【医師監修】子宮筋腫があっても妊娠できる? 赤ちゃんへの影響は?
ママの子宮の中で出産までの約10ヶ月を過ごす赤ちゃん。もしその子宮に筋腫があった場合、おなかの赤ちゃんへの影響はあるのでしょうか?また、子宮筋腫と不妊の関係など気になる情報をお伝えします。
ママの子宮の中で出産までの約10ヶ月を過ごす赤ちゃん。もしその子宮に筋腫があった場合、おなかの赤ちゃんへの影響はあるのでしょうか?また、子宮筋腫と不妊の関係など気になる情報をお伝えします。
子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)とは
子宮筋腫とは、子宮にできた良性の腫瘍のことをいいます。
発生する原因は不明ですが、子宮筋腫が大きくなるのは女性ホルモンの一つ、エストロゲン(卵胞ホルモン)が関わっていると考えられていて、閉経すると小さくなります。30歳代以降では20〜30%の女性にみられる決して珍しくない婦人科の良性の腫瘍です。
最近では妊娠する年齢が上がってきていることと、子宮筋腫が発生する年代が重なることから子宮筋腫を合併した妊娠が以前よりみられるようになりました。
子宮筋腫ができる場所により症状が違うことも
子宮筋腫の症状は発生部位によりさまざまです。よくみられるのは月経時、経血の量が多い、月経が長引く、それらが影響して起こる貧血などがあります。
子宮筋腫は、できる場所で大きく分けると「粘膜下筋腫」「筋層内筋腫」「漿膜下筋腫」の3種類があります。
粘膜下筋腫(ねんまくかきんしゅ)
子宮内膜(子宮の内側の壁)の下に発生します。発生頻度は約10%と少ないものの、一番症状が出やすいタイプです。小さい筋腫であっても月経(生理)時の出血量が多くなったり、月経が長引いたりします。
筋層内筋腫(きんそうないきんしゅ)
子宮の筋肉の中に発生します。発生頻度は約70%と3つの中で最も多く、多発しやすいといわれています。筋腫が小さいうちは、症状はほとんどありません。大きくなると子宮内を圧迫したり、変形したりすることで月経時の腹痛や月経が長引くなどの影響があります。
漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)
子宮の表面を覆っている漿膜(しょうまく)の下に発生します。発生頻度は約20%です。
子宮内を圧迫しないため症状は出にくいものの、大きくなると周辺の臓器に影響があります。たとえば膀胱を圧迫すると尿が出にくくなる場合や逆に頻尿になることも。
直腸を圧迫すると便秘になりやすくなります。
子宮筋腫があっても妊娠できる?
子宮筋腫があることで、受精卵の着床が障害されることなどから不妊症の原因の一つとされています。
しかし子宮筋腫があるから妊娠しないということではありません。
子宮筋腫だけが不妊の原因ではないケースもあるでしょう。子宮筋腫があっても妊娠、出産する人も数多くいます。
ただ、流産を繰り返すケースなど、ほかに不妊の原因が考えられないような場合は、妊娠の前に子宮筋腫を取り除く手術をすることもあります。
子宮筋腫、妊娠したら、影響は?
