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【医師監修】離乳食と食物アレルギー|特に注意したい卵や牛乳などの与え方やポイント

【医師監修】離乳食と食物アレルギー|特に注意したい卵や牛乳などの与え方やポイント

離乳食を始める際、「もし赤ちゃんに食物アレルギーがあったら……?」「初めての食材を与えるときに注意することは?」など戸惑うママ・パパもいるのではないでしょうか。今回は、安心して離乳食を進めるために知っておきたい離乳食期の食物アレルギーについて解説します。
離乳食を始める際、「もし赤ちゃんに食物アレルギーがあったら……?」「初めての食材を与えるときに注意することは?」など戸惑うママ・パパもいるのではないでしょうか。今回は、安心して離乳食を進めるために知っておきたい離乳食期の食物アレルギーについて解説します。

食物アレルギーとは?

赤ちゃんに限らず人間の体には、ウイルスや細菌など外部からの異物を排除しようとする免疫機能が備わっています。アレルギーとはこの反応が強く出過ぎてしまうことをいい、食べ物に含まれる特定の成分に対して免疫が反応し、症状が起きてしまうのが食物アレルギーです。

食べ物に対する免疫の過剰な反応が、食物アレルギー

通常ならば、体の栄養源となる食べ物が消化・吸収されても反応は起こらず問題は起きないはずです。

しかし免疫機能や消化吸収機能に何らかの問題があると、食べ物に含まれる特定の成分を異物と判断して排除しようとしてしまいます。このアレルギーの原因となる物質を「アレルゲン」と呼びます。

アレルゲンとなるのは通常は、たんぱく質です。

たんぱく質は胃液で分解され、膵臓から分泌される消化酵素によって消化されますが、十分に消化されないまま小腸まで達してアレルゲンが体内に取り込まれてしまうと、異物として捉えられアレルギー反応を起こしてしまうのです。

赤ちゃんに食物アレルギーが起こりやすいのは、消化能力がまだ未発達な上に免疫機能も未熟だからです

そのため、体に良い・悪いの区別なく体が食べ物を拒否してしまうのだと考えられています。

食物アレルギーの発症に影響を与える要因には、遺伝的素因、皮膚バリアの機能低下、出生季節、特定の食物を食べ始める時期の遅れなどが指摘されています。

食物アレルギー発症のメカニズムは?

本来なら体に害を与えない食物なのに、なぜアレルギー反応が出てしまうのでしょうか。

それは、体のIgE抗体という物質が関係しています。

体の中にアレルゲンが入ると、これを排除しようとして免疫細胞が抗体を血液中に作ります。

この抗体は、皮膚や粘膜(目・鼻・腸・気管支など)に存在する細胞(マスト細胞)とくっついて、外部からのアレルゲン侵入に備えます。

アレルゲンが体の中に入ると、IgE抗体が捕えてマスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの物質を放出します。

食べ物は本来、体に必要なものであるため、通常はIgE抗体は作らないように調節されています。

しかしこの仕組みが弱かったり未熟だったりすると、抗体が作られてしまい、食物アレルギーが発症すると考えられています。

複数の臓器に症状が見られる重い状態をアナフィラキシーと呼び、さらに重症となるアナフィラキシーショックでは、血圧低下や意識障害が見られるので、緊急対応が必要です

食物アレルギーのタイプと症状

食物アレルギーは皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、神経、循環器などのさまざまな臓器に起こり、症状はじんましん、皮膚の発赤・かゆみ、おう吐、腹痛、下痢、呼吸困難など多岐に渡ります。

アレルギー反応には大きく4つのパターンがあり、食物アレルギーの多くはⅠ型である「即時型」に分類されます。食べてからすぐに症状が現れるのが「即時型」アレルギーで、「食物アレルギー」の最も典型的なタイプです。ここでは即時型食物アレルギーについて詳しく解説します。

即時型食物アレルギー

即時型食物アレルギーは、原因となる食べ物を食べてから2時間以内という短い時間に症状が現れます。特に、じんましんやかゆみなどの皮膚の症状は15分〜30分以内と食べてすぐに症状が現れることが多く、食事を食べ終わるころに皮膚の症状に気づく方もいるでしょう。

赤ちゃんや子どもだけでなく大人も発症することがあり、幅広い年齢に関係します。しかし年齢が上がるにつれアレルギーは生じにくくなるため、患者数は0歳児が最も多く、年齢が上がるほど患者数は少なくなります※1。

即時型食物アレルギーの主な症状

即時型食物アレルギーの症状の約9割はかゆみ、じんましん、むくみ、湿疹、赤みなどの皮膚症状です※2。皮膚症状は全身のさまざまな部位に現れます。

皮膚症状以外の症状として、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、息苦しさなどの呼吸器症状、目の充血や腫れ、かゆみ、口の中や唇、喉の違和感などの粘膜症状があります。

ほかにも、下痢、嘔吐などの消化器症状、頭痛や元気がなくなるなどの神経症状など、症状はさまざまです。

離乳食をはじめたら、口の周りが赤くなった。これって食物アレルギー?

