【医師監修】子宮頸がん検診とは?
子宮頸がんについて
子宮頸がんとは?
子宮頸(けい)がんとは子宮の頸部(入り口)に発生するがんのことをいいます。好発年齢は30〜50歳で、出産期、子育て世代である30〜40歳代がピークです。
日本では毎年約1万人の女性がこの病気にかかっており、毎年約2,800人が亡くなっています。(※1)
子宮頸がんは、初期にはほとんど自覚症状がありません。しかし婦人科の診察で発見しやすく、早期に治療が行えれば比較的見通しはよいとされています。そのため定期的な検診がすすめられていますが、日本では妊娠の確認のときに初めて産婦人科や婦人科を受診する女性も少なくありません。初期の妊婦健診には子宮頸がん検診が組み込まれており、そこで予想外に子宮頸がんが発見されるケースがあります。
※1:出典
国立がん研究センター、がん情報サービス、最新がん統計(2021年1月5日閲覧)
子宮頸がんの原因
子宮頸がんの発生はウイルス感染がきっかけで起こることがわかっています。原因となるのはヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papilloma virus)という、性行為によって男女ともに感染するウイルスで、決して珍しいウイルスではありません。多くの人がHPVに感染します。そして一部の女性が将来高度前がん病変や、子宮頸がんを発症することになります。
子宮頸がん検診の方法は?
子宮頸がん検診では問診、視診、細胞診、内診を行います。
以下のような流れで行います。
問診
自覚症状や、月経の状態、妊娠・出産の有無、これまでの検診状況、不正出血や気がかりなことがないかどうかなどを確認します。
視診
腟鏡(クスコ)という機械を使い、外陰部や腟などの部分の観察をします。
細胞診
ブラシなどの専用の器具で子宮頸部の細胞をこすりとります。この細胞を顕微鏡で観察し異常がないかどうか調べます。
月経(生理)中であると細胞が採取できない可能性があるため、月経を避けて予約をしましょう。施設により対応が異なるケースもあるので、問い合わせておくと確実です。採取した細胞を詳しく調べるため、検査の結果が出るまでには1~2週間ほどかかります。
内診
内診は腟の中に指を入れ、もう片方の手は下腹部に添えて卵巣や子宮の状態を調べます。
子宮頸がん検診は痛い?
個人差がありますが、細胞をとるのに痛みはほとんどありません。
緊張して体に力が入ってしまうかもしれませんが、数分で終わります。できるだけリラックスして受けましょう。
子宮頸がん検診の費用は?
市区町村で行われる住民検診では無料、もしくは一部負担で検査を受けられることがあります。また人間ドックなどで行われる場合には、全額自己負担となるか、加入している保険組合から補助が出ることもあります。施設にもよりますが、自費で検査を受ける場合には5,000〜8,000円程度となるようです。詳しくは自治体や子宮頸がん検診を受ける施設、保険組合に確認してみましょう。
再検査が不安、精密検査は何をする?
通常の子宮頸がん検診で受けた細胞診で、異形成やがんの疑いなどの異常があった場合に、精密検査を受けることになります。検査は以下のような内容です。
ハイリスクHPV検査
細胞診の結果、軽微な異常細胞が認められた場合にはまず「ハイリスクHPV検査」といい、子宮頸がんの発生に関与するヒトパピローマウイルスに感染しているかどうかの検査をすることがあります。陽性の場合、以下に説明する検査と組織診を行います。
コルポスコピー検査
細胞診で明らかな異常が見られた場合には、コルポスコープ(腟拡大鏡)を使い、腟と子宮頸部の検査をします。コルポスコープは40倍にまで拡大して観察ができるため肉眼ではわからない病変を見つけることができます。
組織診
コルポスコピー検査で異常が疑われた場所を専用の道具を使用して組織の一部から数カ所つまみとります。組織を採取したときに多少の痛みを伴うことがあります。出血することもあり、検査当日は激しい運動などは控えます。
子宮円錐(えんすい)切除術
子宮頸がんには「扁平上皮がん」と「腺がん」があります。「腺がん」は表面ではなく子宮頸部の深い部分にできることがあり、通常の子宮頸がん検診では発見が難しいとされています。細胞診で「腺がん」が疑われたり、さらに組織診をしても診断が難しいケースでは、子宮の頸部を円錐状に切り取る円錐切除術を行うこともあります。
早期発見、早期治療が大切
婦人科の受診に慣れないと、さまざまな不安からつい検査を先延ばしにしてしまうこともあるかもしれません。しかし、子宮頸がんは早期に発見し治療を開始することで、子宮を温存することもできます。
また、がんだけでなく婦人科の病気をチェックできる機会となります。定期的な検診を心がけてみてはいかがでしょうか。
参考:
・「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン 」(厚生労働省)
(2021年1月5日閲覧)
・「HPVワクチンQ&A 」(厚生労働省)(2021年1月5日閲覧)
・岡井崇、綾部琢哉(編集)、『標準産婦人科学 第4版』医学書院、2011年
写真提供:ゲッティイメージズ
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