
【医師監修】無痛分娩は本当に痛くないの?メリット・デメリット・費用・出産までの流れなども解説
無痛分娩という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。しかし「無痛分娩って本当に痛くないの?」「無痛分娩にリスクはないのかな?」などの疑問を抱えている人もいるのではないでしょうか。
今回は、無痛分娩とは何か、本当に痛みを感じないのか、などについて解説します。当日の流れや費用などについても紹介しますよ。
無痛分娩にしようか迷っている人はぜひ参考にしてくださいね。
無痛分娩という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。しかし「無痛分娩って本当に痛くないの?」「無痛分娩にリスクはないのかな?」などの疑問を抱えている人もいるのではないでしょうか。
今回は、無痛分娩とは何か、本当に痛みを感じないのか、などについて解説します。当日の流れや費用などについても紹介しますよ。
無痛分娩にしようか迷っている人はぜひ参考にしてくださいね。
無痛分娩とは?

まずは、無痛分娩がどのようなものなのかを詳しく説明します。
無痛分娩ってどんなもの?
無痛分娩は、麻酔を使って出産時の痛みを和らげる方法です。
出産時の痛みは、子宮の収縮や子宮口が引き伸ばされる刺激によって起こります。
この刺激が背骨付近の神経を通じて脊髄に伝わると、脳が痛みとして認識します。
無痛分娩では、麻酔を背中の脊髄付近に少しずつ注入することで、痛みの伝達を防ぐのです。
無痛分娩の種類
無痛分娩には「計画無痛分娩」と「自然無痛分娩」の2種類があります。
計画無痛分娩は、事前に出産日を決めて分娩を行う方法です。出産日前日になったら入院し、陣痛誘発剤を使用します。その後、子宮口の開きや陣痛の痛みの強さなどを確認し、麻酔を入れます。
自然無痛分娩は、自然に陣痛が始まってから麻酔を開始する方法です。
どちらにしても、陣痛が始まってからの麻酔注入になるため、最初からまったく痛みを感じないわけではありません。
無痛分娩で使う麻酔の種類
無痛分娩で使用される麻酔には主に「硬膜外麻酔」と「脊髄くも膜下麻酔」があります。
硬膜外麻酔は、脊髄の外側にカテーテル(ごく細いチューブ)を挿入し、麻酔薬を持続的に注入する方法です。30分ほどたつと麻酔の効果が出てきます。
脊髄くも膜下麻酔は、脊髄の内側に細い針を刺し、麻酔薬を直接注入する方法です。注入してから5分ほどで痛みを感じなくなります。
無痛分娩は本当に痛くない?

無痛分娩に痛みを和らげる効果がありますが、まったくの無痛というわけではありません。
陣痛が来てから麻酔を入れるため、最初は痛みを感じることになります。また、いきむタイミングをつかむために、痛みの感覚をある程度残す必要があるので、完全な無痛ではないのです。
無痛分娩は安全なの?

麻酔の処置が適切になされていれば、過剰に心配する必要はありません。
無痛分娩を行っている医療機関の多くは、万が一のトラブルに備えて体制・設備をしっかり整えています。あまり心配しすぎず、安心して出産に臨んでくださいね。
無痛分娩のメリットは?

無痛分娩には多くのメリットがあります。詳しく見てみましょう。
出産時の痛みを和らげられる
無痛分娩では、麻酔を使用することで出産時の痛みを抑えることができます。
陣痛や出産時の強い痛みを感じにくくなることで、出産に対するストレスや恐怖を軽減することができるでしょう。
出産後に腟や外陰部などの縫合が必要となった場合も、麻酔が効いているので強い痛みを感じることはありません。
体力が回復しやすい
無痛分娩では、出産後のママの体力回復がしやすい場合があります。
自然分娩の場合、十数時間以上も陣痛が続いて体力を消耗しすぎてしまい、産後に思うように体が動かせなくなることがあります。
しかし、無痛分娩なら痛みが少ない分、自然分娩に比べ体力をあまり消耗せず、出産後の疲労感が軽減されるのです。
また、痛みがないために出産後すぐに食事や休息を取りやすくなり、体力の回復が早まります。赤ちゃんのケアにも早くから対応できるのもうれしいポイントですね。
リラックスして出産に臨める
リラックスして出産に臨めるのも、無痛分娩のメリットの一つです。
自然分娩の場合、強い痛みで心の余裕を持てず、パートナーや周りの人にイライラしたり、出産に集中できなかったりすることもあります。
しかし、無痛分娩であれば痛みに対する恐怖感が薄れるので、穏やかな気持ちで出産に向き合えるでしょう。
また、心理的な負担が軽減されることで、次の出産に対しても前向きに考えられるかもしれません。
無痛分娩のデメリット・リスクは?