食物アレルギーの皮膚症状のひとつに「皮膚の赤み」があります。

離乳食を食べているときに口の周りに赤みが出ると、アレルギー反応かと心配になる方も少なくないかもしれません。

口の周りの赤みはアレルギー反応の場合もありますが「接触性皮膚炎」という、いわゆる「かぶれ」の可能性も考えられます。全身に症状が出ていなければ、口の周りを清潔にしたり保湿をし、症状に改善が見られない場合や赤みが強い場合やただれたようになっている場合は医療機関を受診しましょう。

食物アレルギーを引き起こしやすい食品

0歳児の食物アレルギーの原因となる食べ物は、卵(鶏卵)、牛乳、小麦がほとんどです※3。ほかに食物アレルギーを引き起こしやすい(または重篤度が高い)食品として、えび、かに、そば、落花生(ピーナッツ)があり、卵、乳、小麦と合わせて、この7品目は加工食品に表示が義務付けられています。

ほかにも、アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンの21品目もアレルギーを引き起こしやすい(または重篤度が高い)食品なのですが、7品目に比べると発症数や重篤度が低いことから、表示が「推奨」となっています。

食物アレルギーを引き起こしやすい食品の離乳食の進め方は?

食物アレルギーを引き起こしやすい食品は、ほかの食品より慎重に進めていきましょう。どんな食材が食物アレルギーを引き起こしやすいのか、どのように離乳食に取り入れていくと安心して与えられるのか、その進め方の例をご紹介します。

卵(鶏卵)

離乳期である0〜1歳児で最も多いのが卵(鶏卵)による食物アレルギーです※4。

初めて与えるときは特に注意して与えましょう。一般的には、卵白が原因となりアレルギー症状が誘発されます。そのため初めは卵黄から始め、慣れてきたら全卵へと進めていきます。卵黄は生後5〜6ヶ月頃から、全卵は生後7〜8ヶ月頃から進めていきましょう。

卵黄を初めて与える際は、固ゆでした卵黄を裏ごしし、なめらかなペースト状にしたものを与えます。長時間加熱することで、食物アレルギー症状を引き起こしにくくなるため、必ず「固ゆで」にしてください。

卵の進め方について、詳しくはこちらの記事も参考にしてください。

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牛乳

牛乳は卵に次ぎ、食物アレルギーを起こす可能性の高い食べ物です。牛乳のアレルゲンは卵とは違い、加熱してもアレルギーを起こす力が弱まりにくいのが特徴です。

牛乳は加熱したものを離乳食中期の7〜8ヶ月頃から取り入れられます。加熱したものを飲料として与えるのではなく、パンがゆやマッシュポテト、クリーム煮、シチューなどの調理用に使用しましょう。

牛乳の進め方について、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

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小麦粉

小麦粉も、卵、牛乳に次ぎアレルギーを起こすことが多い食べ物です。

小麦粉が使われたパンやうどんなどは離乳食初期から取り入れられる食材ではありますが、おかゆや野菜に慣れた頃に始めるようにしましょう

初めて与える際は、パンがゆまたは茹でたうどんをすりつぶしたものなどから始めましょう。パンやうどんなどが食べられるようになると、主食のバリエーションも増え、さまざまなメニューを楽しめるようになります。時期がきたら、慎重に進めてみましょう。

小麦粉の進め方について、詳しくはこちらの記事で解説しています。

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えび

えびはアレルギー表示が義務付けられている食品でもあり、アレルギーを起こしやすい食品です。えびは1歳以降の離乳食完了期(1歳〜1歳6ヶ月頃)から与えることができます。重篤な症状を起こす可能性もありますので、初めて与える際は必ず少量から始めてください

茹でたえびを刻むなどし、食べやすいようにしたものを与えるか、少量を料理に使うなど、与えやすい方法で始めてみましょう。

えびや桜えびの進め方について、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

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そば

そばは食物アレルギーを引き起こしやすく、症状が重篤になりやすいことが知られているため、離乳食の間は与えず幼児食の時期となる1歳半〜2歳頃に試してみるようにするといいでしょう

​​そばをいつ頃から与えるか、どのように進めるかなどは、こちらの記事を参考にしてください。

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そのほか

これらのほかにも、どの食べ物においてもアレルギーは誘発される可能性があります。たとえば、先ほどお伝えしたアレルギー表示の推奨表示となってる食品には、アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンがあります。

ほかにも、あまり聞きなれないかもしれませんが、米や野菜もアレルギー症状を起こす可能性があります。

離乳食を進めるときの注意点

離乳食を進めていく際は、アレルギーについて正しく理解しておくことが大切です。自己判断で制限したり進めるタイミングを遅らせたりしてしまうと、思わぬデメリットも考えられます。どのような点に注意すべきかについて、詳しく解説します。

与える時期や食べ物制限を自己判断しない

食物アレルギーは、アレルギー専門医による適切な診断が必要です。医師による適切な診断に基づいて、必要最小限の食べ物の除去を行います。

親がアレルギーを持つ場合、「もしかすると子どもも食物アレルギーがあるかもしれない……」と考えて牛乳や鶏卵を与えるのを避けることもあるでしょう。

しかし赤ちゃんにとって牛乳や鶏卵に含まれるたんぱく質は、脳や体をつくるのに必要な栄養素。自己判断で食事制限を行うことは、成長や発達を妨げることに繋がります。不安のあまり、自己判断で不必要に除去したり与えるのを止めたりしないようにしましょう

