【医師監修】子宮体がんとは? 原因や症状について
婦人科に関係するいくつかの病気が考えられますが、「子宮体がん」も不正出血が代表的な症状です。今回は、子宮体がんの原因や症状、予防法などについてお伝えします。
婦人科に関係するいくつかの病気が考えられますが、「子宮体がん」も不正出血が代表的な症状です。今回は、子宮体がんの原因や症状、予防法などについてお伝えします。
子宮体(たい)がんとは
子宮がんには子宮頸部にできる「子宮頸(けい)がん」と、子宮体部にできる「子宮体がん」があります。
同じ子宮にできるがんですが、子宮頸がんと子宮体がんは発生する場所や、原因が異なります。
子宮体がんは子宮の内側にある、「子宮内膜」の部分にできるため、「子宮内膜がん」ともよばれます。
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子宮体がんにかかる女性は年々増加していて、年間約1万6千人(※1)が子宮体がんと診断されています。閉経後の女性に見られることが多く、発生する年齢は50〜60歳代でピークを迎えるのが特徴です(※2)。最近では閉経前の40歳代でかかる女性も増えています。
少子化や晩婚化、食生活が欧米化し高脂肪食、高たんぱく食が多くなったことなどが影響しているとされています。
出典:
※1:国立がん研究センター がん情報サービス (2021年2月12日閲覧)
※2:厚生労働省健康局がん・疾病対策課:平成29年 全国がん登録 罹患数・率 報告 (2021年2月12日閲覧)
詳しい子宮頸がんについては以下の記事も参考にしてください。
子宮体がんの原因は?
子宮体がんは原因によりⅠ型とⅡ型の2つに分けられます。
Ⅰ型は女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)が長期間、子宮の内膜を刺激することによるとされています。前がん病変という子宮体がんの前段階を経てがんが発生します。
Ⅰ型の子宮体がんは以下のようなことがリスクとして挙げられます。
・肥満、糖尿病や高血圧がある
・乳がんの治療などでエストロゲン製剤を長期間内服している
・妊娠や出産の経験がない、少ない
・月経不順
・初経が早い、閉経が遅いなど、月経を経験する年数が長い
・卵巣の機能に異常がある など
肥満はなぜ子宮体がんに影響する?
蓄積した脂肪組織からエストロゲンが産生されるため、肥満が子宮体がんに影響するとされています。
Ⅱ型はエストロゲンは関係せず、原因がはっきりとはわかっていません。
一部の子宮体がんの発生は、遺伝に関連するとされています。
子宮体がんの症状は?
初期の症状は不正出血
初期には痛みを伴わず、不正出血がおもな症状です。不正出血とは月経でないときに性器からの出血があることをいいます。
特に閉経したあとに、性器からの出血が見られた場合には注意が必要です。
不正出血とは
何らかの病気やホルモンの異常などにより月経のとき以外に性器から出血すること。
おりものに変化があることも
通常のおりものは色は白から半透明で、やや黄色の場合もあります。
子宮体がんにより出血があると、血液と混ざって茶褐色になることも。
さらに子宮内に感染が及ぶと膿性(うみのような状態)となることがあります。
子宮体がんが進行すると痛みが生じる
子宮体部を越えて骨盤(こつばん)組織内にまで及ぶと、腹痛や腰痛、排尿しにくくなったり、足のむくみが出てきたりします。
子宮体がん予防のためにできること
生活習慣の改善
Ⅰ型の子宮体がんでは、食生活や生活習慣を整えることが予防につながるとされています。月経不順がリスクとなるので、規則正しい月経を保つことも必要です。
・喫煙している場合には禁煙をすること
・節度のある飲酒
・高脂肪や高カロリーな食事に注意し、バランスの良い食事を取ること
・適度に運動すること
・適正な体重を保つ(BMIが25を超えないようにする)
BMI:体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))
(18.5未満:やせ、18.5〜25未満:普通、25以上:肥満)
子宮がん検診を受ければよい?
会社の健康診断や自治体で広く行われている「子宮がん検診」といえば、そのほとんどが「子宮頸がん検診」のことです。通常は「子宮体がん検診」は含まれていません。
子宮頸がんと子宮体がんでは性質が違います。子宮頸がんのように無症状の女性に対して広く検診を行うことが有効というわけではないからです。
ただし、子宮頸がん検診のときに、不正出血や、超音波検査などの異常が認められたときには医師の判断のもと、同時に子宮体がん検査を行うこともあります。
持病や気になる症状、これまでの月経の様子、家族の病歴なども問診票に正しく記入しておくことが大切です。
検診にかかわらず、閉経後の不正出血やおりものの異常を感じることなどがあれば、早めに婦人科や産婦人科を受診し医師に相談するようにしましょう。
※参考:
・岡井 崇、綾部 琢哉(編集)、『標準産科婦人科学 第4版』医学書院、2011年
・市川喜仁(著)、『Q&Aでよくわかる「子宮体がん」』講談社、2018年
写真提供:ゲッティイメージズ
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