無痛分娩には多くのメリットがありますが、デメリットやリスクもいくつか存在します。ここでは、具体的なデメリットやリスクを紹介します。
分娩時間が長くなる
無痛分娩では、分娩時間が長引いてしまう可能性があります。
麻酔によって陣痛が弱くなると、赤ちゃんをうまく外に押し出せず、分娩がなかなか進まなくなることがあるのです。
陣痛が弱くなった場合は、陣痛促進剤で陣痛を強くする、吸引分娩(赤ちゃんの頭に吸引カップをつけて引っ張る)を行うなどの措置が必要となることがあります。
麻酔の効き方に個人差がある
麻酔の効果には個人差があり、麻酔が入っていても部分的に効かなかったり、効きが弱かったりすることがあります。また、体質的に麻酔が効きづらい人もいるようです。
麻酔が十分に効かない場合、麻酔を注入するためのチューブを入れ直す必要が生じることもあります。
麻酔による副作用がある
無痛分娩では、麻酔によって以下のような副作用が出ることがあります。
麻酔による主な副作用
発熱
低血圧
頭痛
足のしびれ
背中の痛み
腰痛
吐き気
めまい
尿が出づらくなる(排尿障害)
いずれも適切な処置を行えば軽減する場合がほとんどです。
過去には細菌感染や血腫、局所麻酔薬中毒などが起こった例もありますが、発生確率はきわめて低いといえます。
適切な管理が行われていれば、過度に心配する必要はありません。
赤ちゃんに影響するおそれがある
無痛分娩が赤ちゃんに影響する場合もあります。
麻酔が急激に効きすぎると、一時的に赤ちゃんの心拍が低下することがあるのです。また、まれですが陣痛促進剤によって赤ちゃんが胎児機能不全になってしまうこともあります。
ただし、これらのリスクは非常に低く、適切な麻酔管理を行えば十分に予防できるといわれています。
このように、無痛分娩はお腹の赤ちゃんに一時的に影響する可能性はあったとしても、長期的な影響を及ぼすことはまずないと考えてよいでしょう。
自然分娩よりも費用が高い
無痛分娩は自然分娩に比べて高額になります。
無痛分娩には麻酔で使用する針や薬などの特殊な設備が必要なので、費用が高くなるのです。
たとえば、国立研究開発法人国立成育医療研究センターでは、無痛分娩の費用を一律「自然分娩の費用+18万円」と定めています。通常の分娩に比べ、費用負担が大きいことがわかるでしょう。
無痛分娩を決めるまでの流れ

無痛分娩を受けるためには、事前の準備と計画が重要です。ここでは、無痛分娩を安心して進めるための手順と準備について詳しく説明します。
まずは家族と話し合う
無痛分娩を選択する前に、家族としっかり話し合いましょう。
無痛分娩のメリットとデメリット、費用、出産当日の流れなどを共有したうえで、無痛分娩を受けるかどうか決められるとよいですね。
病院を受診する
無痛分娩での出産を決めたら、無痛分娩が可能な病院を探し、早めに受診しましょう。無痛分娩に対応している病院は、無痛分娩関係学会・団体連絡協議会(JALA)の「全国無痛分娩施設検索」というサイトで検索できます。各病院の医療スタッフの人数や保有資格、無痛分娩の取扱実績などを確認できますよ。
また、厚生労働省の「出産なび」というサイトでも、無痛分娩に対応している施設を調べられます。分娩費用の目安や施設の基本情報などが掲載されているので、こちらもあわせて利用してみるとよいでしょう。
病院のホームページもチェックしながら、設備やサポート体制について確認することも大切です。
説明会に参加する
無痛分娩を希望する場合は、病院で行われる事前の説明会に参加する必要があるケースが多いです。これは、病院によって無痛分娩の方法や手順が異なることがあるためです。
説明会では、無痛分娩の具体的な手順やリスク、費用、事前準備について詳しく知ることができます。
医師や助産師から直接話を聞くことで、疑問点を解消し、安心して出産に臨むことができるでしょう。
分娩日を決める
計画無痛分娩を選択する場合は、分娩日を事前に決定します。
分娩日は、母親の健康状態や胎児の成長具合、家庭の事情などを考慮して決められます。医師と相談しながら、最適なタイミングを見つけましょう。
分娩日前後に必要な準備をする、家族のサポート体制を整えるなど、妊娠中からきちんと対策しておいてくださいね。
無痛分娩当日の流れは?