離乳食の開始を遅らせてはいけない

食物アレルギーの発症を心配するあまりに、離乳食の開始や特定の食物を与えることを遅らせても予防効果はありません

通常どおり生後5~6ヶ月頃を目安に、おかゆなどから始めましょう。

たとえば鶏卵を与える目安としては、卵黄を離乳初期の生後5~6ヶ月とされています。

これは離乳期に鶏卵を除去するのではなく、反対に少しずつ与えて慣れさせることで、食物アレルギーを予防できると考えられるようになってきたからです。

もし離乳食開始後に食物アレルギーを発症した場合は、基本的には原因食物以外であれば与える時期を遅らせる必要はないと考えられています。

「この食べ物は与えないでおこう」などと自己判断せず、食物アレルギーが心配な場合は必ず医療機関を受診して医師の指示に従いましょう

新しい食品は、離乳食用スプーン1さじずつ。少量からスタート

新しい食品を与えるときは、新鮮な食材をよく加熱してから試すようにしましょう。

1日1種類として、離乳食用のスプーンで1さじ分を与え、2、3日様子をみて、問題ないようであれば2さじに増やします。別の新しい食品はその数日後に試すようにしましょう。何も異常がなければ、1日ごとに1さじずつ増やしていきます。

そうすることによって、赤ちゃんの食品に対する慣れやアレルギー反応の有無が確認できるからです。

食事時間は、平日の午前中がおすすめです。

親子が落ち着いて食事に専念でき、何か異常が起きた場合にすぐに医療機関を受診できるからです。

もし赤ちゃんがたくさん食べたがっても、一度に多く与えないようにしましょう。

アレルギー反応は食べた量に比例して強く出ることが知られています。必ず「少量から与えること」を忘れないようにして始めると安心して進められるでしょう。

もし離乳食を与えたあとに、じんましんやかゆみなどのアレルギーが疑われる症状が出た際は、早めに病院を受診しましょう。

食物アレルギーと間違えやすいヒスタミン食中毒にも注意

魚類やその加工品を食べることによって発症する食中毒です。食物アレルギーとは異なります。

原因となる主な食品は「ヒスチジン」というアミノ酸を多く含むブリ、サバ、サンマ、イワシなどの魚やその加工品です。

古くなったものや常温で放置したなどの理由で、ヒスチジンがヒスタミンとなり、アレルギーのような症状が起こります。

食物アレルギー症状がでたら病院へ

じんましんやかゆみ、目の充血や腫れなどの症状のほかにも、咳や息苦しい様子がみられる場合もアレルギー症状の可能性があります。食物アレルギーの症状がでた場合、早めに病院を受診しましょう。アレルギー症状かどうなのか、また受診すべきか迷った際は、かかりつけの小児科に相談してみてもいいでしょう。

血圧低下や意識障害を伴うアナフィラキシーショック状態の場合は早急な対応が必要になるため、迷わず救急車を呼んでください

食物アレルギーが疑われる場合は検査が行われることも

食物アレルギーが疑われる場合、医師の問診とあわせて必要に応じて検査が行われます。検査には以下のようなものがあります。

・抗原特異的IgE抗体検査

個別の食べ物の血液中のIgE抗体を調べる検査。陽性でも症状が出ないこともあるため、この検査だけでは食物アレルギーの確定診断はできない。

・皮膚テスト(皮膚プリックテスト)

皮膚にアレルギー物質が含まれるエキスを垂らし、針で皮膚を少し傷つけ、反応があるか調べる検査。

・食物経口負荷試験

医師の指導の元、アレルギーが疑われる食べ物を食べ、アレルギー反応の有無を確認するテスト。

このほかにもいくつか検査があり、いずれも医師の判断により行われます。心配な場合は医師によく相談して、検査の内容をよく理解し、不安を軽減できるとよいでしょう。

食物アレルギーに注意して離乳食を安全に進めましょう

食物アレルギーを心配しすぎるあまり、離乳食の進みがゆっくりになりすぎるのもよくありません。「初めての食べ物は離乳食用スプーンで1さじから」「初めての食べ物は平日の午前中に」など対策をしっかりと行ったうえで、安全に進めていってくださいね。

  • 特にアレルギーを起こしやすい食べ物には、鶏卵、牛乳、小麦がある
  • 多くは30分~2時間以内に症状が出る
  • 症状の多くは、かゆみやじんましん、むくみ、湿疹、赤みなどの皮膚症状
  • 初めて食べるものは1さじから、平日の午前中に与えるようにする

※1 海老澤 元宏(研究代表者):即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査(平成30年度食物アレルギーに関する食品表示に関する調査研究事業報告書)

※2 「アレルギーポータル」一般社団法人日本アレルギー学会

※3,4 「食物アレルギー診療ガイドライン2016《2018年改訂版》」日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会

写真提供:ゲッティイメージズ

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