夫婦間での性欲のギャップ…。どう向き合う？

夫婦やパートナーの間で「性欲の差」を感じることは、決して珍しくありません。どちらかが「したい」と思っても、相手がその気にならない──そんなすれ違いが続くと、心の距離を感じてしまうこともあります。

しかし、相手との違いには身体や環境、価値観など、さまざまな要因が関係しています。ここでは、主な理由を順に整理していきましょう。

性欲にはホルモンの分泌が大きく関わっています。特に女性は妊娠・出産・授乳などによってホルモンバランスが大きく変化するため、一時的に性欲が低下することがあります。また、男性も加齢やストレスによってテストステロンの分泌が減ると、性への関心が薄くなる場合があります。

これらはどちらも自然な変化であり、「自分だけがおかしいのだろうか」と思う必要はありません。身体の仕組みを知ることが、安心につながります。

出産や育児、仕事復帰など、ライフステージの変化によって、心身には大きな負担がかかります。特にママは日中は特に育児や家事に追われるため、夜は「眠りたい」という気持ちが強くなるもの。一方で、パパは“以前の関係”を求めることもあり、性欲のペースに差が出やすくなります。

疲労や睡眠不足が続くと、性欲よりも「休息したい」という本能が優先されるため、すれ違いが生まれやすくなります。

性欲の差は、日常の小さなコミュニケーションの積み重ねからも広がることがあります。育児や家事の分担の不平等、感謝の言葉・スキンシップ不足などが原因で、相手に対する親近感や安心感が薄れていきます。

「最近、あまり話してないな」と感じたら、まずは会話やふれあいの時間を増やすことが第一歩です。性的な話題を避けるのではなく、相手の気持ちを尊重しながら“今の関係”を見直していくことが大切です。

性に対する考え方やペースは人それぞれです。「愛情表現＝性行為」と考える人もいれば、「手をつなぐだけで十分」と感じる人もいます。育ってきた環境や過去の経験、メディアの影響によって価値観が異なるのは自然なことです。

相手の考えを否定せず、「自分はこう感じる」と伝え合うことで、歩み寄りのきっかけが生まれます。性の価値観の違いを知ることは、相手に対するより深い理解への第一歩になります。

性欲の違いに気づいても、どう話せばいいのかわからない――そう感じる人は多いです。デリケートな話題だからこそ、タイミングや言葉選びを間違えると、思わぬ誤解や険悪な雰囲気を生んでしまうこともあります。

ここでは、お互いの気持ちを無理なく伝え合うための話し合い方のポイントを見ていきましょう。

話し合いは、お互いが落ち着いているタイミングを選ぶことが大切です。喧嘩の直後や相手が疲れているときに切り出すと、前向きに話ができず防衛的になってしまいがち。たとえば休日の昼間や子どもが寝たあとなど、心と時間に余裕があるタイミングが理想です。

「少し話したいことがあるんだけど」と前置きをしておくと、相手も心の準備ができ、穏やかに話を始めやすくなります。

話し合う際は、できるだけリラックスできる場所を選びましょう。寝室やリビングなど、安心して本音を話せる空間が理想です。反対に外出先や子どもの前など、周囲に気を使う状況では本音を出しにくくなります。

特別な場所でなくても、「今日は静かに話せそうだね」と意識を向けるだけで、雰囲気はぐっと柔らかくなります。二人が安心して向き合える空気をつくることが何より大切です。

話し合いの中では、相手を責めるのではなく「自分はこう感じている」と伝えることを意識しましょう。たとえば「どうしてしてくれないの？」ではなく、「最近、少し寂しいな」と言い換えるだけで印象は大きく変わります。

感情的にならず、事実→気持ち→希望の順で伝えると、相手も受け止めやすくなります。思いやりのある言葉選びが、対話を前向きなものに変えてくれます。

性欲の違いを話し合っても、すぐに解決できるとは限りません。どちらかが我慢したり、無理に合わせようとすると、心や身体に負担がかかってしまうこともあるでしょう。

そこで、「無理をしない」という選択肢も立派な答えだと知ることが大切です。お互いを思いやりながら、今の自分たちに合ったペースを見つけていきましょう。

「断られる＝愛されていない」と感じてしまう人は少なくありません。しかし、性行為を断る理由は、疲れや体調、気分などさまざまです。愛情は必ずしも性的な行為で示すものではなく、日々の会話やスキンシップ、思いやりの言葉としても表せます。

「今はそんな気分じゃない」という言葉を、拒絶ではなく“正直な気持ちの表現”として受け止めることが、関係を守る第一歩になります。

話し合っても平行線が続く場合や、どちらかが強いストレスを感じている場合は、専門機関に相談するのも大切です。医療機関ではホルモンや体調の影響を調べられ、カウンセラーは夫婦の気持ちの整理をサポートしてくれます。

相談することは「問題を外に出して整理する」行為です。恥ずかしいことではなく、より良い夫婦関係を築くための前向きな一歩として考えてみましょう。

性欲の違いは、どんな夫婦にも起こりうる自然なことです。大切なのは、相手を責めたり、自分を責めたりせず、冷静に向き合うこと。妊娠・出産に伴う身体の変化や生活リズム、価値観のズレを理解し合うことで、すれ違いは少しずつ埋められます。ときには「無理しない」選択も愛情の形。焦らず話し合いながら、自分たちなりの心地よい関係を育てていくことが何より大切です。