
【医師監修】吸引分娩しても赤ちゃんは安全?保険は適用される?必要なケースも解説
吸引分娩は、ママと赤ちゃんの安全を最優先に考え、速やかに出産を終わらせる必要がある場合に行う処置です。吸引カップという器具を赤ちゃんの頭に装着して行います。
この記事では、吸引分娩が必要なケースやリスクについて解説。吸引分娩の安全性や、保険が適用されるのかについても紹介します。吸引分娩についての正しい知識を身につけ、安心してお産に臨みましょう。
吸引分娩は、ママと赤ちゃんの安全を最優先に考え、速やかに出産を終わらせる必要がある場合に行う処置です。吸引カップという器具を赤ちゃんの頭に装着して行います。
この記事では、吸引分娩が必要なケースやリスクについて解説。吸引分娩の安全性や、保険が適用されるのかについても紹介します。吸引分娩についての正しい知識を身につけ、安心してお産に臨みましょう。
吸引分娩とは?

吸引分娩とは、赤ちゃんを外から引っ張ることで分娩を補助する方法です。吸引カップという吸盤のような器具を赤ちゃんの頭に装着して行います。
ママと赤ちゃんの安全を最優先に考え、速やかに出産を終わらせる必要がある場合に行います。
吸引分娩が必要になるケースとは?

吸引分娩が必要となる主なケースは以下のとおりです。
吸引分娩が行われるケース
お産が長引いた
ママの疲労によって陣痛が弱くなった
ママに合併症(心疾患・妊娠高血圧症候群)があり、あまりいきむことができない
子宮口が全開大・赤ちゃんが下がっている段階で、分娩の進行が止まってしまった
赤ちゃんの心拍数が急に低下した
吸引分娩は赤ちゃんに影響する?

吸引分娩の処置が適切に行われれば、赤ちゃんへの影響はほとんどありません。
ただし、吸引分娩を過度に行うと、赤ちゃんにストレスを与える可能性があります。そのため、吸引分娩にトライするのは3回程度までとされ、それ以降は赤ちゃんの安全を考慮し、緊急帝王切開が選ばれることが多いです。
吸引分娩のリスク

吸引分娩は赤ちゃんとママにリスクをもたらす場合があります。ここからは吸引分娩のリスクについて見ていきましょう。
赤ちゃんへのリスク
吸引分娩は、赤ちゃんの頭部に吸引カップという吸盤のような器具を装着して行います。そのため、赤ちゃんの頭部へのリスクが考えられます。
赤ちゃんの頭に傷やこぶができる
吸引分娩は、赤ちゃんの頭に傷やこぶができるリスクがあります。頭部に装着した吸引カップによって傷ができたり、こぶのような浮腫ができたりするのです。
ただし、赤ちゃんの頭の傷やこぶは、通常2〜3日ほどで自然に治るケースが多いです。
まれに帽状腱膜の下で出血することがある
吸引分娩の際に、赤ちゃんの頭の皮膚(帽状腱膜)と骨膜の間で出血が起こることがあります。これを「帽状腱膜下血腫」といい、出血が大きく広がったり、出血多量でショック状態になったりすることも。
ただし、吸引分娩による帽状腱膜下血腫の発生頻度は1%程度とされ、ごくまれな症状です。
母体へのリスク
次に、吸引分娩がママに与えるリスクについて見ていきましょう。
会陰が傷つく
吸引分娩は、通常の分娩より会陰の傷が大きくなるリスクがあります。吸引分娩を行う際は、あらかじめ会陰切開の処置をしておきます。吸引分娩では短時間で赤ちゃんの頭を出す必要があり、外陰部が軟らかくなるのを待つ時間がないためです。
ただし、分娩後に産院で適切な処置をしてもらえるので、後遺症が残ることはありません。痛みが長引く可能性はありますが、しばらくすれば治まります。
膀胱麻痺が起こる
吸引分娩によって膀胱や尿道の神経などに負担がかかり、膀胱麻痺が起こることがあります。膀胱麻痺によって膀胱の機能が正常に働かなくなり、尿意を感じなくなったり出しにくくなったりするのです。
吸引分娩による膀胱麻痺は、出産後数日で治ることが多いです。ただし、退院後も自己導尿(尿の出口に管を入れて尿を出すこと)が必要となるケースもあるようです。
吸引分娩ってどうやるの?

吸引分娩は、赤ちゃんの頭に吸引カップをつけて行います。ここでは具体的な手順を解説します。
吸引分娩の流れ
会陰部に局部麻酔を施し、会陰切開を行う
無痛分娩で麻酔が十分に効いている場合は、局部麻酔をせずに会陰切開をします。
吸引カップを赤ちゃんの頭の適切な位置に装着する
陣痛が始まるタイミングに合わせて、吸引力を徐々に高めていく
ママのいきみに合わせて引っ張る
赤ちゃんが出やすいように、引っ張ると同時にママのおなかを上から押すこともあります。
分娩後、胎盤が出たら会陰を縫合する
吸引分娩は保険が適用される?

