お金?制度?少子化対策に有効だったのは?
日本の現状
第1次ベビーブームに沸いた1949年の日本では、1人の女性が一生に産む子どもの数(合計特殊出生率)が4.32でした。しかし、2019年には1.36と大きくその数を減らしています。
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日本と同じように少子化に悩み、対策を講じた先進国の事例はどのようなものなのでしょうか。
諸外国の人口動向の傾向
解説に入る前に、諸外国の1人の女性が生涯に産む子どもの数(合計特殊出生率)の動きを見てみましょう。
下降傾向にあった国も、対策により上昇傾向に転じた国もあります。
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経済支援で対策した国
ではまず、お金の面からの対策事例を見てみましょう。ドイツとフランスの経済支援についてです。
ママもパパも育休取得で追加保証・ドイツ
ドイツは先進国の中でも早くから急激な少子化が進んでいた国のひとつです。1995年には合計特殊出生率が1.25まで落ち込み、世界でも特に低い水準となりました(※1)。
2007年に導入された「Elterngeld(両親手当)」の制度は、休職中に手取り所得の7割を12ヶ月保証、両親ともに育児参加する場合はさらに2ヶ月追加で保証するものです。
2015年には「両親手当プラス」として、両親がともに週25~30時間の時短勤務となった場合には通常の期間にさらに4ヶ月加えて受給可能とし、時短勤務を奨励しています。
ドイツと日本の出産・育児関連の給付を比較すると以下のようになります。
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参考:「参考資料3 2020年4月内閣府政策統括官(経済社会システム担当)」(内閣府)、「欧米諸国の政策の動向」(内閣府)、「児童手当Q&A」(内閣府)をもとに作成
子どもが多いほど税負担緩和・フランス
1993年のフランスは、合計特殊出生率1.66という状況でした(※2)。この状況を脱するためにまず行われたのは、手厚い経済的支援です。
フランスの「家族手当(児童手当)」は、第1子にはなく、第2子以降の20歳未満の子どもに対して支給されます。金額は子どもの人数や家族の収入によって異なりますが、子どもが14歳以上になると増額されます。「基礎手当」は収入に応じて3歳未満の子どもを対象に、月額約1.1万円ないし2.2万円が支給される制度です(※3)。
税制においても、子どもの数が多くなるほど所得税負担が緩和される仕組み(N分N乗方式)があります。
保育や就労面制度で対策した国
次に、保育や就労などの制度を見てみましょう。
経済支援だけじゃない!権利や環境もサポート・フランス
フランスの少子化対策は経済的支援だけにとどまりません。
フランスでは、生まれた子の約6割が婚姻届を出していない男女の間の子ども(婚外子)です。ちなみに日本では婚外子は約2%です(※4)。フランスでは非法律婚もライフスタイルのひとつとして社会で承認されており、婚外子も婚内子(婚姻届を出している男女の間の子ども)も法律的に全く同じ権利を持っています。
育休給付は、第1子は子どもが1歳になるまで、第2子は3歳になるまでもらえ、就労の削減割合によって、月額1.7万円~4.8万円が給付されます(※5)。
フランスの保育の特徴は、公立や民間の保育所のほかに、公的に保証されたファミリー保育や認定保育ママによる小規模保育が充実していることです。保育環境においても充実していますね。
さらに、2002年から導入された「父親休暇」の制度は、出産時に父親が最長14日間の休暇を取得できるというものです。2021年7月からは、現行の2倍の28日とし、そのうち7日間の取得を義務付けることになっています。
これらの包括的な政策の結果、2018年の合計特殊出生率はEU内でも高い1.88となっています(※6)。
パパの育休取得を制度でサポート・スウェーデン
スウェーデンもフランスと同じく婚外子が半数を占めており、婚外子と婚内子の権利は同等です。
育児休業は子どもが12歳になるまでに18ヶ月間取得できます。育休手当は16ヶ月分で、当初13ヶ月は所得の80%を、残りの3ヶ月は日額約2,000円を支給します。
