指差しはいつから?指差しの種類と意味・しない子の練習方法【医師監修】
赤ちゃんにとっての指差しとは?
指差しとは、言葉を習得する前の赤ちゃんの非言語によるコミュニケーション手段の1つです。
赤ちゃんは言葉で気持ちを伝えることができないため、ほしいものや興味の対象を相手に伝えたり、問いかけに対する答えを示したりするために指差しをします。
泣くことでしか意志を伝えられなかった赤ちゃんが、指差しをすることで意思表示をするようになり、成長に応じて指差しの意味が変化し、バリエーションが増えていきます。
- あっ!あれ!みつけた!
- みて、わんわんがいるよ!
- あれをとって!
- それじゃなくてこっちがいい!
赤ちゃんは、このような気持ちを指差しでママやパパに伝えようとしているのです。
指差しはいつから?
赤ちゃんが指差しをするようになる目安は10ヶ月から11ヶ月頃です。
最初は「あっ!あっ!」といいながら、空間やものを指でさしはじめます。
指差しのはじめの時期は、指の形がきちんとできていないこともあり、手全体をつかう手差しをすることもあるでしょう。上達するまでは指差す方向が赤ちゃんが示したい方向と違うこともあります。
また、9ヶ月頃にはママやパパが指差した方向を見るようになります(指向の指差し)。赤ちゃんによっては、まねをして同じ方向を指すこともあるでしょう。
ママやパパは無意識のうちにやっているかもしれませんが、指差しに反応するということは、指差しの意味を理解し、相手の働きかけにこたえることができるということです。
積極的に声をかけ、赤ちゃんの反応を観察してみましょう。
二項関係と三項関係
赤ちゃんは9ヶ月までは「自分と他者」「自分ともの」のように、1対1の2つの関係(二項関係)でものごとを認識しています。ママと関わっているときはおもちゃに興味を示さなかったり、おもちゃに関心があるときはママに興味を示さなかったり、という状態です。
9ヶ月をすぎると、「自分・他者・もの」の3つの関係(三項関係)を認識できるようになります。三項関係に発展すると、「自分」と「ママ」と「もの」を区別できるので、ママが指差したものに反応して指差した方向を見たり、興味があるものを指差してママに伝えたりしようとします。
言語やコミュニケーションの発達では、この三項関係で世界を認識できているかが重要視されています。
指差しの種類と意味
赤ちゃんの指差しは発達段階によって4つに分類され、それぞれ赤ちゃんが伝えようとしている意味が違います。
ここでは指差しの種類と意味について解説していきます。
10~11ヶ月頃:興味の指差し
最初は「あっ!あっ!」といいながら見ているものを指差します。
「わんわんがいるよ!」「あれひかってるよ!」「あれすごい!」など、発見したもの、興味のあるものに対して指差しをします。まわりに誰もいないときでも、1人で指差しをしていることもあるでしょう。
指差しをはじめた頃は、指差しの指の形が上手にできなかったり、指差す方向が正確ではないこともよくありますが、少しずつ上達しますので矯正する必要はありません。
興味の指差しをする赤ちゃんには、「わんわんだね」などママやパパが赤ちゃんの指差しに反応し、「白いわんわんだね、大きいね、ふわふわしてるね」と言葉を足してあげるとよいでしょう。
この頃の指差しは、自発の指差し、定位の指差しと呼ばれることもあります。
10~14ヶ月:要求の指差し
興味の指差しと同時期か次の段階になると、自分の要求を相手に叶えてもらうための要求の指差しをします。
- あのおもちゃとってほしい
- そのいちごが食べたい
- そっちの道に行きたい
- あの滑り台で遊びたい
この頃の指差しは、自分がほしいものや行きたい場所を伝え、それを叶えてほしいという気持ちを意味しています。
要求の指差しをする赤ちゃんに対しては「あのおもちゃがほしいの?はい、どうぞ」「滑り台にいこうね」と答えてあげるといいですね。
要求が叶えられない場合は泣いてしまうかもしれませんが、代わりのものを示してあげるとよいでしょう。
要求の指差しは赤ちゃんの意思表示のため、ママやパパが反応してこたえてあげることが大切です。
12~18ヶ月:叙述の指差し
1歳をすぎると、自分が気になっているものを相手に伝え、相手にも同じものを見てもらうために指差しをするようになります。
相手に共感してほしい気持ちからの指差しのため「共感の指差し」とも呼ばれます。