子宮筋腫自体は良性の腫瘍ですが、妊娠、出産に対してさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
しかし、妊娠中に子宮筋腫が見つかった場合でも、症状が重い場合などを除いては、原則として手術は行わず経過を観察します。手術をすることで、出血量が多くなったり、流産率が上がったりする可能性があるためです。
とはいえ、妊娠の診断のときにはじめて子宮筋腫が見つかるケースも珍しくなく、そのまま大きなトラブルなく出産を迎えられることも多いのです。
子宮筋腫が妊娠中にママや赤ちゃんに及ぼす影響について、知っておくと早めに対応することができます。
以下に、妊娠、出産時に起こりうるリスクについてお伝えします。
流産・早産
大きな子宮筋腫があった場合に、流産や早産の可能性が高くなるというデータがあります。原因として、胎盤が作られるときに新たな血管も形成されますが、子宮筋腫がそれを障害してしまうことが考えられています。
逆子(骨盤位)などの胎位異常・前期破水
妊娠中、子宮筋腫のサイズの変化は個人によって異なります。大きくなる人の多くは
妊娠初期に増大するとされています。
子宮筋腫の変化によって子宮も変形することがあります。その形に合わせておなかの赤ちゃんがちょうどよい姿勢をとることがあり、逆子(骨盤位)などの胎位異常となる可能性があります。
また、子宮筋腫が多数存在することで子宮の形が変化し、前期破水の原因となることもあります。
常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)
子宮筋腫、特に粘膜下筋腫や大きな筋層内筋腫の上に受精卵が着床すると、常位胎盤早期剥離のリスクが上がるといった報告があります。胎盤がある部分の子宮内膜の血流が減少するためと考えられています。
出血量の増加
出産後の出血は、子宮の収縮により止まるようになっています。
しかし、大きな子宮筋腫があった場合には子宮の収縮を妨げてしまい出血が長引いてしまうことがあります。
子宮筋腫、妊娠中に痛みは?
子宮筋腫がある妊娠中のママは、ときに筋腫がある部分や下腹部に痛みが生じることがあります。
痛みの原因は、子宮筋腫から出血したり、組織が壊死(えし)するなど、これまでと違った状態に変化することが考えられています。
痛みの持続時間の多くは約1〜2週間とされていて、痛み止めが用いられます。
また、炎症を起こしているときは抗生剤を使用することもあります。
子宮筋腫、赤ちゃんへの影響は?
大きな子宮筋腫があった場合、おなかの赤ちゃんの成長不良のリスクが高くなる、といった報告もありますが、赤ちゃんは元気に育っているケースがほとんどです。
ママのおなかには十分なスペースがあることと、妊娠の経過とともに子宮筋腫が弾力を持つようになるため、おなかの赤ちゃんを圧迫して成長を妨げてしまうということはあまりありません。
子宮筋腫手術後の妊娠はいつからがよい?
一般的に、子宮筋腫手術後3〜6ヶ月などといわれたりしますが、明確な決まりはありません。
できれば妊娠をすぐにでも、と考えているママもいることでしょう。
そのような場合には、医師から月経(生理)が1回きたら、もしくは2回きたらなどと伝えられることもあります。
それぞれ個人の状況や、医師の方針にもよるため、主治医に相談してみるのがよいでしょう。
子宮筋腫手術後の妊娠の確率は?
これは一概にいえることではありません。
不妊状態となっている場合、原因が子宮筋腫によるものだけとは限りません。
排卵や、卵管、男性側の要因や染色体の異常など、さまざまな原因があります。
子宮筋腫があると帝王切開になるの?
子宮筋腫があるためだけに帝王切開になるというわけではなく、大きな問題がなければ原則として経腟(けいちつ)分娩が選択されます。
子宮筋腫で帝王切開になるのは、逆子(骨盤位)になった場合や、子宮の頸部(子宮の出口部分)に筋腫ができている場合などです。
子宮筋腫があるママは妊娠中どんなことに注意すればよい?
子宮筋腫は流産、早産、前期破水や常位胎盤早期剥離などの原因となることをお伝えしました。必要以上に心配することはありません。
ただし、出血やおなかの痛み、破水した感じなど何かママの体に異常を感じることがある場合には、早めに医師に相談することが大切です。
胎動を定期的に感じるようになった時期には、赤ちゃんが元気かどうか胎動を意識しておきましょう。
参考:
- 公益社団法人 日本産科婦人科学会・公益社団法人 日本産婦人科医会(編集・監修)『産婦人科診療ガイドライン2020』
- 佐藤孝道 石田友彦(著者)、『よくわかる最新医学 子宮筋腫』、主婦の友社、平成27年
- 武谷雄二・上妻志郎・藤井知行・大須賀穰(監修)、「第3版プリンシプル産科婦人科学②産科編」、メジカルビュー社、2014年
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写真提供:ゲッティイメージズ
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