【管理栄養士監修】粉ミルクを飲むと下痢やおう吐する場合はミルクアレルギー ?
赤ちゃんが粉ミルクを飲むと下痢やおう吐する場合はミルクアレルギーの可能性がある?
下痢やおう吐の症状が続く場合はアレルギーの可能性があります
粉ミルクを飲んだあとに赤ちゃんの元気がなく、おう吐や血便(黒い便)、下痢などが続く場合、ミルクアレルギーの可能性があります。
ただしこれらの症状が見られず体重が増えないだけという場合もあります。
乳幼児期までの赤ちゃんは、消化器官が未発達なことから「吐き戻し」がよく見られることも多く、赤ちゃんが「ミルクアレルギー」とママ・パパが自己判断することは非常に難しいため激しく吐いたり、よく飲むのに体重が減少したりなど、いつもと違う症状がある場合はミルクアレルギーの可能性もありますが、別の病気の可能性もあるため小児科を受診しましょう。
ミルクアレルギー とは
ミルクアレルギーは食物アレルギーのひとつで、「新生児・乳児消化管アレルギー」と言います。
新生児期の赤ちゃんはアレルギーを起こしやすい食品に対する防御体制が十分ではないため、ミルクアレルギーを発症しやすいと言われています。
新生児・乳児消化管アレルギーでは次のような症状が見られます。
- 元気がない
- 腹部が膨らむ
- 何度もおう吐する
- 黄色、緑色や濃い色のおう吐(胆汁性嘔吐)
- 哺乳力の低下
- 下痢
- 血便
- 体重が増えない
- 湿疹 など
約半数のアレルギー症状の症例で、アトピー性皮膚炎や気管支喘息が起こります。
適切なミルクアレルギーの治療を行えば心配はありません。
これって「吐き戻し」?いつもと様子が違う場合は要注意
新生児・乳児期の赤ちゃんがミルクを飲んだあとに吐いたり、咳込んだあとに吐いたりする「吐き戻し」を起こすことは、決して珍しいことではありません。
消化器官が未発達なことで起こる生理的なもので、年齢とともに減っていきます。
ミルクを飲んで吐いたときはしばらく赤ちゃんの様子を観察しましょう。
おう吐は生理的なもの以外が原因で起こることがあるため、おう吐以外の症状も気にしておきましょう。
赤ちゃんがいつもとは違う様子だったり、おう吐以外のなんらかの症状があらわれた場合は医療機関を受診してください。
ミルクを飲んだ時間や症状が現れた時間、その他の症状についてメモにしておくと、受診のときに役立ちます。
もし赤ちゃんがミルクアレルギーだったら?
医療機関で相談の上でアレルギー対応ミルクに切り替えを
医療機関でミルクアレルギーと診断されたら、「アレルギー対応ミルク」(消費者庁許可特別用途食品)の使用をすすめられる場合があります。
母乳に切り替えられる場合は母乳を与える指示を受けることもあります。
アレルギー症状には個人差があるので、アレルギー対応ミルクを使用の際には必ず医師と相談の上で使用するようにしましょう。
ミルクアレルギーは主に牛乳のたんぱく質によって起こるものですが、粉ミルクは牛乳由来のものがほとんどのため、アレルギー症状の原因となる粉ミルクの摂取を中止します。
代替で使用するアレルギー対応ミルクにはいくつか種類があるため、自己判断で選ぶのは危険です。
例えば、「乳糖なしミルク」は牛乳のたんぱく質は除去されず残っているため、牛乳たんぱく質が原因のミルクアレルギー向けではありません。
他にもたんぱく質の種類や分解度など成分に違いがあります。受診の際に飲んでいる粉ミルクの成分を医師に見てもらうといいでしょう。
ミルクアレルギーの原因は牛乳を原料とするミルクがほとんど
ミルクアレルギーの原因となる粉ミルクは、牛乳由来の成分のものがほとんどです。
牛乳由来のミルクだけでなく、母乳や大豆や米、小麦などが原因でアレルギー症状を起こすことがあります。
いつ起こる?
生まれてすぐの新生児期から乳児期にかけて起こります。
ミルクを摂取したあと比較的ゆっくり、24時間以内にアレルギー症状が現れることが多くみられます。
また、アレルギー症状の重症度については個人差があります。
即時型アレルギーとの違い
「新生児・乳児消化管アレルギー」は、一般的な即時型の食物アレルギーと区別するために「新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎」と言われることもあります。この2つは同じ症状を指しています。
「即時型アレルギー(即時型反応)」は、原因物資である食物を摂取したあとすぐに症状が出るアレルギーでIgE抗体という免疫反応が関係しています。
「新生児・乳児消化管アレルギー」であるミルクアレルギーは発症まで数時間かかることから、原因となる食物を見つけにくい特徴があり、「非即時型アレルギー(遅発型反応)」に分類されます。
対処法
アレルギーの対処法は、原因となるものを見極め、除去可能であればできる限りその原因を除去することが必要です。
牛乳由来の粉ミルクが原因であれば、アレルギー対応ミルクに切り替えます。
母乳への切り替えや、離乳食がスタートしている状況であれば特定の食品を取り除くように指示を受けることもあります。
いずれにしても、自分で判断せず必ず医師の指示に従って進めていきましょう。
牛乳を原料とする粉ミルクがダメな場合、母乳なら大丈夫?
完全母乳(完母)栄養の赤ちゃんでもミルクアレルギーを発症することがあります
母乳に切り替えることで症状が改善するケースもある一方で、粉ミルクと同様におう吐や血便、お腹が張るといった症状が見られることもあります。
母乳でアレルギー症状が出る場合
母乳に含まれるたんぱく質が原因のケースもありますが、母乳そのものの成分ではなく、ママが食べた食品の成分が母乳に含まれて、それを赤ちゃんが経口摂取することでアレルギー症状を起こしている可能性もあります。
その場合は、原因となっている食品の特定は難しいため、医療機関での診断が必要になります。
アレルギーの疑いの症状がある場合は、自己判断で対応すると状態が悪化する可能性があるため、必ず医師の診断のもと対処するようにしましょう。
多くは耐性がついてミルクアレルギーは改善します
新生児・乳児期の赤ちゃんがミルクアレルギーと診断されても、成長とともに耐性がつくとされています。
1歳までに約70%、2歳までには90%前後に耐性がつくとされており、小学校に入学する頃には症状が落ち着いていることがほとんどです。
毎日の生活の中で、赤ちゃんの様子を見ていつもと違う症状に気が付いたら、すぐに医療機関に相談することが大切です。
ミルクアレルギーに関わらずアレルギー症状には個人差があり原因の特定も難しいため、自己判断で進めず必ず主治医の指示を仰ぎましょう。
参考:
公益財団法人母子衛生研究会、「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)実践の手引き」、2019年
株式会社医学書院、「標準小児科学 第8版」、2013年
厚生労働省 「食物アレルギー」
国立成育医療研究センター、「新生児-乳児消化管アレルギー(新生児-乳児食物蛋白誘発胃 腸炎)診断治療指針 」、(2021年4月閲覧)
出典:
難病情報センターホームページ「新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎 」(2021年4月現在)から引用
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