【医師監修】産後の腟に違和感? 子宮脱とは?
いくつかの要因がありますが、妊娠・出産は最も大きな要因とされています。
今回は、子宮脱の原因や症状、治療などについてお伝えします。
いくつかの要因がありますが、妊娠・出産は最も大きな要因とされています。
今回は、子宮脱の原因や症状、治療などについてお伝えします。
子宮脱(しきゅうだつ)とは?
子宮が下がって腟(ちつ)から出てくる状態
「子宮脱(しきゅうだつ)」とは子宮を支えている靭帯(じんたい)や筋肉の集まりである(骨盤底筋/こつばんていきん)が傷ついたりゆるんだりして、子宮が腟を通じて体の外に出てきてしまうことをいいます。
子宮以外にも膀胱や直腸がハンモック状に骨盤底筋に支えられているため、直腸や膀胱が腟から出てくる場合もあります。
直腸が腟を通じて体の外に出ることを(直腸瘤/ちょくちょうりゅう)、膀胱が体の外に出ることを(膀胱瘤/ぼうこうりゅう)といいます。
子宮脱の症状は?
子宮脱の症状には以下のようなものがあります。
・下腹部の違和感や痛み
・性交のときの痛み
・腟から何か出ている(ピンポン玉のようなもの)
・腟から出ているものが下着に触れて出血する
・長時間立っていたり、重いものを持ったりしたあとなどに腟のあたりに違和感が生じる
など
膀胱や直腸が腟から出てきている場合は
骨盤底筋のゆるみでも尿もれしやすくなりますが、膀胱や直腸が腟から出てきている場合には、尿や便のトラブルが起こることがあります。
・尿がしづらい
・尿もれ
・トイレが近い
・便秘 など
はみ出た子宮は自分で戻してもいいの?
指で優しく押し戻して大丈夫です。
腟からはみ出ている部分に触れるのは抵抗があるかもしれませんが、そのままにすると腟の入り口がさらに広がったり、血流が滞ったりしてしまいます。
はみ出ている部分にそっと指を添えて押し戻します。
伸びた爪や装飾したネイル等で子宮・腟を傷つけないよう注意して下さい。
押し込んでもすぐに出てきてしまったり、戻らなかったりする場合には早めに受診しましょう。
子宮脱の原因
子宮脱は、骨盤底筋のダメージや日常的に腹圧がかかることで生じることが多いとされています。たとえば以下のようなことが原因となります。
・妊娠
・経腟分娩
・持病などで咳が長く続いている
・便秘が長く続いている
・肥満
・仕事などで日頃から重いものを持つことが多い など
産後は子宮脱になりやすい?
大きめの赤ちゃんを出産した場合や難産のあとなどでは、出産後まもなく子宮脱になることがあります。
ただし出産直後に発症することは多くはありません。
妊娠中はおなかの赤ちゃんの重みで骨盤底筋に負担がかかります。
さらに経腟分娩で赤ちゃんが産道を通るときに、骨盤底筋や神経が傷つくため、子宮脱の原因となります。出産後は少しずつ回復しますが、完全には戻りにくいとされています。
産後なるべく横になって体を休めたほうがよいのも、この時期に無理をすると骨盤底筋の回復を妨げてしまうためです。
出産のときに傷ついた骨盤底筋が、加齢や閉経後のホルモンの変化などで弱くなり、更年期以降である50〜60歳頃に発症することがほとんどです。
子宮脱になっても妊娠できる?
子宮脱になっても妊娠が可能です。
ただし子宮脱が進行すると性交に痛みを感じることがあり、性交自体に抵抗を感じてしまうかもしれません。症状があるときはそのままにせず医師に相談しましょう。
子宮脱は治るの?
