【医師監修】妊娠中のママは熱中症になりやすい?
この記事では、暑い夏を無理せず乗り切るため、熱中症やその対策についてお伝えします。
この記事では、暑い夏を無理せず乗り切るため、熱中症やその対策についてお伝えします。
熱中症とは?
暑さで体温調節ができなくなる
外の気温が高くなると、私たちの体は体温を調節する神経が働き、熱を体の外に放出して下げる指令が出されます。
ところが、体温の調節ができなくなるほど高温になると、熱を下げる力が追いつかずに体温は上がったままとなります。
水分や電解質のバランスも崩れ「熱中症」という状態となり、さまざまな症状が生じます。
熱中症のピークは梅雨明けから8月下旬
日本救急医学会によると、熱中症の発症数は7月中旬から8月下旬にかけてピークを迎えるとされています(※)。梅雨が明けた直後や、梅雨明け前の連続した晴天の日はもっとも注意が必要です。
※日本救急医学会 「熱中症診療ガイドライン 2015 」(2020年4月28日閲覧)
ただし真夏日でなくても注意が必要
気温の高い日は注意が必要ですが、熱中症は気温以外にも「湿度」、「風速」、「太陽の日差しや地面や建物の照り返し」も関係します。
湿度が高い日、風が弱い日なども体から熱が逃げにくくなるため、熱中症になりやすいのです。
妊娠中は熱中症になりやすいの?
妊娠中のママは熱中症に注意が必要
特に高齢者や乳幼児が熱中症になりやすいのですが、妊娠中のママも注意が必要です。以下のようなことから脱水症になりやすく、熱中症になる可能性が高くなります。
理由①妊娠すると基礎代謝が上がり汗をかきやすい
妊娠すると基礎代謝が上がります。基礎代謝とは何もしなくても消費するエネルギーのことです。
妊娠後半までには基礎代謝は普段より10〜20%ほど増加します。
普段よりエネルギーを必要とし汗をかきやすく、水分や塩分も失われやすくなります。
理由②つわりで思うように水分が取れない
特に妊娠初期はつわりで十分に食事や水分を取れないケースが多くあります。
さらに嘔吐(おうと)を繰り返すと、より水分やビタミン、ミネラルが不足し脱水症になりやすく、熱中症のリスクも高まります。
ママの熱中症、おなかの赤ちゃんへの影響は?
ママが熱中症になり脱水症を起こすと、体の赤ちゃんへ送られる血液量も不足してしまいます。おなかの赤ちゃんの発育にも影響を与えるため注意が必要です。
熱中症の症状は?
熱中症の初期の状態は脱水症になることです。
体の中の水分が減り汗が出なくなると、熱が体にこもり熱中症が悪化します。
症状が進行すると生命に関わることもあります。
熱中症の症状は重症度によって以下のように3段階に分かれます。
応急処置が必要(Ⅰ度)
以下のような症状では、涼しいところに移動し体を冷やす、水分や塩分を補給するなどの応急処置が必要です。
めまい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉痛、こむら返り、意識はある
受診が必要(Ⅱ度)
以下のような症状では、応急処置だけでなく医療機関を受診する必要があります。
頭痛、嘔吐、体に力が入らない、だるい、集中力や判断力の低下
入院(Ⅲ度)
以下のような症状では入院し、経過を観察する必要があります。
意識がはっきりしない、けいれん、高体温など
妊娠中のママは症状を見逃しやすい?
妊娠中のママは、つわりの症状やそのほかのマイナートラブルと似ていることもあり、熱中症の症状を見逃しやすくなる可能性があります。
体調が悪いときは我慢しすぎずに医師に相談するようにしましょう。
熱中症かもしれないと思ったら?
