進む日本の少子化、原因は?
少子化の現状
日本では出生率が低下し続けており、「少子化」が加速しています。第2次ベビーブーム期の1973年をさかいに、年々出生数が減少傾向にあり、2019年には、過去最低の出生数を記録しました。
2019年の出生数は約86万人で、2018年よりも約5万人減少しています。出生数が100万人を割る現象は2016年から毎年続いており、歯止めがかからない状況です。
2021年現在、コロナ禍による生活の変化により、さらなる少子化問題の深刻化が予想されています。2020年の妊娠届数は前年よりも減少していることから、2021年の出生数も減少する見通しです。
少子化について、詳しくはこちらをご覧ください。
少子化の原因は「結婚が減ったこと」、「仕事と子育ての難しさ」、「経済的負担」などいくつかの原因があります。詳しくみてみましょう。
結婚が減り、さらに子どもを持たない夫婦が増えている
近年、結婚に対する意識の変化がおきています。
結婚しない男女が増加「未婚の進展」
近年、結婚をしない未婚の男女が増えている傾向があります。
第1次ベビーブーム世代といわれていた子どもたちが、25歳前後の年齢に達した1970年~1974年頃、婚姻件数は年間で100万組を超えていました。その後、徐々に婚姻件数・婚姻率が低下しており、1947年には12.0%だった婚姻率が、2018年には4.7%に下降しています(※1)。
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出典:「平成30年版 少子化社会対策白書(全体版<HTML形式>)第1部 少子化対策の現状(第1章3)第1-1-8図 婚姻件数及び婚姻率の年次推移」(厚生労働省)を元に作成
また、50歳時点で結婚を一度もしたことがない人の割合を示す「50歳時未婚率(旧:生涯未婚率)」は、1970年には男性1.7%・女性3.3%であったのが、2020年には、男性26.6%・女性17.8%と増加しており、男女ともに独身の人が増えていることがわかります(※2)。
初婚の年齢が上昇「晩婚の進展」
初婚年齢においては、年々上昇傾向です。平均初婚年齢は、第2次ベビーブーム直後の1975年では、夫27.0歳・妻24.7歳だったのが、2019年では夫31.2歳・妻29.6歳と晩婚化が進んでいることがわかります。
出典:「平成30年版 少子化社会対策白書(全体版<HTML形式>)第1部 少子化対策の現状(第1章3)第1-1-11図 平均初婚年齢と出生順位別母の平均年齢の年次推移」(厚生労働省)を元に作成
平均初婚年齢が上がり、第1子の出産年齢が引き上げられることでおこるのが、「晩産化」です。第1子を出産したときの母親の平均年齢は、第2次ベビーブーム直後の1975年では25.7歳でしたが、2019年では30.7歳と5歳上昇しています。
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出典:「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況 ③【公表後配布用】本体のみ」(厚生労働省)p.5 表3 第1子出生時の母の平均年齢の年次推移を元に作成
晩産化により、女性が一生の間に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」も低下しています。第2次ベビーブーム期の1973年には、合計特殊出生率は2.14でしたが、2019年には1.36と減少傾向です(※3)。
1人の女性が産める子どもの数が低下していることが、少子化の一因となっているといえるでしょう。
理想の子どもの数を持たない「夫婦の出生力の低下」
夫婦の間に生まれた子どもの数(出生児数)も近年、減少傾向にあります。
夫婦の出生力の低下は、夫婦の理想的な子どもの数と実際に持つつもりの子どもの数(予定子ども数)に表れています。
理想の子どもの数の平均は、1977年では2.42人でしたが、2015年には2.32人と減少しています。平均予定子ども数においては、1977年は2.08人でしたが、2015年では2.01人で、2015年の数値は過去最低です(次回調査は2021年予定)(※4)。
男女が結婚し、結婚からの継続期間が15年~19年たった夫婦の平均的な子どもの数のことを「完結出生時数」といいます。完結出生時数は、夫婦の間に最終的に生まれたとみなされる子どもの数の平均(夫婦の最終的な平均出生子ども数)で、2005年の調査では2.09人でしたが、最近の調査によると2015年では1.94人と2人を割りました(※5)。
晩婚化や晩産化のほか、家庭や地域社会の子育て力の低下が、出生力の低下に影響を与えているのではないかともいわれています。
結婚・子育てに対する価値観の変化と仕事の両立の難しさ
結婚や子育てに対する価値観の変化や、家庭と仕事の両立の難しさを感じている人も少なくないでしょう。