子宮脱は治療が可能な病気です。それぞれの症状や、今後のライフスタイルなどに合わせて「手術をする方法」と「手術をしない方法(保存療法)」を医師に相談のもと決定します。
骨盤底筋体操
日常生活に問題のない軽い子宮脱の場合には、「骨盤底筋体操」を行うことが有効とされています。
骨盤底筋を意識するのは難しいかもしれませんが、腟、尿道、肛門を引き締めるイメージで行います。
特別な道具は必要ありません。歯磨きや洗顔のように日常生活に取り入れるとよいでしょう。2、3ヶ月続けることで効果が期待できます。
ただし方法を間違うと腹圧がかかってしまい、逆効果になることも。
子宮脱が進行しているケースでも悪化させてしまう可能性があるので、医師に診断を受けてから行うようにしましょう。
骨盤底筋体操の方法は以下の動画を参考にしてください。
腟内装具(ペッサリー療法)
日常生活に支障がある子宮脱の場合にはペッサリー療法というものがあります。
ペッサリーはリング状の器具で、腟の中に入れて子宮が下がってくるのを支える役割をします。
自分の病状や腟のサイズにあったリングを医療機関で選びます。
医療機関で腟の中に入れて、数ヶ月おきに交換する方法、もしくは朝自分で腟の中に入れて、夜に外す方法があります。
手術療法
ぺッサリー療法で効果が得られない、子宮脱が進行している場合などは手術療法が選ばれます。手術にはメッシュ状のものを腟に入れて骨盤底筋を支える方法や、腟の壁を縫うなどの方法があります。それぞれに適した方法が行われます。
子宮脱を予防するには?
骨盤底筋に負担をかけないような生活を心がけましょう。
太りすぎないようにする
肥満も腹圧がかかる原因となります。
BMI 25以上でリスクが上がるとされているため、適正体重を保てるとよいでしょう。
BMI(Body Mass Index)の計算方法
※BMI:体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算。
BMIは、自分の体格を知るための指標となります。
(例)身長160㎝、体重50kgの人のBMIは、50(kg)÷1.6 (m)÷1.6 (m)
=19.5
便秘を予防する
便をするときのいきみで強い腹圧がかかります。
食物繊維や水分をとるように心がけるなど、食生活を意識してみましょう。
便秘が続くときには薬を処方してもらう方法もあります
重いものを持つ、長時間立つのをなるべく避ける
重いものを持ち上げる、長く歩く、立ち仕事などでも重力や腹圧で骨盤底筋に負担がかかります。
買い物ではカートを利用したり、仕事や家事の合間にできるだけ休息を取るなど、なるべく負担の少ない方法を選べるとよいでしょう。
締め付けの強い下着を避ける
締め付けすぎる衣類はおなかへ横からの圧力がかかってしまい、症状を悪化させる可能性があります。きついガードルなどは控えるようにしましょう。
症状があるときは婦人科・産婦人科を受診しよう
もし上記のような症状があるときには、我慢せずに婦人科・産婦人科の医師に相談してみましょう。子宮脱以外の病気の可能性や、子宮脱の進行の具合を確認します。
子宮がん検診のときに相談してみることもできます。ただし日常生活に影響が大きいときには早めに受診しましょう。
場合によっては泌尿器科や女性泌尿器科を紹介されることもあります。
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子宮脱は他人に相談しにくく、受診をためらってしまう人も少なくありません。
直接生命に関わる病気ではないため、必要以上にあわてなくてもよいのですが、
思うように外出できなくなるなど生活への影響は大きいものです。
気になる症状があるときは思い切って受診するようにしましょう。
いくつかの治療法があるので、医師とよく相談しライフスタイルにあった方法を選べるとよいですね。
参考:
・水沼秀樹(著)、『基礎から学ぶ女性医学』、診断と治療社、2020年
・竹山政美、藤井美穂、ひまわり会(著)
『改訂第2版 女性泌尿器科に行こう!−骨盤臓器脱・尿もれ・間質性膀胱炎の治療と手術を受ける人へ』、メディカ出版、2017年
(2020年4月7日閲覧)
(2020年4月7日閲覧)
(2020年4月7日閲覧)
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