【医師監修】会陰切開は必要？痛みはいつまで続く？産後の回復を早める方法も解説

膣と肛門の間の部分のことを「会陰（えいん）」といいます。

会陰切開とは、分娩時にこの会陰をはさみで切る処置のことです。会陰切開は、分娩をスムーズに進める目的で行われます。

どのくらい切るかは赤ちゃんの頭のサイズや会陰の伸び具合によって異なりますが、2〜3cmほど切るのが一般的です。

「会陰切開をするということは、股を切るってこと…？」とびっくりするママも多いと思いますが、会陰切開はママと赤ちゃんのために行う処置です。ここでは、会陰切開が必要な理由を見ていきましょう。

会陰切開を行うことで、会陰が裂けるリスクを抑えることができます。

会陰が硬かったり、赤ちゃんが大きかったりすると、会陰が十分に伸びず裂けてしまうことがあります。会陰が裂けてしまうと皮下組織などが傷つき、最悪の場合肛門のほうまで傷が広がることも。

これに対し、医師が行う会陰切開は、成り行きで裂けてしまった場合よりも傷が浅く、かつ治りが早いことが多いです。

会陰切開は、会陰が裂けるリスクを最小限に抑え、産後の回復を早めるために行われるのです。

会陰切開は、分娩を早く進めるためにも必要です。

たとえば、分娩が予定通りに進まずに難産になった場合や、赤ちゃんの心拍数に異常が見られ危険な状態になった場合は、分娩を速やかに終わらせることが重要です。

そこで会陰切開を行うことにより、赤ちゃんが早く出てこられるようになるのです。

会陰切開はすべてのママに行われる処置ではありません。それでは、どんな場合に会陰切開が必要なのでしょうか。ここでは会陰切開が必要なケースについて解説します。

会陰の伸びが悪い場合に会陰切開を行うことがあります。

分娩時は、まず直径約10cmほどの赤ちゃんの頭が、ママの腟壁や会陰部の皮膚を引き伸ばしながら出てきます。

その際、会陰部の皮膚や皮下組織も引き伸ばされますが、伸びが悪いと赤ちゃんが出てこられません。また、会陰が伸びきらないうちに赤ちゃんが出てこようとすると、裂けて深い傷になってしまうことも。

医師が会陰の伸びが悪いと判断した場合、裂けてしまう前に会陰切開を行うのです。

赤ちゃんの頭が大きいと、会陰切開が必要になる場合があります。

ママやパパがもともと大柄だったり、ママが糖尿病を患っていたりすると、お腹の中の赤ちゃんが大きくなりすぎてしまうことがあります。赤ちゃんが大きいということは当然頭も大きいため、分娩時に出てきにくくなります。

この場合、赤ちゃんの頭が通り抜けられるように、会陰切開が行われます。

会陰切開は、赤ちゃんの心拍数が低下している場合にも行われることがあります。

心拍数の低下は、赤ちゃんに危険が迫っている証拠だといえます。

この場合は会陰が伸びるのを待たず、赤ちゃんをすぐに外へ出す必要があるため、会陰切開を行うことがあるのです。

頭部に疾患が見られる赤ちゃんを出産する際にも、会陰切開が行われることがあります。

妊娠中の超音波スクリーニング検査などで、生まれる前に赤ちゃんの頭部に疾患があると診断される場合があります。

その場合、赤ちゃんの頭を強い圧迫から守るために会陰切開を行うことがあるのです。

会陰切開は局所麻酔をしてから行われるため、切られる際の痛みは感じません。

分娩後に切った部分を縫合する際、麻酔が効いていてもチクチクとした痛みを感じるママもいます。

会陰切開後1〜3日間は、子宮収縮と重なり強い痛みを感じますが、4日目以降は少しずつ痛みが軽くなっていくでしょう。1ヶ月ほどで痛みをほぼ感じなくなりますが、チクチクした感じや違和感が残る場合もあります。

切ったあとに傷口を縫い合わせるため、会陰切開しなかった場合に比べて痛みが長引く可能性があることは覚えておきましょう。

ここでは、どのようなステップで会陰切開を行うのか、流れや手順を説明します。

会陰切開の処置自体は医師が行いますが、処置を行うタイミングは助産師が判断する場合が多いです。

助産師は陣痛中からママに寄り添い、分娩の状況を見極めます。赤ちゃんが出ようとしており、ママの会陰がこれ以上伸びないと判断したタイミングで会陰切開を行います。

会陰切開を行う前に、痛みを取り除くために局所麻酔をします。ただし、ママや赤ちゃんの安全を最優先するため、やむを得ず無麻酔で行うこともあるようです。

会陰切開には刃渡り5〜6cmほどの先の丸い小さなはさみを使い、医師が決めた場所を切開します。会陰の伸び具合や赤ちゃんの大きさによって多少異なりますが、だいたい2〜3cmほど切るのが一般的です。

会陰切開は、陣痛の痛みがピークの状態で行います。そのため、無麻酔で切開した場合でも「会陰切開自体の痛みはさほど気にならなかった」というママが多いようです。

分娩が終わり胎盤が出てきたら、会陰切開した部分を縫い合わせます。近年は抜糸の必要がない溶ける糸で縫合するのが一般的です。

まだ麻酔が効いている状態ですが、チクチクとした痛みを感じるママが多いようです。処置自体は5分ほどで終了します。

溶ける糸を使用した場合は、徐々に体内に吸収されるため抜糸の必要がありません。

一方、溶けない糸で縫合した場合は、退院時の診察のタイミングや産後4日ほどで抜糸を行います。

この際は麻酔をしないため、引きつるような痛みを感じることもあるようです。

会陰切開後の回復を早めるには、以下の点に気をつけることが大切です。会陰切開の傷が治りやすくなるポイントを確認しましょう。

傷を早く治すには、傷口を清潔に保つことが重要です。

分娩後は「悪露（おろ）」という血の混ざったおりものが出るため、不衛生になりがち。産褥パットをこまめに交換するようにしましょう。

トイレの際に清浄綿などを使って会陰部分の汚れを優しく拭くとよいですよ。

傷口を圧迫すると痛みが強くなります。会陰切開後は傷口を圧迫しないように意識しましょう。

ゆったりとしたデザインの下着を選び、傷口を圧迫しないようにします。また、通気性のよい下着は、傷口の蒸れを防ぎ感染リスクを減らすのでおすすめですよ。

患部に刺激を与えないよう、座る際は円座クッションを使いましょう。就寝時は横向きで、脚にクッションなどを挟むとよいですね。

会陰切開後の痛みがひどい場合は、我慢せずに痛み止めを服用しましょう。医師に相談すれば、授乳中でも使用できる痛み止めを処方してくれます。医師の指示を守ることで、痛みを適切にコントロールしつつ、副作用のリスクを最小限に抑えることができますよ。

出産後は、慣れない育児に戸惑う人も多いものです。痛み止めを内服し、傷が治るまでなるべく快適に過ごしましょう。

会陰切開に関するよくある質問と回答をまとめました。

会陰切開は会陰をはさみで切る処置のこと。会陰が裂けるリスクを抑え、分娩を早く進めるために行われます。

赤ちゃんの状態や会陰の伸び具合から、助産師が必要と判断した場合に行われるので、すべてのママが経験するわけではありません。

会陰切開の際に痛みを感じることはあまりないものの、分娩後しばらくは強い痛みが続きます。

切開時には局所麻酔によって痛みを抑えてもらえるため、会陰切開をあまり怖がりすぎず、正しく理解して出産に臨めるとよいですね。

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