【医師監修】子宮内膜症の検査と診断方法は?
子宮内膜症とは?
子宮内膜症とは、子宮の内側にある子宮内膜とよく似た組織(子宮内膜様組織)が、子宮内膜以外の場所にできる病気です。多くは子宮の近くの卵巣や腹膜、ダグラス窩(か)などにみられます。まれに肺などの子宮から離れた場所に発生することもあります。
本来の場所にある子宮内膜は月経のときに腟(ちつ)から排出されますが、子宮の内側以外に子宮内膜様組織が増えた場合には、そのはがれ落ちた血液が外に出ていく場所がありません。
そのため炎症を起こしたり、臓器が癒着(ゆちゃく)してしまうことがあります。
出典:「Illustrated Guidance 子宮内膜症 2015年改訂版」(先端医学社)
出典:「Illustrated Guidance 子宮内膜症 2015年改訂版」(先端医学社)
子宮内膜症の症状については以下の記事を参考にしてください。
子宮内膜症と妊娠の関係については以下の記事を参考にしてください。
子宮内膜症の検査と診断方法は?
必ずしもすべてではありませんが、以下のような診察や検査を行い子宮内膜症の診断をします。
問診
子宮内膜症のおもな症状は、下腹部痛、腰痛、排便痛などの月経時の痛みで、約90%の子宮内膜症の人に生じています。また子宮内膜症の人の約半数が不妊症を合併しているとされています。
そのため問診で月経痛がないかどうかや、妊娠しにくい状態かを確認することが診断の手がかりとなります。
診察前に問診表を記入しますが、以下のような項目や医師に確認したいことなどをメモにまとめておくと安心です。
診察する前に確認しておきたいこと
・月経の状態(初めて月経がきた年齢、月経周期、月経の日数、最終月経日など)
・月経痛の有無や程度
・月経以外のときの気になる症状
・妊娠、出産経験やこれまでの婦人科受診の経験
・持病など
内診
内診は腟の入り口から指を入れて、もう片方の手でおなかを押さえて行います。
子宮の大きさや硬さ、可動性や痛みがあるかどうか、しこりの有無、卵巣部分の痛みなどを確認します。
超音波(エコー)断層法
超音波検査にはおなかの上から超音波プローブという機械を当てる方法と、腟から細い超音波プローブを入れて検査する方法があります。子宮内膜症の検査では腟から入れて検査する方法で行います。
子宮や卵巣の状態を確認しますが、特に卵巣チョコレート嚢胞(※)の診断に有効とされています。
※チョコレート嚢胞(のうほう)とは?
卵巣にできた子宮内膜症のことです。進行すると卵巣に血液がたまり、溶けたチョコレート状に見えることから卵巣チョコレート嚢胞とよばれています。
MRI(磁気共鳴画像診断)
超音波検査で卵巣チョコレート嚢胞が確認されたケースでは、病変をより詳しく調べるためにMRI検査を行います。
MRI検査は電磁波を使って体の画像を得ることができ、子宮や卵巣の確認に適しています。
血液検査
子宮内膜症ではCA125という血液データが上昇するケースがあります。
CA125は月経中や閉経前にも上昇することがあるため、ほかの検査の補助的に行います。
腹腔鏡検査
腹腔鏡検査は全身麻酔のもと、おなかの表面から穴を開け腹腔鏡を挿入します。
モニター画面から子宮内膜症の病変を確認します。子宮内膜症での確定診断(※)はこの腹腔鏡検査を行うことで得られます。
子宮内膜症の診断だけでなく、病変をレーザーで焼いたり、癒着をはがす治療を行うことにも使用されます。入院し全身麻酔で行うため、検査目的だけで行うことはせず、治療を同時に行うことがほとんどです。
※確定診断:普段の症状を問診で確認したり、内診などから子宮内膜症として診断することを臨床診断というのに対し、直接病変を確認して診断することを確定診断といいます。
出典:「Illustrated Guidance 子宮内膜症 2015年改訂版」(先端医学社)
子宮内膜症の検査は月経中に受けられる?
月経痛などで悩んでいる女性に対しては、専門医による詳しい問診や内診から総合的に判断し、子宮内膜症として治療をするケースがあります。
そのため月経中のために受診ができないということはなく、気になる症状があればためらわずに受診することが望ましいといえます。
ただし、子宮頸がん検査も一緒に行う必要があるケースなどでは、細胞を採取するため月経中は避けたほうがよいとされています。
子宮内膜症の検査や診断方法についてお伝えしました。
子宮内膜症の確定診断をするには腹腔鏡検査が必要ですが、すべての人に対して行うわけではありません。婦人科の診察はまず問診からはじまります。
月経痛や不妊など心配なことがある場合には、迷わずに婦人科、産婦人科を受診し相談してみましょう。
参考:
・岡井崇、綾部琢哉(編集)、『標準産婦人科学 第4版』医学書院、2011年
・百枝幹雄(著者)、『よくわかる 最新医学 子宮内膜症』、主婦の友社、2017年
・日本子宮内膜症啓発会議(JECIE)、『子宮内膜症Fact Note』 、2013年
(2021年1月4日閲覧)
写真提供:ゲッティイメージズ
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