ここでは、無痛分娩当日の一般的な流れを紹介します。
病院によって、順番が前後する可能性があるので、詳しい流れは医師や助産師に確認しましょう。
準備をする
無痛分娩当日には、母子手帳・保険証・入院時の着替え・スリッパ・必要な書類などを準備しておきましょう。リラックスして出産に臨んでくださいね。
着替えや検尿・血圧・体温測定などが終わったら、心電図や血圧計、点滴、胎児心拍数陣痛計などを装着し、赤ちゃんの状態や子宮収縮の状況をチェックします。
状況に応じて、数時間おきにチェックすることもあれば、出産まで持続的に観察することもあります。
子宮口を広げる
無痛分娩では、分娩の進行をスムーズにするために、バルーンと呼ばれる風船のような器具を使って子宮口を広げる手順が行われることがあります。
これは、ある程度子宮口が開いていないと陣痛が起こりづらいためです。
陣痛促進剤を投与する
陣痛を強めて分娩の進行を促すため、陣痛促進剤を使用します。
通常、子宮口がある程度開いた段階で点滴を通じてゆっくりと投与され、妊婦さんの状態を見ながら投与量や薬の種類を調整します。
麻酔を開始する
子宮口がある程度開き、陣痛が始まったら麻酔を開始します。病院や状況によっては、子宮口が広がる前に麻酔を開始したり、逆に子宮口が開いてから麻酔の量を減らしたりする場合も。
麻酔の効き目を確認しながら量を調整してくれるので安心してくださいね。
麻酔を開始したあとは固形物は基本的に摂取できなくなります。ゼリーや飲み物などで栄養補給をしましょう。摂取するものについて医師から指示を受けることがあるので、その場合は医師の指導に従ってください。
分娩する
麻酔で陣痛の痛みを軽減しながら、出産を迎えます。子宮口が完全に開いたら、医師や助産師の指示に従い、赤ちゃんを出産します。
麻酔が効いていると、自分でいきむタイミングをつかむのが難しい場合もあるため、助産師の合図に合わせていきみましょう。
無痛分娩の費用はどのくらいかかる?

無痛分娩の費用は、病院や地域によって異なります。一般的には自然分娩よりも10〜20万円ほど高くなる病院が多いようです。
麻酔科医の費用、麻酔薬の費用、無痛分娩を行うための設備費用などが必要になるため、通常の自然分娩よりも高額になるのです。
費用は病院によって異なるので、具体的にどのくらいかかるのかは病院に問い合わせてみましょう。
出産費用の自己負担額は出産育児一時金の制度で軽減できる
無痛分娩に限らず、出産にかかる費用は「出産育児一時金」の制度を利用することで50万円軽減できます。
出産育児一時金とは、健康保険・国民健康保険の被保険者等が出産した場合に支給されるお金のこと。2023(令和5)年4月から、支給額が42万円から50万円に引き上げられました。
出産費用が50万円以内の場合はその全額を一時金でカバーでき、50万円を超えた場合でも自己負担は超過分のみで済むので、経済的な負担を抑えられます。
出産育児一時金の利用も考慮したうえで、出産にいくらかかるのか把握しておくとよいでしょう。
無痛分娩は保険が適用される?

無痛分娩は通常、健康保険の適用外となります。これは自然分娩でも同様です。そのため、全額自己負担で支払う必要があります。
しかし、出産育児一時金などを利用することで、負担を軽減することができます。また、合併症が発生した場合や帝王切開が必要になった場合は、健康保険が適用されることがあります。
無痛分娩できる病院の選び方は?

無痛分娩を行う病院を選ぶ際、いくつか注目したいポイントがあります。詳しく見てみましょう。
医師の経験・実績の豊富さ
無痛分娩を担当する医師の経験や実績を確認しておきましょう。
経験豊富な医師であればさまざまな状況に対応できるため、安心して任せることができますね。
また、医師だけでなく助産師や看護師の雰囲気なども見ておくとベター。
病院のホームページを見て、無痛分娩の実績数や成功率について確認するとよいでしょう。
費用の安さ
無痛分娩は自然分娩よりも費用が高額なので、自己負担はなるべく安く抑えたいものです。
出産育児一時金制度を利用すれば自己負担額が50万円抑えられますが、直接支払制度に対応していない病院の場合、分娩費用の全額を一時的に自分で立て替えなければなりません。
費用負担を抑えるために、直接支払制度に対応しているかどうかもあわせて確認しましょう。
設備の充実度
病院の設備の充実度も重要なポイントです。「出産前のプライバシーを保ちたい」「周りに気を使わず出産に集中したい」という場合は、個室のある病院だとうれしいですね。
病院のホームページなどで、自分の希望に合った設備が整っているかを確認しましょう。
サポート体制の充実度
無痛分娩で出産する際は、病院のサポート体制も重要です。麻酔科医が常駐しているか、分娩後のケアが充実しているかなどを確認しましょう。
また、産後の母子ケアやサポートプログラムが充実している病院を選べば、産後も安心ですね。
病院に対する口コミや体験談があれば参考にしてみましょう。
先輩ママの体験談|無痛分娩、どうだった?
トモニテ編集部では、妊娠・出産を経験した女性を対象に分娩・出産方法に関するアンケートを実施。
無痛分娩に関する体験談も教えてもらえたので、いくつか紹介します。無痛分娩にするか迷っている人は、ぜひ参考にしてくださいね。