「あれ!あのわんわんママも見て、かわいいでしょ」「ママ!あそこにパトカーがいっぱいいるよ、かっこいいよ!」という気持ちを伝えています。
ママやパパは「わぁ、ほんとだね、あのわんわんかわいいね!」と赤ちゃんと気持ちを共有することを意識して対応してあげましょう。
18ヶ月~:応答の指差し
1歳半をすぎると、相手の質問に指差しで答えるようになります。
絵本を見ながら「わんわんはどれ?」と問いかけると指差しで教えてくれたり、果物を並べて「どっちが食べたい?」と聞くと指差しで選んでくれたりするようになります。
問いかけたり、子どもの意志を確認したりするようなコミュニケーションをとるとよいでしょう。
指差しをいつから始めるかは子どもによりさまざまです。
同じ時期に複数の指差しができたり、ほかの子よりも遅かったりする場合もあります。日頃から声かけをしたり、赤ちゃんの動作に反応してあげたりするようにすると自然と指差しができるようになるでしょう。
1歳半健診で指差しができないと発達に問題あるの?
1歳半健診では、子どもが指差しをできるかどうかをチェックします。健診にむけて練習を始めたり、健診前に指差しができないことに不安を持ったりするママやパパもいるかもしれません。
ここでは1歳半健診で指差しを確認する目的や、どういう方法でチェックするのかを解説します。
1歳半健診の指差しチェックの内容
1歳半健診でチェックされるのは、応答の指差しです。
絵カードや絵本を見ながら、「わんわんはどれ?」など質問をしたときに指差しで答えることができるかを確認します。「おめめはどこ?」「おくちはどこ?」と聞いて、子どもに自分の身体の部位を指差しさせる方法でチェックすることもあります。
このやりとりでは、大人が話す言葉を理解し行動できているか、言語・精神発達の状態を確認しています。
子どもは慣れない健診の会場では緊張から、いつもできていることができないことも少なくありません。その場合は、ママ・パパへの問診で応答の指差しができているか普段の様子を聞き、発達の状態を確認します。
自宅などで応答の指差しができていれば、健診時にできなくても問題ないと判断されることもあるでしょう。
指差しが遅い・しない場合に考えられる理由
1歳半健診で応答の指差しができない場合、下記の可能性を疑います。
- 聴力の問題
- 精神発達の問題
- コミュニケーションの問題(自閉スペクトラム症)
- 養育環境の問題
発達には個人差もあるため、応答の指差しができないことだけで病気や発達の遅れなどが判断されるものではありません。
多くの場合は、日頃の様子を確認したり、その後の経過も観察したりして、ほかの要素も含めて総合的に判断をします。
こんな指差しをする場合は注意
指差しは言葉の理解や発達に関わるため、指差しの有無やしかたで「障害があるかもしれない」と不安を持つかもしれません。
神経発達症(発達障害)の1つに自閉スペクトラム症があり、特徴的な行動として接触の指差しやクレーン現象があります。
◼︎接触の指差し
接触の指差しは、絵本などを見ながら赤ちゃんが指や手で絵をさわり、パパママに「犬だね」「お花だね」と言ってもらうことを喜ぶ、というような行動のことです。
◼︎クレーン現象
クレーン現象は、瓶の蓋を開けてほしいとき子どもがママの手をとり瓶の上にもっていくというように、子どもが何かしてほしいときにパパママの手を道具のように使う行動です。クレーン現象は、言葉を話せない子どもが自分の要求を満たすためにする行動で、小さい子にはよくみられます。
接触の指差しとクレーン現象は発達に問題がない子でもみられますし、自閉スペクトラム症のすべての子にみられるものでもありませんので、それらの特徴だけで自閉スペクトラム症ということではありません。
しかし、ほかの指差しをしないのに接触の指差しだけがみられる、意思表示がクレーン現象でしかできないなど、コミュニケーションの発達に遅れがある場合、そのほかの特徴も総合的にみた上で自閉スペクトラム症を指摘される可能性があります。
コミュニケーションの発達に不安があれば、健診や医療機関で相談してみましょう。
指差しを引き出す練習方法
赤ちゃんの指差しは、自分から指差しをするようになるのを待つだけではなく、できない子にはママやパパがサポートしてあげることもできます。
ここでは、簡単にできる指差しの練習方法を紹介します。
普段の生活習慣を見直す
具体的な練習の前に、まずは普段の生活を見直しましょう。
長時間子ども1人で動画やテレビなどを見させていたり、CDをかけ続けていたりはしませんか?