特筆すべきは、その16ヶ月を原則として両親に半分ずつ割り当てる、つまり、父親にも育休を取得させるようにしていることです。受給権は両親の間で一部譲渡できますが、3ヶ月分は譲渡不可と決まっています。この3ヶ月はいわゆる「父親の月」です。
また、保育所や保育ママの充実だけでなく、家事代行サービスの支払額の50%の税額控除をする制度を設けています。
その結果、1980年ごろに1.5程度に下がっていた合計特殊出生率は、2018年に1.75となっています(※7)。
アジアの状況
アジア各国も少子化対策に乗り出しています。韓国とシンガポールの事例をみてみましょう。
韓国
2018年の合計特殊出生率は0.98です(※8)。韓国政府は、2020年12月に4回目となる少子化対策を発表しました。
2022年から導入される制度には、1歳までの子どもを持つ親への乳児手当を約2.8万円、出産一時金を約18.8万円支給、1歳までに両親が3ヶ月ずつ育児休業を取得すれば最大で双方に月約28万円ずつを支給することなどが盛り込まれています。
シンガポール
シンガポールでも少子化は顕著で、2018年の合計特殊出生率は1.14となっています(※9)。
政府は2001年に「結婚・育児支援パッケージ」を導入し、国営の出会い系サイトの運営や、結婚したカップルへの住宅支援、経済面での出産・育児サポートなどを行っています。
第1子・第2子の誕生で各約64万円、第3子以降には約80万円を支給する「ベビーボーナス」や、住み込みのメイドを利用した際の税金の優遇措置などが、特徴的な支援です。
少子化対策はどのくらい国の負担がかかるの?
日本と外国との比較
2017年度の家族関係社会支出(家族を支援するために支出される現金給付や現物給付のこと。出産手当金や児童手当など)の対GDP比を見てみると、日本は1.58%であるのに対し、フランスは2.93%、スウェーデンは3.54%となっています。
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出典:「令和2年版 少子化社会対策白書 全体版(PDF版)第1-1-5図 各国の家族関係社会支出の対GDP比の比較」(内閣府)を元に作成
国民負担率などの違いもあるため、単純に比較はできませんが、フランス、スウェーデンと比べて家族政策全体の財政的な規模が小さいといわざるを得ない状況です。
日本では、令和2年度に約3.2兆円の予算が「子ども・子育て支援」に充てられ、児童手当、幼児教育・保育の無償化、保育士の処遇改善、放課後児童クラブの整備、事業所内保育の充実などに使われています。
しかし、妊婦検診の助成や保育所・認定こども園などの子育て支援の多くは、地方自治体に任されているため、地域によって大きな格差が生じています。たとえば、認可保育所の保育料は自治体により最大で5倍もの格差があるのです。
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他国の事例から、少子化対策には経済的支援だけではなく、保育の充実や父親が家事育児に参加しやすくなる社会システムなど、総合的な取り組みが重要であることがわかります。日本でも、より有効な少子化対策を打ち出す必要がありそうですね。
出典
※1:「海外の少子化の動向 第2節 欧米諸国の出生の動向」(内閣府)
※2:「令和2年版 少子化社会対策白書 全体版(PDF版)フランスにおける少子化対策」(内閣府)
※3:「欧米諸国の政策の動向」(内閣府)、「参考資料 2020年3月内閣府政策統括官(経済社会システム担当)」(内閣府)
※4:「わが国の少子化の本質とアフターコロナの家族− 人口学的考察とオランダの経験 –」(東京都政策企画局)
※5:「参考資料3 2020年4月内閣府政策統括官(経済社会システム担当)」(内閣府)
※6:「令和2年版 少子化社会対策白書 全体版(PDF版) 第1‐1‐4図」(内閣府)
※7:「令和2年版 少子化社会対策白書 全体版(PDF版)」(内閣府)
※8:「令和2年版 少子化社会対策白書 全体版(PDF版)第1-1-6図 諸外国・地域の合計特殊出生率の動き(アジア)」(内閣府)
※9「令和2年版 少子化社会対策白書 全体版(PDF版)第1-1-6図 諸外国・地域の合計特殊出生率の動き(アジア)」(内閣府)
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