asuasu30さん/30代/会社員(正社員)/関東地方在住/2児のママ

KBさん/50代/パート・アルバイト/中部地方在住/1児のママ

あいうえおさん/30代/会社員(正社員)/中部地方在住/1児のママ

けっちさん/30代/自営業/近畿地方在住/1児のママ

なっちゃんママさん/40代/専業主婦/関東地方在住/1児のママ

ももさん/30代/公務員/関東地方在住/1児のママ

なつきさん/20代/会社員(正社員)/関東地方在住/1児のママ

ゆきりんさん/30代/専業主婦/九州・沖縄地方在住/2児のママ
「完全な無痛ではなかった」という声が多くみられることから、やはり痛みをまったく感じないということはあまりないようです。
一方で、分娩時間が短く済んだ・産んだ感覚を味わえたなどの声も見受けられ、無痛分娩にしてよかったと感じている人が多いこともわかります。
また、今回のアンケートでは「無痛分娩をもうやりたくない」といったネガティブなコメントはありませんでした。
先輩ママの体験談も参考にして、分娩方法を考えてみてくださいね。
無痛分娩についてよくある質問

ここでは、無痛分娩について多く寄せられる疑問にお答えします。
無痛分娩は危ないもの?
適切な管理がなされていればリスクはほとんどありません
無痛分娩には、低血圧・頭痛・背中の痛みなど麻酔による副作用がみられる場合もあるなど、リスクもあります。しかし、少ない痛みでリラックスして出産ができたり、産後の回復が早かったりと、さまざまなメリットもあります。適切な管理のもとであれば重大な事故が起こる可能性は極めて低いため、過度に心配する必要はありません。とはいえリスクはゼロではないので、メリット・デメリットの両方をよく理解したうえで、無痛分娩にするかどうかを検討しましょう。
初産でも無痛分娩できる?
初めてのお産でも無痛分娩できます
初産でも無痛分娩は可能です。しかし、病院によっては、初産の場合は出産に時間がかかり計画通りに無痛分娩が進まない可能性があることから無痛分娩を行わないというところも。事前に病院に確認してみましょう。
無痛分娩で麻酔を受けている間は食べても大丈夫?
お産を待っている間は食事を控えましょう
無痛分娩のために麻酔を効かせている間は、食事を控えましょう。無痛分娩に限らず、お産を待っている間は胃腸の働きが低下しています。食事を摂ることで吐き気や嘔吐のリスクが高まるので、基本的には食事をしないほうがベターです。ただし、出産前の飲食について医師から指導を受けた場合は、その内容に従ってください。
メリットやリスクを理解したうえで無痛分娩を検討しよう

無痛分娩は出産時の痛みを軽減し、安心して出産に臨むことができる出産方法です。痛みの軽減や体力回復の早さなどのメリットが多い反面、分娩時間が長くなる可能性があるなどのデメリットもあります。
無痛分娩を希望する場合は、事前に家族とよく話し合い、メリットやデメリット、費用などについての理解を深めましょう。また、医療機関での説明会などの準備を進めることも大切です。
リスクもしっかりと把握したうえで、前向きな気持ちで出産を迎えられるとよいですね。
- 無痛分娩は「完全なる無痛」ではない
- 痛みの軽減だけでなく、産後の回復スピードが早いことも大きなメリット
- 麻酔の効きに個人差がある、麻酔の副作用が存在するなどのデメリットも
- 無痛分娩は通常の分娩よりも高額!家族でしっかり話し合って
- 病院選びでは無痛分娩の経験や実績、サポート体制などをチェックしよう
出典
【注意事項】
本記事は公開時点での情報となります。
本サイトでは正確な情報を提供できるよう最善を尽くしておりますが、妊娠期の母体の状態は個々人により異なるためすべての方に適用できるものではございません。
記事の一部では妊娠中の方から寄せられた体験談を紹介しておりますが、個人の実体験に基づいており医学的根拠があるものとは限りません。専門家の見解と異なる意見も含まれるためご注意ください。
掲載情報に基づく判断はユーザーの責任のもと行うこととし、必要に応じて適切な医療機関やかかりつけの病院などに相談・受診してください。
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