【医師監修】胎盤ポリープとは
胎盤ポリープとは
胎盤ポリープとは、出産後も子宮に残ってしまった胎盤からできたポリープのことです。
胎盤とは妊娠中のママの子宮の中にできる臓器で、赤ちゃんとへその緒(臍帯)でつながり、ママから赤ちゃんに栄養や酸素を送る働きをしています。
赤ちゃんを出産した後、通常は10分内外で胎盤が子宮の外に出ます。しかし、胎盤がすべて出ずに子宮の中に残ったものを「胎盤遺残(たいばんいざん)」といいます。
胎盤ポリープは、胎盤の組織の一部が残り、発育してできるといわれています。子宮に残った胎盤組織には新たに血流が分布して成長し、こぶのように増殖してみえるため胎盤ポリープと呼ばれるのです。
大柴先生からのひとこと
最近の知見では 胎盤遺残や胎盤ポリープは retained products of conceptionと括られ、胎盤や胎児組織が遺残する疾患とされます。分娩後だけでなく、流産後などにおきることがあり出血や感染を起こす原因となります。不妊治療との関連も示唆されています。
頻度は539例/100,206分娩(1.54%)とまれですが、緊急で治療が必要な場合が109例/539例(20.2%)あります※。
※三重大学医学部産婦人科 田中博明ら 生殖医療に関連した周産期疾患SHiPとRPOC 周産期の現状と新しい知見 第73回日本産科婦人科学会学術講演会発表
2021年4月24日
「ポリープ」ってなに?
ポリープとは肌や内臓の表面にできるイボのように組織が増殖するものです。胃や大腸のポリープのように、正常組織から突出して見えるという見た目から、胎盤組織が増殖したものを胎盤ポリープと呼んでいます。
胎盤ポリープができるのはいつ頃?
胎盤ポリープは、出産後数日から数週間で発症するといわれています。
胎盤ポリープは出産後の出血で気づく
胎盤ポリープそのものの症状はないといえます。そのため、出産後に胎盤ポリープがあることに気づかず過ごし、日常生活を送っているときに子宮から大出血してポリープが発見されることが多いようです。
胎盤ポリープがあると、出産後数日から数週間で出血することがあります。突然たくさん出血して緊急で受診することもあれば、なかなか悪露がとまらず受診したところ、胎盤ポリープがあると診断されることがあります。
本来胎盤は母体と胎児をつなぐものです。流産や分娩終了後には母体にとって必要がなくなるため、自然に母体の外に出てくるはずですが、その仕組みがうまくいかないでこのような状態が起きると考えられます。
以前、流産した経験がある場合や、帝王切開、前置胎盤だった場合に起きやすくなるといわれています。産後の定期健診の際に、産科で偶然見つけられるケースも報告されています。
産後に不正出血が続く場合は、早めに産婦人科を受診するようにしましょう。
胎盤ポリープの原因は?
癒着胎盤が主な原因
胎盤ポリープができる主な原因は、胎盤組織がきれいに子宮内膜から剥がれないで残ったせい、「部分癒着胎盤(ゆちゃくたいばん)」だと考えられますが、まだはっきりしたことはわかっていません。
癒着胎盤とは、胎盤が強く子宮にくっ付き、出産しても胎盤が子宮の外に出ないことです。
このように胎盤の一部が子宮に癒着して子宮の中に残ることが、胎盤ポリープの原因となると考えられています。
子宮の手術の後や子宮内部の形に異常があるケースなどに癒着胎盤が起こりやすいといわれています。
胎盤ポリープは自然に治る?
自然治癒(排出)されるケースもあります
胎盤ポリープは、普段の生活を送って経過観察しているうちに、ポリープが子宮の外に出るケースがあります。このように自然に治ってしまうことを自然排出といいます。子宮収縮剤や抗生剤などの薬を使って自然排出を待つこともあります。
自然排出がないときは手術になることも
自然排出されない場合は、手術を行うこともあります。治療法は、出血があるか、妊娠を希望するかなど様々な点から選択されます。
治療後は妊娠したケースも
胎盤ポリープの治療後に妊娠したケースが報告されています。自然に排出するのを待つ方法もありますが、妊娠を望む場合は産科医と相談し、しっかりとポリープを治療することを考えましょう。
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胎盤ポリープはごくまれな病気ですが、症状がないため気づきにくく、大出血を起こす可能性があります。産後の健診をきちんと受け、出血などの異常があったらすぐに受診するようにしましょう。
参考文献
中塚幹也.“胎盤ポリープ”. 『臨床婦人科産科 』.医学書院.Vol.63 No1.2009
- 三重大学医学部産婦人科 田中博明ら 生殖医療に関連した周産期疾患SHiPとRPOC 周産期の現状と新しい知見 第73回日本産科婦人科学会学術講演会発表 2021年4月24日
- 大石真希,宮越敬,田中守.“胎盤ポリープ―診断と管理”『 周産期医学』49巻1号(1月号)
- 鈴木一有,伊東宏晃,金山尚裕.胎盤ポリープの取り扱い. 『周産期医学必修知識 第8版』.東京医学社.Vol.46 2016
- 藤村大志,三輪照未,三輪一知郎ほか.“経過観察が可能であった胎盤ポリープ症例の検討”.『現代産婦人科』. Vol .66 No2 2017.
- 小野恭子,菊池昭彦,松原直樹.“産褥1か月の胎盤ポリープの取り扱いは?”. 『臨床婦人科産科』.医学書院.Vol. 62 No.4 2008
- 綾部琢哉・板倉敦夫(編集)『標準産科婦人科学 第5版』医学書院、2021年
- 成瀬勝彦(編著)、『妊産婦の保健指導 トラの巻 助産師の指導・説明に役立つ回答・アドバイス集 新生児 お悩み解決Q&Aミニブック付き』、メディカ出版、ペリネイタルケア2020年夏季増刊
- 日本産科婦人科学会(編・監)、『産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版』、日本産科婦人科学会、2018年
- 『ペリネイタルケア 』、メディカ出版、2020 Vol.39 No.12
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