【放送作家・鈴木おさむ】父親になるための勉強、「父勉」のために、育休
僕は放送作家という仕事をしています。テレビの放送作家業と、それ以外の仕事もさせてもらっています。メインはテレビの放送作家業なんですが、思い切って、この機会に、テレビの放送作家業を、約一年、休ませてもらうことにしました。そうするとかなり時間が出来ます。
僕はテレビで20本以上の番組を担当していたので、色んな局の沢山のスタッフに協力していただき、これを実現することが出来ました。
今から10年ほど前、とあるディレクターが、バリバリ仕事マンだったのに、子供が産まれていきなり一年間休みを取ったのです。0歳の頃に近くにいてあげたいと。その人は僕に言ってました。「この時期に自分の子供の近くにいられることは、こういう仕事をしてるからこそ大切だと思う」と。
その人が育休を終えて戻ってきたときに、なんか格好良く見えたんです。自分の中での順番がはっきりして生きてるなと。大切なものがなにかを自分の中ではっきりさせて生きてるなって。それって意外と出来てる人少ない。みんなぼやかして生きている。
育休を実行したディレクターさんの言葉がずっと胸にひっかかってました。だから、妻の妊娠中にずっとこのことを考えていまして、実行することにしました。これを出来ることがどれだけ贅沢なことか、感じております。
世の中には、育休を取りたくても取れない人も沢山沢山いて、会社に男性の育休制度はあっても、それを取ると有給の休みではなく、お金も出なかったり。男性が育休を取ろうとすると、出世に響くなんてことを言われる会社もあるとか。
そして、僕の妻は芸人であり、森三中というトリオを組んでいる芸人です。妻が望むならば、ゆっくりでいいから仕事に復帰させてあげたいと思っています。だからこそ、自分が、仕事を一気に減らして休みを取ることで、そのアシストも出来るかなと思っています。
ほっておくと、僕は昼に仕事に行き、夜中に戻ってきて、朝方まで台本書いて、また昼に仕事に行くということの繰り返しになります。忙しいルーティーンの中であっという間に10年とか経っちゃうんじゃないかと思います。だから、ここで思い切って、仕事の仕方も見つめなおす必要があるんじゃないかと。それが出来る環境であることがありがたいのですが。休むことによって、テレビをオンタイム(放送している時間に見られる)視聴することによって、テレビの見方が変わり、一年後、放送作家業に戻った時に、またいい影響が出ると思っています。
僕は育休という言葉が個人的には好きじゃなく、父親になることを勉強するから「父勉(ちちべん)」という言葉を勝手に作って言ってます。「父勉」のためにお休みをいただくと。
男性が会社で「育休のために休む」とは言いにくいけど、「父勉」だったら言いやすくて、先輩の上司が「お前子供産まれたんだろ? 父勉、やってこい」みたいな会社とかができたらいいなと思ったりしてます。
まずは、一年間。父勉のために仕事をグっと減らして。妻と子供と向き合い、父親になることを勉強し、子供を育てながら、自分が一番成長しなければいけないと思っています。
そしてなにより妻と向き合える時間が増えるのが嬉しいです。
育休を経て、自分の大切な順番がはっきりとなったあのディレクターのように。今、僕の中での順番。妻は子供が一番、僕が二番でしょう。僕にとって当たり前ですが、子供は大切。宝です。ですが、僕の中では、愛している順番は妻が一番、息子は二番。もちろん息子のことは命がけで守ります。順番なんぞそもそもつけるものじゃないと言われるかもしれませんが、その気持ちでいますし、それを子供に伝えたいと思っています。
そしていつか、息子が僕と同じように、妻を一番だ! と言い切れるような相手と出会って、その人を全力で愛することができることを願って育てます。
なので僕は夜、家に帰ったら、寝室に入り、まず寝ている息子の頭をなでるのではなく、寝ている妻の手を握り、妻の頭をなでて、そしてその次に息子の頭をなでるようにしています。それが夫婦にとってはすごく大切な気がして。
交際0日で結婚した僕たちは、13年目で、子を授かり、これから大きく変わろうとしています。
子供の成長ももちろん楽しみですが、子供を産んだ芸人・大島美幸が母親としてどう変化していくかがとてもとても楽しみです。
一日一日を大切に。悲しいことも怒れることも、いつか笑いの種になると信じて。笑うかどには福きたる。
父の気づき
出産によって変化する、夫婦の距離と位置。
どのように変わっていくか、しっかり記憶したい。
写真提供:ゲッティイメージズ
※当ページクレジット情報のない写真該当
連載の目次
【放送作家・鈴木おさむ】父親になるための勉強、「父勉」のために、育休
第1回【放送作家・鈴木おさむ】「母乳神話」の深い意味なんて、考えたこともなかった
第2回【放送作家・鈴木おさむ】なりたいのは「イクメン」ではなく、「父親」
第3回【放送作家・鈴木おさむ】妻とふたりの時間を過ごす、保育園帰りのモーニング
第4回【放送作家・鈴木おさむ】親も子もつらい断乳を、「へのへのもへじ」で乗り切る。
第5回【放送作家・鈴木おさむ】問題は発熱じゃない! 突発性発疹でわかった大事なこと
第6回【放送作家・鈴木おさむ】母親を守ろうとする、息子の必死さにショック……
第7回【放送作家・鈴木おさむ】小さな口喧嘩に対する、恐るべき子供の反応。
第8回【放送作家・鈴木おさむ】子供を叱るときのポイント。その行動に共感してみる。
第9回【放送作家・鈴木おさむ】目の前にある当たり前に感謝して、毎日を生きたい
第10回