妊娠中に知っておきたい性感染症③ エイズ【産婦人科医監修】
エイズ(後天性免疫不全症候群)とは?
エイズは後天性免疫不全症候群といい、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染し、発症した状態のことをいいます。
感染経路は主に性交渉で、HIVはウイルスそのものや、ウイルスに感染した細胞を含んだ血液や精液・腟分泌液、母乳などの体液と濃厚接触すると感染します。
エイズはHIVが原因ですが、HIVに感染しただけでエイズになるというわけではなく、ウイルス感染によって免疫機能が破壊され体の免疫力が弱まり、発症します。
通常では感染しても発症することないほどの弱い病原体でも免疫機能が弱まっていると普段かからないような病気にも感染してしまいます。その後、カリニ肺炎やカポジ肉腫(※1)などの悪性腫瘍を発症し、いわゆる「エイズ(後天性免疫不全症候群)」という病態になります。
※1 カポジ肉腫:皮膚がんの一種で、皮膚の表面に複数のピンク色や紫色、赤色の斑点のような皮疹ができる。進行すると皮疹が盛り上がったり色が濃くなったりする。
HIV感染症の症状と治療
妊娠中の性感染症は、母子感染により赤ちゃんに感染する可能性もあるため注意が必要です。
性感染症の中でもHIV感染症にはどのようなリスクがあるのかについて解説します。
エイズの症状
HIVに感染してエイズを発症するとインフルエンザのような以下の症状がみられ、数週間症状が続くことがあります。
- 発熱
- リンパの腫れ
- 咽頭炎
- 発疹
- 倦怠感
- 筋肉痛 など
免疫力が低下した赤ちゃんに発生する場合の多くは日和見感染症(※2)で、まれに悪性腫瘍の症状がでることがあります。
日和見感染症で起こる症状には複数の症状がありますが、中でも「ニューモシスチス肺炎」が起きた場合は、発熱や呼吸困難、空咳など起こるのが特徴で、重症化する可能性もあります。カリニ肺炎として知られています。
※2 日和見感染症(ひよりみかんせんしょう):健康な人には害がでないような弱い菌やウイルスによって感染し、症状が発生すること。重度の免疫機能が低下している人に起こりやすい症状。
ママと赤ちゃんに対する治療法は?
ママが妊娠中、検査で陽性が判明し、治療となった場合はHIVの増殖を阻止するために抗HIV薬を服用します。1種類だけではなく、数種類の抗HIV薬から症状によって薬を決めます。現在は多剤併用療法が主流です。
HIV感染症による症状がある新生児に対する治療においても薬を使います。
分娩後8時間から生後6週まで抗HIV薬(シロップ)を継続的に投与して、HIVの増殖を抑えます。症状が認められた場合や、免疫に関わる数値が低い場合は診断から1〜2週間以内にすぐに治療が進められます。
治療を開始するタイミングは主治医の判断によって決まります。
HIVは汗や咳・くしゃみなどではうつらない
HIVは性行為以外の、一般的な社会生活でうつることはないとされています。
HIVは感染した人の血液や精液・腟分泌液、母乳などに存在します。
傷のない皮膚から感染することはなく、汗や唾液、お風呂やプールなどは感染を引き起こすだけのウイルス量はないため、一般的な生活をすごす中では心配する必要はないことを知っておきましょう。
エイズにかかっているのはいつわかる?
妊娠初期に受けることができるHIV(エイズ)抗体スクリーニング検査によって、エイズ(後天性免疫不全症候群)の原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)への感染があるかないかを調べます。
もし検査をして陰性の場合は感染の可能性はありません。検査で陽性であったとしてもHIVに感染しているという意味ではなく、二次検査の必要があるということで、さらに二次検査を行って判明します。スクリーニング検査のみでは検査した人のほとんどが偽陽性であり、陽性的中率は5%以下です。
しかし可能性がゼロに近いとしても絶対に感染していないとは言い切れないため、自分のためにもおなかの赤ちゃんのためにも必ず検査を受けるようにしましょう。
万が一HIVに感染していたとしても、適切な治療を受け続けると発症を防ぐことができ、母子感染も大部分が回避できます。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染経路は?
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は血液や精液・腟分泌液などに含まれており、多くは性交渉によって感染します。かみそりや歯ブラシなどの共用もリスクがあるので注意しましょう。
妊娠中のママは免疫力が低下しやすいといわれており、さらに免疫機能が破壊されるHIVに感染していると、発症するリスクが増します。
また、ママだけではなく、ママから赤ちゃんへの感染も心配です。
もしママがHIV感染症検査で陽性だった場合は、赤ちゃんへはどのように感染してしまうのでしょうか。また、防止策はあるのでしょうか。感染経路と感染防止策についてみていきましょう。
赤ちゃんへの感染は分娩時の感染が最も多い
母体がHIV感染症にかかっていて、お産をするときに問題となるのは分娩時感染です。
感染経路には「胎内感染」「産道感染」「母乳感染」の3つがあり、ママから赤ちゃんへの感染の多くが分娩時の感染といわれています。
赤ちゃんへの感染リスクを軽減するために知っておきたいこと
もし事前にHIV(エイズ)抗体スクリーニング検査などでHIV感染症にかかっていることがわかっている場合はどうしたらいいでしょうか。
わかっている場合は分娩時に医師が対処します。感染が起こらないよう、陣痛が起こるまえに帝王切開をすることで分娩時のママから赤ちゃんへの感染を防ぎます。(ただし治療の状況によっては経腟分娩が考慮されることもあります。)
また、エイズにかかったママの母乳はHIVの感染リスクがあるため、母乳による授乳を禁止することで赤ちゃんへの感染を予防します。
赤ちゃんへの感染予防を行わず分娩に臨んだ場合に、赤ちゃんへ感染する確率は20-40%といわれています。妊娠初期にHIV(エイズ)抗体スクリーニング検査を行うことで、あらかじめ赤ちゃんへの感染対策をすることができます。日本では母子感染の予防対策により、赤ちゃんへの感染率はとても少なくなっています。
エイズは妊娠初期の検査で発覚することもある病気です。赤ちゃんへの母子感染を防ぐためにも、まずは妊娠初期のスクリーニング検査をしっかり受けておくことが大切です。
セックスする際には感染予防としてコンドームを使用する
コンドームは避妊具として効果的ではありますが、性感染症の感染予防に関してもとても重要です。
感染予防のためには、オーラルセックスも含めて粘膜接触のはじめから最後までしっかりと装着しましょう。
治療も大切ですが、セックスの際にはコンドームを装着するなどして母体の感染予防をあらかじめ行うことが大切です。パートナーの血液や精液、腟分泌液を体内に取り込まないよう最善の注意をはらいましょう。
妊娠中もしHIVに感染していることがわかったら
HIV感染症は治療法の進歩によって、エイズの発症前に治療をすれば、完治は困難ですが、安定し、病気の進行は穏やかな状態が続くようになってきているようです。
また、事前にきちんと検査を受けることで母体から赤ちゃんへの感染を予防することができます。妊婦健診できちんと検査を受けるようにしましょう。
もし万が一ママ・パパのどちらかの感染が確認されたら、もう一方も感染している可能性が高いので、必ず二人とも早めの治療を心がけましょう。
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