
【医師監修】薬や手術、子宮内膜症の治療について
子宮内膜症とは?
子宮内膜症とは子宮内膜とよく似た組織が何らかの原因で、子宮内膜以外の場所にできる病気です。多くは子宮の近くの卵巣や腹膜などに発生します。まれに肺などの子宮から離れた場所にも発生することがあります。
月経(生理)のたびに進行し、ひどい月経痛などの月経困難症や不妊症が代表的な症状です。
子宮内膜症は初経(はじめての生理)が早いこと、妊娠回数が少ないこと、月経周期が短いなど、昔の女性に比べて月経の回数が増えていることがリスク因子となっています。発生するしくみははっきりとはわかっていませんが、月経血が卵管を通して腹腔内(おなか)に逆流することが影響しているとされています。

出典:「Illustrated Guidance 子宮内膜症 2015年改訂版」(先端医学社)
子宮内膜症のステージは4段階
子宮内膜症の進行は4つのステージに分けられます。いくつか分類方法がありますが現在は「R−ASRM分類」という方法が広く使われています。腹腔鏡下手術や開腹手術をしたときに、直接病巣を確認することで診断されるため、内診では診断できません。
腹膜や卵巣の部位の病巣の大きさ、卵巣や卵管などの癒着の状態など部位別に点数をつけてスコア化します。合計点数により4段階(Ⅰ〜Ⅳ)のステージに分類されます。
ステージⅠ(微症)
ステージⅡ(軽症)
ステージⅢ(中等症)
ステージⅣ(重症)
点数が上がるほど重症度も上がりますが、子宮内膜症の進行度は痛みに比例しません。痛みが強くても軽度のこともあれば、進行していても痛みはそれほど強くないケースもあります。
子宮内膜症の治療薬は?
子宮内膜症の薬物療法には、痛みを抑えることを目的として鎮痛剤を用いた対症療法と、排卵を止めて病気の進行を抑えたり、病巣を小さくしたりするホルモン療法があります。
鎮痛剤
子宮内膜症の代表的な症状である痛みは、日常生活に大きな影響を及ぼします。
痛みを抑えることを目的に、はじめに選択されることが多いのが鎮痛剤を使用した対症療法です。
鎮痛剤は病気そのものの治療ではなく症状を抑えるものです。
比較的症状が軽いケースや、すぐに妊娠を希望しているケースなどに用いられます。
病気の進行を抑えることや、病巣を小さくするという効果はないため定期的な診察が必要となるため、低用量ピルを第1選択とすることが多くなっています。
鎮痛剤で痛みを抑えられなかったり、病気の進行がみられたりしたときにはホルモン療法を行います。
低用量ピル
低用量ピルは、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を合わせた薬です。
排卵を止める、子宮内膜の増殖を抑えるなどの効果があり、月経量が減り期間も短くなります。飲み始めには吐き気や不正出血などの副作用が起こることもありますが、徐々に解消してきます。
副作用が少なく長期間使用することができますが、ごくまれ血管に血液の塊が詰まる血栓症を起こすことがあります。過去に血栓症を起こしたことがある、高血圧があるなどリスクのある人は使用を控えます。
黄体ホルモン療法
黄体ホルモン製剤は、子宮内膜症の病巣に直接作用して内膜の増殖を抑えます。また女性ホルモンであるエストロゲンの分泌と、排卵を抑えます。これらの作用から、月経痛などの症状が改善します。
個人差はありますが、黄体ホルモン製剤を飲み始めると、不正出血が起こりやすくなります。ほかにはほてり、頭痛などの副作用症状がみられることも。続けて内服するうちに不正出血も減る傾向があります。
血栓症のリスクがあって低用量ピルが使用できなかった場合でも、黄体ホルモン製剤を使うことができます。
GnRHアゴニスト療法(偽閉経療法/ぎへいけいりょうほう)
脳の下垂体から出る、卵巣を刺激するホルモンの分泌(性腺刺激ホルモン)を抑えることで、エストロゲンの分泌が低下し月経が止まります。閉経と同じ状態を作るため、偽閉経療法と呼ばれており、注射薬と点鼻(鼻からスプレー)薬の2つのタイプがあります。
月経が止まるため、症状や病気の進行が抑えられますが、急激にホルモンの分泌が低下するため、ほてりやのぼせなど更年期障害のような症状が副作用として現れます。
骨量の低下もみられるため、長期間の使用はできません。最近では以前に比べ使用する頻度は減少しています。低用量ピルや、黄体ホルモン療法で十分に効果が得られなかったときに使用します。
子宮内膜症の手術
手術が選択されるケース
卵巣チョコレート嚢胞(のうほう)※が大きい場合や、不妊症の改善のために手術療法が選ばれることがあります。
手術には病巣だけを取り除く保存手術と、病巣と子宮や卵巣も取り除く根治手術があります。将来妊娠を希望するケースでは保存手術が選ばれます。ただし手術をすれば必ず妊娠するというわけではありません。
再発を予防し完治を目指すときには根治手術が選ばれます。痛みの程度や年齢、進行度、将来の妊娠の希望などに応じてそれぞれの方法が選ばれることになります。
※卵巣チョコレート嚢胞とは
卵巣にできた子宮内膜症のことです。進行すると卵巣に血液がたまり、溶けたチョコレート状に見えることから卵巣チョコレート嚢胞とよばれています。嚢胞の状態や自覚症状によって治療法は異なりますが、大きい場合にはがん化する可能性があるため手術の適用となることがあります。

出典:「Illustrated Guidance 子宮内膜症 2015年改訂版」(先端医学社)
腹腔鏡下手術
おなかに数ヶ所(3〜4ヶ所程度)小さな穴を開け、そこから専用の内視鏡や手術の器具を入れてモニターを観察しながら手術を行います。
おなか中がよく観察できるようにしたり、手術の器具を安全に使えるようにするなどの目的で炭酸ガスを入れておなかを膨らませながら行います。腹腔鏡下手術は傷が小さく、出血量も少ないため広く行われています。
予想外に癒着(ゆちゃく)※が激しかったり、出血が多い場合には開腹手術に移ることもあります。
※癒着:本来離れているはずの臓器が外傷や炎症などによって、くっついてしまうこと。
開腹手術
開腹手術は卵巣チョコレート嚢胞が大きい場合や、癒着が激しいと予想される場合などに行います。直接病巣を見ながら行えるため、出血が多い場合などのさまざまな状況にも対応がしやすいというメリットがあります。腹腔鏡下手術の設備のない病院でも行うことができます。
デメリットとしては、腹腔鏡下手術に比べると、体への負担が大きく入院期間や開腹時間が長くなるとされています。
子宮内膜症の治療には痛みを取る、不妊症の改善、卵巣チョコレート嚢胞ががん化するのを防ぐなどの目的があります。それぞれの病状や、ライフステージに応じて適切な治療方法が異なります。どの治療方法を選ぶべきか、不安なことがある場合には、婦人科の医師に相談してみましょう。
参考:
・岡井 崇、綾部 琢哉、(編集)、『標準産科婦人科学 第4版』医学書院、2021年
・日本子宮内膜症啓発会議(JECIE)、『子宮内膜症Fact Note』 、2013年
(2021年2月12日閲覧)
・百枝幹雄(著)、『よくわかる 最新医学 子宮内膜症』、主婦の友社、2017年
写真提供:ゲッティイメージズ
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