンファレンス9 ハイリスク妊娠の分娩管理 1)IUGR の予後改善のための周産期管理 」、日産婦誌61巻 9 号、2009年

(2020年10月22日閲覧)

統計で見る日本、人口動態調査 「人口動態統計 確定数 出生」、e-Stat (2020年10月22日閲覧)

日本産科婦人科学会周産期委員会、「胎児計測と胎児発育曲線について」

 (2020年10月22日閲覧)

・「低出生体重児について、低出生体重時への支援に必要な基本的なこと 」、(厚生労働省(2020年10月22日閲覧)

河野由美、ハイリスク児のフォローアップ:NICUを退院した子どもたちへの支援 、「表1 極低出生体重児のフォローアップにみられる主な合併症・障害」日本小児保険学会 教育講演、第70巻 第2号、2011年 (2020年10月22日閲覧)

井上晋介、落合正行、九州大学小児科、「 出生体重 500g 以下児の 3 歳時神経学的予後の調査 」、周産期母子医療センターネットワークデータベース 10 年間のまとめ事業 成果報告書、一般社団法人日本成育新生児医学会 (2020年10月22日閲覧)

佐藤拓代、「04低出生体重児の発達」、低出生体重児保健指導マニュアル、大阪府立母子保健総合医療センター、 (厚生労働省)、平成24年(2020年10月22日閲覧)

・『PERINATAL CARE(ペリネイタルケア )』、メディカ出版、2019年夏期増刊

・『小児臨床看護各論』小児看護学② 医学書院、2016年

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