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妊娠中に知っておきたい性感染症④ 梅毒

妊娠中に知っておきたい性感染症④ 梅毒【産婦人科医監修】

梅毒ときくと昔の病気のイメージがあるかもしれませんが、近年患者数が急増している感染症です。梅毒は性行為によって感染し、おなかの赤ちゃんへも感染する可能性があります。この記事では梅毒による妊娠中のリスクや症状、妊娠中に知っておきたいポイントについても解説します。
梅毒ときくと昔の病気のイメージがあるかもしれませんが、近年患者数が急増している感染症です。梅毒は性行為によって感染し、おなかの赤ちゃんへも感染する可能性があります。この記事では梅毒による妊娠中のリスクや症状、妊娠中に知っておきたいポイントについても解説します。

梅毒とは?

梅毒はスピロヘータの一種である梅毒トレポネーマという病原体の感染によって起こる性感染症です。

病名の由来は赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)の実に似ていることから梅毒(ばいどく)と呼ばれています。

梅毒の多くは性行為によって感染します。2013年頃から2019年頃にかけて梅毒の患者数が急増していて特に10〜20代の女性患者が増加の傾向にあります。それに伴い胎盤から胎児へ感染する「先天梅毒」の報告数も増えており、さらに梅毒に感染するとHIV感染症の発症リスクが上がるといわれています。

妊娠中無治療である場合、死産や新生児死亡の増加、皮膚症状や臓器の炎症、知的障がいや麻痺などさまざまな症状を起こす可能性があります。梅毒は初期であれば治療により完治するとされています。

梅毒の症状と治療

妊娠中の性感染症は、母子感染により赤ちゃんに感染する可能性もあるため注意が必要です。性感染症の中でも梅毒にはどのような症状が出るのか、治療法やリスクについて解説します。

梅毒の症状

梅毒は感染から2〜6週間の潜伏期間を経て発症。最初に侵入した箇所で増殖したのち、リンパ節や血流を介して全身に広がります。

梅毒の感染経過時期は第1期〜第4期まであり、第1期と第2期は「早期梅毒」と呼ばれ、第3期と第4期は「後期梅毒」と呼ばれます。

初感染から3ヶ月以内の時期を第1期といいます。多くは無症状です。

第2期は感染後3ヶ月から3年の期間をいいます。皮膚に赤〜ピンク色の湿疹が出現します。その後第3期、4期など末期ともなれば神経症状、心臓や血管の症状が現れることがあります。

赤ちゃんへの影響については、妊娠中のママから胎児・新生児に感染した場合、流産・死産・先天梅毒などが起こります。感染すると生後直後、または生後数ヶ月に症状が現れるといわれていますが、出生直後は無症状のことも多いとされています。

先天梅毒になり発症した場合、手のひらや足の裏が赤くなり、胎児発育不全(赤ちゃんの発育が悪いこと)や全身のむくみ、臓器の肥大や複数のあざなどさまざまな症状がでます。

梅毒が治療されなければ、乳幼児期以降はハッチンソンの三徴候(角膜炎、内耳性難聴、ハッチンソン歯※1)の症状が現れ、痙攣や知能発達の遅延を伴います。

※1 ハッチンソン歯:永久歯の上切歯が半月状にくぼみ、歯の先端が先細る歯の形成異常のこと。

ママと赤ちゃんに対する治療法は?

一般的な治療法は合成ペニシリン系の薬剤による治療法です。投与期間は、梅毒の第1期で2~4週間、第2期で4~8週間です。

妊娠中のママの場合は妊娠初期に検査し、感染が確認されたら妊娠5ヶ月までに治療を開始します。

赤ちゃんへの梅毒の感染は、胎盤が完成する前の時期(16〜18週頃)には起こりにくいことがわかっているためです。

治療をしなかった場合には、赤ちゃんの流産・死産や先天梅毒(胎児発育不全、皮膚や骨の異常、知能や運動の異常などが起きる)の感染が起きることがあるため早めの治療が大切です。

経口治療薬としてペニシリン系薬剤であるアモキシシリン(500㎎/錠)1日3錠を2〜4週間服用を続けます。治療で使われる抗菌薬は、胎盤を通過して赤ちゃんに対しても作用することを期待して投与されるため、赤ちゃんに安全な薬が選択されます。

新生児・乳児・小児が感染している場合の治療は、ペニシリン系薬剤の静脈内または筋肉内注射をします。

梅毒にかかっているのはいつわかる?

梅毒はおなかの赤ちゃんに胎盤を介して感染することがわかっているため、妊娠初期に妊婦全員に対して梅毒スクリーニング検査を行います。この血液検査で感染の有無をチェックします。

感染したママから生まれた赤ちゃんに梅毒があるかどうかを判断するため、身体診察を行って、赤ちゃんに潰瘍や発疹がないかを調べます。

赤ちゃんに潰瘍や発疹があれば、発疹部位より組織を採取し臍帯血や、赤ちゃんの血液を検査し、梅毒の有無を確認してかかっているかどうかを調べます。

梅毒の感染経路は?

ママへの主な感染経路は性行為

梅毒の感染経路は主に性行為によって感染します。

自分とパートナーのどちらかに梅毒の感染が判明したら、お互いに梅毒に感染している可能性があります。早めに検査を行い、陽性であれば必ず治療を行いましょう。治療は2人同時に行わないとパートナー間で感染を繰り返すことになるため、早めの治療を心がけてください。

感染経路は性行為であることから、性交時にコンドームを装着することが感染予防に繋がります。

赤ちゃんにはママから胎盤感染する

母体が梅毒に感染していた場合に、胎盤を介して梅毒トレポネーマが移行し、胎児感染が起こる可能性があります。

感染時期はほとんどの場合妊娠5ヶ月以降で、胎盤が完成する前の妊娠4ヶ月より前の時期には感染が起こりにくいとされています。

しかし梅毒の病原体であるスピロヘータは胎盤透過性がよいためママの血中のスピロヘータ量が多いと赤ちゃんへの影響が大きいとされ、流産や死産にいたることもあります。死産をまぬがれた場合には先天梅毒になる可能性があるようです。

ママに症状がなかったとしても治ったわけではなく、感染状態が続いているため、胎児感染が起こる可能性もあります。検査によって感染が確認された場合は医師の指示に従って治療に臨みましょう。

また、母乳による感染を心配する人もいるかもしれませんが、母乳からは感染しません。

妊娠中にもし梅毒に感染していることがわかったら

梅毒は進行すれば様々な症状がでますが、初期感染の段階で治療を行うと完治できる病気です。

治療せずに放置すると赤ちゃんに重篤な症状をもたらす可能性があります。さらに梅毒に感染するとHIV感染症の発症リスクが上がるといわれています。

性行為によって感染するため、性交時にコンドームで感染予防を行ったり、妊娠中に感染がわかった場合には医師の指示に従い、早めの治療を心がけましょう。

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