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【医師監修】着床前診断の費用はどのくらい?保険適用の有無や助成金についても解説

【医師監修】着床前診断の費用はどのくらい?保険適用の有無や助成金についても解説

「着床前診断」という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。妊娠率の向上や流産率の低減を目的に実施されるものですが、費用がどのくらいかかるのか、高額な費用に見合うメリットがあるのか不安に感じている人もいるかもしれません。

そこでこの記事では、着床前診断の費用相場や保険適用の有無、助成制度について解説します。着床前診断のメリット・デメリットも紹介するので、着床前診断を検討している人はぜひ参考にしてください。

「着床前診断」という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。妊娠率の向上や流産率の低減を目的に実施されるものですが、費用がどのくらいかかるのか、高額な費用に見合うメリットがあるのか不安に感じている人もいるかもしれません。

そこでこの記事では、着床前診断の費用相場や保険適用の有無、助成制度について解説します。着床前診断のメリット・デメリットも紹介するので、着床前診断を検討している人はぜひ参考にしてください。

着床前診断とは?

【医師監修】着床前診断の費用はどのくらい?保険適用の有無や助成金についても解説

着床前診断とは、体外受精で得られた受精卵を子宮に戻す前に、染色体異常や遺伝的な疾患がないかを検査する技術のことです。

流産や死産の可能性が低い受精卵を選んでから子宮に戻すため、流産率を下げる効果が期待できます。

日本では、2004年から実施が始まりました。高度な技術が求められること、倫理的な問題があることなどから、日本産科婦人科学会が認定した施設でのみ受けることが可能です。

なお、着床前診断は妊娠率の向上や流産率の低減を目的としたものであり、産み分けのために受けることはできません

着床前診断は、目的や検査対象などによって以下の3つの区分に分かれます。

  • PGT-A
  • PGT-SR
  • PGT-M

以下でそれぞれについて確認していきましょう。

PGT-A

胚の染色体数を調べる検査です。

染色体の数に異常があると、流産率が高くなることがわかっています。そのため、PGT-Aを受けることで、流産リスクを低減する効果が期待できます。

胚移植(受精卵を子宮に戻すこと)が2回以上不成功となったカップルや、流産・死産を2回以上経験しているカップルが対象です。

PGT-SR

胚の染色体の形を調べる検査です。染色体の構造に問題があると、流産や死産を繰り返してしまう可能性があるため、そのリスクを軽減するためにPGT-SRが用いられます。

カップルのどちらかに「均衡型染色体転座」などの染色体異常が確認されている不妊症・不育症の人が対象で、妊娠や流産・死産の経験は問いません。

PGT-M

重篤な遺伝性疾患をもつカップルを対象とした検査です。

カップルのどちらかが、赤ちゃんに重篤な遺伝性疾患が生じる可能性のある遺伝子変異・染色体異常をもつ場合に受けられます。

「重篤」の定義について、日本産科婦人科学会では「成人に達する以前に日常生活を強く損なう症状が出現したり、生存が危ぶまれる状況になり、現時点でそれを回避するために有効な治療法がないか、あるいは高度かつ侵襲度の高い治療を行う必要がある状態」としています。

出生前診断との違いは?

着床前診断と出生前診断は、いずれも赤ちゃんに先天的な病気がないかを調べる検査ですが、検査のタイミングや対象が異なります。

着床前診断は「受精卵」に対する検査であり、妊娠が成立する前に実施されます。一方、出生前診断は妊娠中の「胎児」に対して行う検査で、妊娠が成立したあとに行われるものです。

出生前診断の検査方法には、NIPT(血液検査)や羊水検査、超音波検査などがあります。これらの検査を通して、赤ちゃんの病気の有無や健康状態などを確認します。

着床前診断の費用はどれくらい?

【医師監修】着床前診断の費用はどのくらい?保険適用の有無や助成金についても解説

着床前診断にかかる費用は、1回あたりおよそ50〜100万円が相場です。

体外受精そのものに40万円近くの費用がかかるうえ、着床前診断には高度な技術が必要となるため、高額な費用がかかるのです。

特に、複数の受精卵を検査する場合や、採卵を複数回行う場合などは、さらなる費用がかかる可能性があるでしょう。

診断の種類や医療機関、調べる胚の数などによっても金額が大きく異なるので、診断前に医療機関に具体的な金額を確認することが大切です。

着床前診断は保険適用される?

【医師監修】着床前診断の費用はどのくらい?保険適用の有無や助成金についても解説

着床前診断は保険適用外のため、診断にかかる費用は全額自己負担です。

2022年4月から不妊治療が保険適用の対象となりましたが、着床前診断については、検査機器の一部が薬事承認されていない点や倫理的な観点から、適用対象外となっています。

なお、一部の自治体では、特定の条件を満たした場合に限り、助成金を支給する制度を設けています。たとえば東京都の場合、PGT-Aに限り15万円を上限に助成を受けることが可能です。

助成制度の有無や内容については、おすまいの自治体に問い合わせてみてください。

着床前診断の費用を抑えるには?

【医師監修】着床前診断の費用はどのくらい?保険適用の有無や助成金についても解説

着床前診断の費用は医療機関ごとに大きく異なるため、複数の医療機関の費用を比較することが大切です。着床前診断を受けられる施設は、日本産科婦人科学会のホームページで検索できます。

ただし、費用だけで判断するのではなく、診断の実績や医師の経験、通院の利便性なども考慮しましょう。 着床前診断の実績が豊富な医療機関であれば、より信頼性の高い検査結果が期待できます。

また、自宅や職場から通いやすい場所を選ぶことで、通院時のストレスや交通費を軽減することも可能です。

総合的な視点で判断し、自分にとって最適な医療機関を選びましょう。

着床前診断のメリットは?