もし熱中症になったかもしれないと思ったときには進行を防ぐため、すぐに対応を始める必要があります。
涼しい場所に移動し休む
風通しのよい場所や日陰、冷房の効いている場所など涼しい場所に移動します。
水分、塩分の補給
脱水症では水分だけでなく塩分などの電解質も失われています。経口補水液や麦茶などを飲みましょう。
ただし意識がはっきりせず、自力で飲めないときはすぐに救急車を呼ぶ必要があります。
体を冷やす
首の付け根や脇の下、足の付け根など太い血管が通っている場所を保冷剤や、濡らしたタオル、購入したペットボトルなどで冷やします。
医療機関を受診
自分自身で上手く飲めない場合や、症状が進行している場合には、点滴など医療機関で治療する必要があります。
参考:環境省:熱中症を疑ったときには何をするべきか (2021年4月28日閲覧)
熱中症の対応:FIRSTとは?
熱中症の症状が見られた場合の対応として東京都医師会ではFIRST(ファースト)という方法が推奨されています。
・F フルード(Fluid):水分を補給
・ I アイス(Ice):体を冷やす
・R レスト(Rest):休む
・S サイン(Sign):様子を見る
・T トリートメント(Treatment):医療機関で治療を受ける
参考:公益社団法人 東京都医師会https://www.tokyo.med.or.jp/citizen/heatstroke (2021年4月28日閲覧)
ママができる熱中症の予防法は?
熱中症を予防するために、普段からできることをご紹介します。
こまめに水分を取る
軽い脱水の状態では、喉の渇きを感じないケースもあります。
喉が乾いたと感じる前から、水分を補給しておくことをおすすめします。
ただしスポーツドリンクは糖分が多く含まれているものがあります。妊娠中のママは血糖値が上がりやすくなるため、毎日多量に飲みすぎると「妊娠糖尿病」を引き起こす可能性があります。
ミネラルを含んでいる麦茶や、経口補水液などを利用するほうがよいでしょう。
大人では1日に食事以外にとる水分を1.2L程度と推奨されていますが、妊娠中は全身をめぐる血液量が増え、水分量がさらに必要となります。1.5L程度を目安としてもよいでしょう。
つわりのときの対応
つわり中のママは、水を口にするだけで気分が悪くなってしまう場合もあります。
そのようなときはママが少しでも飲みやすいもの、炭酸水などを飲んでもよいでしょう。
ただしあまりにもつわりがひどいケースでは無理をせず、医師に相談しましょう。
脱水症の進行のほかビタミンB1が不足し、「ウェルニッケ脳症」という脳神経へ影響が出てしまう症状が起こることもあります。
水分やビタミンを点滴で補給する必要があるので、医師や助産師に相談してください。
重症なつわり、「妊娠悪阻」については以下の動画、記事も参考にしてください。
暑さを我慢しない
暑さを我慢して過ごすのはやめましょう。暑い日、日差しの強い時間帯に長時間外出するのは控えたほうが安心です。日中の外出の際には、帽子や日傘などを使用しましょう。
熱中症になるのは外だけでなく、自宅での発症も多いとされています。
風通しのよい部屋で、涼しい服装をして過ごすようにしましょう。
夜もエアコンをかけて過ごすなど、室内の環境も意識できるようにすることが大切です。
日頃から体調に気を遣う
熱中症の発症にはその日の体調も関係します。
日頃から体調を意識するようにしましよう。
体調が悪いときには、仕事や家事を休むようにするなど無理をしないことが大切です。
まとめ
妊娠中は体調が悪くても、「妊娠によるもの」と我慢してしまうママも多いかもしれません。熱中症による症状や注意点についても、ぜひ知っておいてください。
ただし必要以上に心配する必要はありません。
体調が悪いときは外出を控えたり、水分補給を忘れないようにしたりして、暑い季節を無理せずに乗り切りたいですね。
子どもの熱中症に関しては以下の記事も参考にしてください。
参考:
厚生労働省 令和2年度の熱中症の予防行動について
https://www.mhlw.go.jp/content/000633494.pdf(2021年4月28日閲覧)
職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた妊娠中の女性労働者等への配慮について要請しました
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10656.html(2021年4月28日閲覧)
「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイントをまとめました
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_coronanettyuu.html
(2021年4月28日閲覧)
熱中症診療ガイドライン2015
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/heatstroke2015.pdf (2021年4月28日閲覧)
環境省 熱中症予防情報サイト
(2021年4月28日閲覧)
谷口英喜『「脱水症」と「経口補水液」のすべてがわかる本』、日本医療企画、2018年
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