仕事と子育てを両立できる環境整備の遅れや高学歴化
1980年代頃から、女性の社会進出がはじまり、若い世代の労働力が増えてきました。一方で、仕事と家庭を両立できる環境や制度が十分整っていなかったことが、晩婚化や晩産化につながったといえます。
大学・短大への進学率は、2020年の調査では57.9%で過去最高となっており(※6)、男女ともに高学歴化が進み、社会進出しキャリアの形成を求める人が増えたことも晩婚化の要因のひとつといえるでしょう。
結婚・出産に対する価値観の変化
結婚の時期に対する考え方も変化しており、18歳から34歳の未婚者を対象にした結婚に対する意思についての調査では、下の表のような結果がでました。
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出典:国立社会保障・人口問題研究所 第15回出生動向基本調査(2015)を元に作成
上記の表から、男女ともに「一生結婚するつもりはない」と答えた人が増加していることがわかります。
結婚することが必然なことではなく、選択肢のひとつとなっているともいえる結果です。
育児や教育費用の負担
子ども1人にかかる教育費用の負担も増しています。
子育てに対する負担感の増大
結婚した夫婦において、理想とする子どもの数を持たないことの理由に、子育て費用・教育費の負担が大きいと答える人が多いという結果があります。(※7)
2018年の調査では、幼稚園(3年間)から高校まで15年間の学習費の総額は、すべて公立の場合は約541万円、全て私立の場合は約1,830万円かかるという結果が出ています(※8)。
大学の入学金と1年間の授業料は下記のとおりになります(私立大学は平均金額)。
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出典:<国立大学>文部科学省 国立大学等の授業料その他の費用に関する省令より <私立大学>文部科学省 私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果より
金銭的な理由のほかにも、晩産化による体力的な理由や、夫の協力が得られないことなども理由にあります。(※9)
また、地域との関わりが薄くなり、育児に対して孤立感や疲労を感じやすくなっていることも関係しているでしょう。
経済的不安定の増大
1990年代以降、長期間にわたり経済が低迷している中で、若い人の失業率が高く、フリーターやニートとよばれる人たちが増えているのが現状です。
非正規雇用などの不安定な雇用形態は、将来の見通しが立ちにくく、所得も安定しにくいなど、正規雇用者と非正規雇用者とで収入格差が生じています。将来の見通しが立たず、未婚率が高くなっているのもうなずける結果です。
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少子化の原因はひとつではありません。不妊治療の助成の拡充や、働き方改革、雇用の確保、子育て環境の整備なども行われていますが、なにより大切なのは多様性を認める社会を形成することではないでしょうか。結婚をせずに子どもを産みたい人など、家庭の多様性を認め誰もが安心して子どもを産み、育てられる社会を目指すことが、少子化を食い止めることに必要なことなのかもしれません。
出典
※1「婚姻件数及び婚姻率の年次推移」(厚生労働省)、2021年3月閲覧
※2「50歳時の未婚割合の推移と将来推計」(厚生労働省)、2021年3月閲覧
※3:「令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況 厚生労働省 結果の概要 合計特殊出生率」(厚生労働省)、2021年3月閲覧
※4:「第2章 なぜ少子化が進行しているのか 1‐2‐10図 調査年別にみた、平均理想子ども数と平均予定子ども数(結婚持続期間0~4年)」(内閣府)、「第15回出生動向基本調査」/2015年(国立社会保障・人口問題研究所)、2021年3月閲覧
※5:「第15回出生動向基本調査 第Ⅱ部 夫婦調査の結果概要:第2章 夫婦の出生力 図表Ⅱ-2-1 各回調査における夫婦の完結出生児数(結婚持続期間15~19年)」(国立社会保障・人口問題研究所)、2021年3月閲覧
※6:「平成30年度学校基本調査(確定値)の公表について」(文部科学省)、2021年3月閲覧
※7、9:「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)国立社会保障・人口問題研究所 4.夫婦が理想の子ども数を持たない理由 図表Ⅲ-1-13」(国立社会保障・人口問題研究所)、2021年3月閲覧
※8:「平成30年子供の学習費調査 調査結果の概要 表9 幼稚園3歳から高等学校第3学年までの15年間の学習費総額」文部科学省)、2021年3月閲覧
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