【医師監修】着床前診断の費用はどのくらい?保険適用の有無や助成金についても解説

着床前診断の費用は高額であるため、その費用に見合う効果が得られるのか気になる人もいるでしょう。

検査対象に該当する場合は、どのようなメリットがあるのかを理解することが大切です。ここでは、着床前診断の主なメリットをご紹介します。

赤ちゃんが遺伝性疾患を発症するリスクを抑えられる

着床前診断によって受精卵の遺伝子を調べることで、赤ちゃんが遺伝性疾患を発症する可能性を最小限に抑えることができます

カップルのどちらかが遺伝的な疾患をもっている場合でも、出産をあきらめることなく、健康な赤ちゃんを迎える可能性を高めることが可能です。

流産のリスクを抑えられる

流産の多くは、受精卵の染色体異常が原因とされています。

着床前診断を行うことで、染色体異常を持つ受精卵を移植するリスクを避けられ、流産の確率を減らすことが可能です。

特に、流産を繰り返している人や、流産のリスクが高まる「高齢出産」となる人にとっては大きなメリットといえるでしょう。

着床前診断のデメリットは?

【医師監修】着床前診断の費用はどのくらい?保険適用の有無や助成金についても解説

着床前診断については、メリットだけでなくデメリットも理解したうえで検討することが大切です。

メリットとデメリットの両面を比較検討することで、より納得した形で診断を受けるかどうかを決められるでしょう。

ここでは、着床前診断の主なデメリットをご紹介します。

赤ちゃんへの影響については確認できていない

着床前診断による赤ちゃんへの影響については、現時点ではわかっていません

着床前診断では、受精卵の培養や細胞の採取、凍結保存などを行います。そのため、受精卵にダメージを与える可能性があり、生まれた赤ちゃんにも何らかの影響を与えることが懸念されているのです。

また、赤ちゃんの生涯にわたる長期的な影響についても、現時点では確認できていません。着床前診断の歴史は浅く、赤ちゃんへの長期的な影響をみるにはまだまだ時間がかかるためです。

このことから、現時点では赤ちゃんへの影響がゼロであると言い切ることはできません。

結果が100%正しいとは限らない

着床前診断の結果が100%正確であるとは限りません。異常なしと判断された胚でも、遺伝的な疾患をもつ赤ちゃんが生まれる可能性はゼロとはいえないのです。

2002年のヨーロッパの研究でも、着床前診断によって妊娠した人の約2%に、疾患のある赤ちゃんが生まれる可能性があるとされています。

また、あくまで特定の疾患のリスクのみを調べるため、すべての病気を確実に取り除けるわけではありません。

妊娠率・出産率の向上効果についてはまだ証明されていない

着床前診断を受けたことで妊娠率や出産率が上がった、という報告は今のところありません

むしろ、ある研究では、自然妊娠の場合よりも、着床前診断を受けた場合のほうが妊娠率・出産率が低いという結果が出ています。また、妊娠に至るまでの時間も、自然妊娠とほぼ変わらなかったことも報告されています。

この研究にはさまざまな課題があるため、一概に「着床前診断を受けたら妊娠率・出産率が下がる」と断言することはできません。

しかし、着床前診断によって妊娠率・出産率が上がるという確証もなく、不妊症に効果があるかは現時点では不明な状況です。

日本産科婦人科学会への申請・承認が必要

着床前診断を受けるには、日本産科婦人科学会に申請し、承認を受ける必要があります。申請書類の準備が必要となるため、負担に感じる可能性があるでしょう。

また、承認を得るまでに数ヶ月ほどかかるので、診断を受けたいと思ってもすぐに実施されるわけではない点に注意が必要です。

承認を得られなかった場合は、たとえ強い希望があっても着床前診断を受けることはできません。

着床前診断についてよくある質問

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ここでは、着床前診断についてよくある質問と回答を紹介します。

クエスチョン吹き出し

着床前診断で妊娠できる確率は?

  • クエスチョン回答吹き出し

    1回の胚移植につき20%台といわれています

    着床前診断を実施した場合の妊娠率は、胚の健康状態や患者の年齢によって異なりますが、2008年のヨーロッパの報告によると、1回の胚移植での妊娠率は約20%台とされています。ただし、個人差が大きいため一概にはいえません。

着床前診断の費用は高額。メリット・デメリットを踏まえ検討を

【医師監修】着床前診断の費用はどのくらい?保険適用の有無や助成金についても解説

着床前診断は、遺伝性疾患の予防や流産リスクの低減、妊娠率の向上を目的に行われます。

保険の適用対象外なので、費用はすべて自己負担です。自治体によっては助成制度を設けているため、おすまいの自治体のホームページなどで確認するとよいでしょう。

ただし、着床前診断によって妊娠率が上がるかは現時点では不明です。また、100%正しい結果を得られるわけではなく、すべての疾患のリスクを抑えられるわけでもありません。

メリットとデメリットを踏まえたうえで、着床前診断を受けるか検討しましょう。

  • 着床前診断とは子宮に移植する前に受精卵の遺伝子を検査する技術
  • 流産や赤ちゃんの遺伝子疾患を回避できる可能性が高くなる
  • 費用の相場は50〜100万円だが医療機関や検査の種類などにより差がある
  • 保険は適用対象外。ただし自治体によっては助成制度があることも
  • メリット・デメリットを理解したうえで検討しよう

出典

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