吸引分娩には公的医療保険が適用されます。吸引分娩は通常の出産とは異なり、異常分娩とみなされるためです。国民健康保険や被用者保険が適用されることにより、3割の自己負担で済みます。
また、吸引分娩は民間医療保険の対象にもなるため、保険会社から入院給付金や手術給付金が支給されます。ただし、公的医療保険が適用される場合でも、民間の医療保険では保険金が支払われないケースがあるため注意が必要です。保険金の支払条件は保険会社や保険商品の種類によって異なるので、契約内容を確認しましょう。
また、吸引分娩を行っても、医師が正常分娩の範囲内と判断した場合、公的医療保険と民間医療保険のどちらも適用されないことがあります。
吸引分娩に関するよくある質問

ここでは、吸引分娩に関するよくある質問と回答をまとめました。
吸引分娩すると発達障害になりやすい?
吸引分娩が適切に行われれば、発達への影響はありません
吸引分娩と発達障害などとの直接的な因果関係について、医学的なエビデンスはありません。吸引分娩が適切になされれば、赤ちゃんの発育やてんかんなどの脳の障害に影響することはないのです。吸引分娩は、速やかに分娩が行われないとママと赤ちゃんの命に関わる可能性がある場合に行う処置であり、多くの産科で行われています。
吸引分娩で赤ちゃんが死んでしまうことはある?
ゼロではありませんがごくまれです
吸引分娩によって赤ちゃんが死亡するケースはごくまれに報告されています。具体的には、通常の限度とされる回数より多くの吸引分娩(8回)を行ったあと、生まれた男児が帽状腱膜下血腫によって死亡したケースです。ただし、吸引分娩による帽状腱膜下血腫の発生頻度は1%程度とされ、極めてまれです。2〜3回程度の吸引分娩では深刻な障害は生じないとされていますし、専門医による適切な管理の下で行われる吸引分娩は、安全性の高い処置だといえます。
吸引分娩によるこぶや傷は数日で治る。適切な処置なら発達への影響はない

吸引分娩はママと赤ちゃんの安全を最優先に考え、速やかに出産を終わらせる必要がある場合に行う処置です。吸引分娩によって赤ちゃんの頭にこぶなどができることもありますが、適切に処置すれば発達への影響はありません。
また、吸引分娩は通常、公的医療保険の対象となります。民間の医療保険に加入している場合は、入院給付金や手術給付金などの支給も受けられますよ。
吸引分娩はママのお産を手助けする処置です。怖がらず正しい知識を持ってお産に臨みましょう。
- 吸引分娩は吸引カップを赤ちゃんの頭に装着し引っ張る分娩方法
- お産が長引いている、赤ちゃんの心拍が低下しているなどの場合に行われる
- 赤ちゃんの頭に傷やこぶができたり、ママの会陰が傷ついたりすることがある
- 吸引分娩は通常公的医療保険と民間医療保険の対象となる
- 適切に処置が行われれば赤ちゃんの発達に影響を与えることはない
出典
- 国立成育医療研究センター,「吸引分娩・鉗子分娩について」,2025/2/3閲覧
- 恩賜財団済生会宇都宮病院,「吸引分娩と鉗子分娩について」,2025/2/3閲覧
- 日本産科婦人科学会,「産科手術−吸引・鉗子分娩」,2025/2/10閲覧
- 国立成育医療研究センター,「器械分娩①赤ちゃんがなかなか出ないときはどうする?『吸引分娩』『鉗子分娩』をすることがあります」,2025/2/3閲覧
- 国立成育医療研究センター,「器械分娩②会陰切開って、必ずしなきゃいけないの? 全員がするわけではありません。お産を早く終了する必要がある時に。」,2025/2/3閲覧
- MSD,「吸引・鉗子分娩」,2025/2/3閲覧
- 明治安田生命,「出産費用に保険は適用される?適用外のケースや利用できる公的精度を紹介」,2025/2/3閲覧
- 東京海上日動あんしん生命,「妊娠・分娩に関する入院は、入院給付金を請求することができますか?」,2025/2/3閲覧
- 日本産婦人科医会,「頻回の吸引分娩で出生した児が,帽状腱膜下血腫のため死亡した事例 〈F 地裁 2007 年 10 月〉」,2025/2/3閲覧
- 母子衛生研究会,「Q. 3か月の男児。吸引分娩での出産でしたが、後遺症がないか心配です。 (2017.11)」,2025/2/3閲覧
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