赤ちゃんは言葉を理解したり話したりできなくても、ママやパパの反応を見ながら多くのことを学んでいます。
たくさん話しかけたり、絵本の読み聞かせをしたり、童謡を口ずさんだりするなど、日々のコミュニケーションがとても大切です。
何かを見せるだけでなく、まわりの人が赤ちゃんの反応を見ながら、言葉を伝えることでコミュニケーションの力が育つといわれています。
言葉やジェスチャーでたくさん触れ合う中で、赤ちゃんは人とのコミュニケーションに興味を持つようになり、それが指差し、そして言葉の習得につながっていきます。
テレビや動画のような一方通行の情報だけではなく、コミュニケーションが生まれるような接し方も大切にしましょう。
指差しをいっしょにしてみる
赤ちゃんがママやパパの言葉を理解できるようになってきたら、指差しの見本をみせてあげましょう。
「あっち見て」と声をかけながら、指差しをする様子を赤ちゃんに見せるところからはじめます。同時に、ママやパパが赤ちゃんの手の上から自分の手をかぶせて、赤ちゃんに指差しの形をつくらせてあげるのもよいでしょう。
対象を指しながら声をかけることで、赤ちゃんが指差しでコミュニケーションがとれることを学んでいきます。
最初は上手にできなかったり、興味を示さなかったりということもありますが、自然とできるようになるので試してみてください。
見えるところに興味のあるものを置く
赤ちゃんの目線でも見えやすく、手が届かない棚などに、お気に入りのおもちゃや、大好きなお菓子を置いてみましょう。
「あそこにおもちゃがあるよ」と指差しをし、まねをさせてみます。できたら「はい、どうぞ」と、取ってあげましょう。
これを繰り返し練習することで、興味の指差しができ、次第に要求の指差しができるようになります。
子どもの指差しに共感して指差しをする
お散歩の途中に子どもが「あっ!あっ!」と犬を見つけて指差しをするようになります。
その指差しに反応して一緒に犬を指差しながら「わんわんがいるね。かわいいね」などと言葉をかけてあげましょう。
指差しと言葉で子どもが興味を示したものを共有することで叙述の指差しの練習になります。
2つのものから選ばせる
赤ちゃんの目の前に2つのものを並べて、どちらがほしいか選んでもらいます。
最初はママ・パパがいっしょに指差しをしてあげてもよいでしょう。まねをして自分で応答の指差しができるようになっていきます。
「どっちがたべたい?」と聞く場合、食べ物同士を並べると混乱することもあります。最初は食べ物とおもちゃなど、全く違うものを並べるとよいでしょう。
指差しを理解して赤ちゃんとのコミュニケーションを楽しもう
赤ちゃんの指差しにはさまざまな気持ちが込められています。
赤ちゃんの指差しに込められた気持ちをくみとり、周りの人が答えてあげると、赤ちゃんはもっともっと自分の気持ちを伝えたい、共感してほしい、コミュニケーションがとりたい、と思うようになります。
指差しができない場合でも、あせらずに見守りながら、いっしょに練習をしてみてください。
最初は興味を示さなくても、自然とできるようになるものです。コミュニケーションの変化を見守ってあげてくださいね。
- 赤ちゃんの指差しには段階に応じてさまざまな意味が込められている
- 声かけをしたり反応してあげることでコミュニケーションの力が育つ
- 指差しは個人差があるので目安の時期にできなくても心配しなくてもよい
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