【産婦人科医ママに聞く】Q. 無痛分娩は、赤ちゃんによくない?
A. 赤ちゃんの負担がないとは言えませんが、 メリットもあるので比較・検討を
『無痛分娩』とは、産婦さんの背中から管を入れて神経に近いところへ薬を届ける『硬膜外麻酔』で痛みを抑えながら行う出産方法です。麻酔分娩や和痛分娩も、みんな同じもの。完全に痛みがなくなることはまれで、10の痛みが2〜3に減るとイメージしてください。 出産の場合、痛みは感じにくくしつつ、体は動かせるようにするという微妙なさじ加減が必要になるので技術がいります。麻酔が入ったあとは、産婦さんも赤ちゃんも血圧や脈拍などを モニタリングするなどして念入りに管理しなければならないので、人手が十分にある病院でしかできません。ですから、無痛分娩を行っている病院がない地域もあるでしょう。
また、本来ならば自然に陣痛がきてから麻酔をするのが理想的ですが、無痛分娩に24時間いつでも対応できる病院は少なく、あらかじめ日にちを決めて日中に麻酔と陣痛誘発をする『管理分娩』を行う施設が多いようです。すると、まだ子宮口が十分に熟していないケースもあり、 お産がなかなか進まず、結局は帝王切開術での出産になることもあります。陣痛がのってこなければ、すぐに帝王切開術にする産院もあるので、詳しい説明を聞いておくことが肝心です。 赤ちゃんの負担としては、母体の血圧が下がるために、胎盤にうまく血液が流れなくなり、呼吸が苦しくなることがあります。また、陣痛が弱くなる『微弱陣痛』によって、出産が長引く『遷延分娩』になることも。血圧低下のリスクは28〜31%、遷延分娩については分娩が平均約1時間のび、鉗子分娩や吸引分娩も増えますが、帝王切開率は変わりません(※1)。
ちなみに、私は初産では陣痛を経験したかったことと、遷延分娩を避けたかったので、無痛分娩を選びませんでした。が、安産だったので、もしも次に産むことがあれば無痛分娩をしてみたいと思っています。なぜなら、無痛分娩にはメリットもあるからです。痛みに弱い人、産後の回復を早めたい人にとっては有用です。そして陣痛を経験した私個人の感想としては、あの痛み自体に意味があるとは思えません。「痛みを感じることで母性が強くなる」と言う人が いますが、それは根拠のない価値観の押し付けです。国によっては半数以上が無痛分娩のところもあるので、日本でも自由に選べるよう普及したほうがいいのではないでしょうか。 何を優先するかを考えたうえで、出産する施設での無痛分娩のやり方、それによるベネフィットとリスクをきちんと確認してから選んでくださいね。
※1 23rd Edition Williams Obstetrics
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写真提供:ゲッティイメージズ
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