【医師監修】会陰切開(えいんせっかい)後の生活|トイレやお風呂はどうする?
会陰切開とは?
分娩の際に赤ちゃんがスムーズに通過するには、会陰(えいん:外陰部と肛門の間)が十分に伸びることが必要です。
十分に伸びないままに分娩が進むと、会陰の組織が裂けてしまうことがあります。
重症例では直腸や肛門まで裂けてしまい、治るまでに数ヶ月かかったり、後遺症に悩まされたりすることもあります。
このような会陰の裂傷を防ぎ、分娩をスムーズにするために、およそ2~3cmにわたって会陰を切開するのが「会陰切開(えいんせっかい)」です。
分娩の際、すべての方に会陰切開するのではなく、会陰の伸びが不十分なときや赤ちゃんの頭が大きいとき、赤ちゃんを急いで産道から出してあげる必要があるとき、難産で器械(吸引・鉗子)分娩のときなど、必要に応じて行われます。
出産後、切開した傷や自然にできた裂傷を縫い合わせます。産後しばらくは、傷そのものの痛み、また、縫合した糸がひきつることで起きる痛みが続きます。我慢できないときには、痛み止めを処方してもらいましょう。
出産5日目頃の退院前の診察のときに抜糸します。最近では溶ける糸を使って縫合することが増えており、この場合は抜糸の必要はありません。
産後1ヶ月ぐらいには傷の痛みはほぼ治まり、傷あとも目立たなくなってきます。
会陰切開後の生活のポイントは?
赤ちゃんのお世話に加えて、ママの体も大変な産後。どのように生活したらよいのでしょうか。
トイレの悩み、どうしたらいい?
会陰切開のあと、排便のときに傷が痛む、傷が開いてしまいそうでトイレに行くのが怖い、排尿しにくい、というママは少なくありません。
排便や排尿のあとには、トイレットペーパーでしっかり拭くのではなく、軽く当てるように拭きます。
また、温水洗浄便座を使うのがおすすめです。ただし、強すぎる水流を当てると痛みを伴い、かえって傷の治りを遅らせてしまう恐れも。
普段よりも弱い水流でゆっくり時間をかけて汚れを落とし、汚れを水分でゆるめてから、残った汚れにトイレットペーパーを軽く当てて拭きましょう。
トイレットペーパーがちぎれてくっついてしまう場合には、ティッシュペーパーで押さえるようにして吹いてもかまいません。ただし、もちろんですが、トイレに流してしまわないようにしましょう。
最初に陰部の中央を拭き、前から後ろの方向に、肛門のほうへ向かって拭く、または押さえていくようにします。
排泄後の陰部の拭き方については、こちらの記事も参考にしてみてください。
また、便秘に悩むママも多くいます。入院中には排便がスムーズになるよう、水分を多くとる、食物繊維の多い食事をする、おなかをマッサージするなどのほか、下剤を服用して排便を促すこともあります。
入浴やシャワーはどうしたらいい?
産後しばらくは悪露(おろ:分娩後の子宮から排出される分泌物)が続きます。
湯船につかるのは悪露の出血が減って子宮口が閉じてきてから。それまではやさしい水流のシャワーで外陰部の血液をきれいに洗いおとし、清潔に保ちましょう。
1ヶ月検診を受けて、特に異常がなければお風呂も含め、普通の生活に戻っても大丈夫です。
ただし、しばらくは長風呂や熱いお湯は避け、体に負担の少ない入浴を心がけましょう。
会陰切開後に快適に過ごすコツは?
歩いたり座ったりすると、会陰切開の傷が刺激されてズキズキと痛むことがあります。そんなときは以下の方法を試してみましょう。
- 冷やす
氷パック・冷却パックを当てて冷やすと痛みが和らぐことがあります。
ただし、冷やし過ぎは傷の治りを遅らせたり、凍傷になったりする危険性もあるので注意が必要です。
まず入院中に看護助産師さんに相談して手当てをしてもらい、アドバイスを受けましょう。
- 円座・U字クッションを使う
赤ちゃんへの授乳のために座る姿勢を取ることが多い時期ですが、座ったときに椅子や床が会陰部分の傷に当たると痛みを感じます。
傷に当たらないよう、中央に穴が開いたドーナツ型やU字型のクッションを使うのもおすすめです。
- できるだけ体を休める
患部を早く治すためには、座ったままや、立ったままの圧迫や圧力は避けるようにしましょう。
会陰部が痛いときはベッドに横になる(横臥)ことで、会陰部の血流も改善して回復が早くなります。
上向きに寝ても構いません。会陰部に圧がかかることを避けることで良くなります。
また、横たわって養生することで、出産で下がり気味の子宮の位置を元に戻すことにも繋がります。
赤ちゃんをお世話するためにも、ママの体の回復が第一です。
家事など、家族やサービスに頼れる部分は頼って、できるだけ無理をせず体を休めましょう。
会陰切開後の傷、ケアの方法は?
産後は悪露で会陰部分が汚れがちになります。
悪露を吸収するための産褥パッドや生理用ナプキンは、かゆみや細菌感染の原因になることも。予防するためにも、こまめに交換して清潔を保ちましょう。
温水洗浄便座を使って、会陰部分の汚れを洗い流すのはよい方法です。
温水洗浄便座がない場合には、シャワーで洗い流す、清浄綿や消毒綿を使って傷あとを清潔に保つのもおすすめです。
清浄綿や消毒綿は、コットンにたっぷりときれいな水分をふくませてあり、傷口にふれても痛くなりにくく、悪露の拭き取りもスムーズにできます。
産褥パッドといっしょにトイレに置いておくとよいでしょう。
痛すぎでどうしても「拭く」ことができない場合には お風呂や洗面器に浅く水をはり、しゃがむ体勢で外陰部をすすぐ方法もあります。
産後一週間くらいはそっと座ったり、そっと拭いたりと、傷が破けるのではないかと心配しながら過ごす時間が多いかもしれません。
痛いから何もしないのではなく、いろいろな方法をためしてみましょう。少しずつ良くなっていくことが実感できることでしょう。
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会陰切開後の傷がズキズキと痛いのは、慣れない赤ちゃんのお世話に追われるママにとってつらいもの。退院してからもママには十分な休養が必要です。
トイレやシャワーのたびに傷を清潔に保ち、クッションや冷却パックなどを使って、赤ちゃんとの新しい生活を快適に送りましょう。
参考:
・医療情報科学研究所(編)、『病気がみえる vol.10 産科 第4版』、株式会社メディックメディア、2018年
・「出産に際して知っておきたいこと 会陰切開って必ずしなきゃいけないの?」(国立成育医療研究センター)、2021年1月閲覧
・「分娩時の会陰損傷による後遺症の比較に関する研究」(日本助産学会誌)、2021年1月閲覧
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