【医師監修】生理痛はあるのに生理がこない!妊娠かどうか判断する方法は?
生理(月経)痛とは?
子宮が収縮するときの痛み
女性の生理は、毎月卵巣から排卵された卵子が受精し、着床(妊娠)しなかった場合に、次の妊娠に向け、古くなった子宮内膜を体外に排出するために起こります。
生理痛の原因は、血管がけいれんして収縮することにより、子宮の内側の膜(=子宮内膜:しきゅうないまく)が脱落してはがれ、それをそとに押し出すために、子宮が収縮することでおこります。痛みの程度や持続期間には個人差があります。
排卵痛との違いは?
排卵痛とは、排卵時に起こる痛みといわれていて、チクチクするような痛みや下腹部の重たい感覚や違和感など、痛みの感じ方に個人差があり、排卵痛を全く感じない人も多くいます。下腹部が痛む場合、子宮そのものではなく、両側またはどちらかの卵巣、そしてその周囲の内臓を覆う膜(=腹膜:ふくまく)が刺激されることによりおこります。
痛みがあったとしても、排卵前後2、3日で落ち着く方がほとんどです。排卵痛について詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。
生理痛はあるのに生理がこない!妊娠との区別は?
妊娠初期と生理痛や生理のときの症状は区別しにくい
生理痛はあるのに生理がこない=妊娠とは限りませんが、妊娠の心当たりがあるかどうかで異なります。
妊娠初期には、生理前や生理のときと同じような症状が多くみられます。
- 下腹部痛、腰痛、頭痛
- 眠気、吐き気
- おなかの張り感、便秘、下痢
- 生理ほどではない少量の出血
などのような症状が出ることがあり、「いつもの生理前後の症状だ」と妊娠に気がつかないこともあるようです。
妊娠の可能性がある場合は妊娠検査薬や産院で検査を
生理痛の症状と妊娠によって起こる症状は似ていて、判別が難しいと思います。
普段から基礎体温や生理周期を確認していて、妊娠に心当たりがある場合には産院で検査をしたほうがよいでしょう。いきなり産院にいくのが不安な場合は、妊娠検査薬を試してみましょう。
妊娠検査薬は、生理予定日ごろから、陽性になります。
一度陰性となった場合でも、数日したらまた検査したほうがよいです。妊娠検査薬は尿による検査のため、偽陰性になることもありますし、排卵の時期がずれていて陽性になるのが遅い場合もあるからです。
妊娠検査薬についてはこちらの記事を参考にしてみてください。
いつもより痛みがひどい場合は産婦人科クリニックで検査を
生理の症状は、その時期や原因、年齢などによってかなり個人差があります。いつもより明らかに痛い、経血量が多い、気分不快などにより日常生活や仕事に支障が出る場合には、「月経困難症(げっけいこんなんしょう)」の可能性も考えられます。生理にともなう症状は、単回で終わらないこともしばしば。我慢せず、産婦人科を受診し、検査を受けてみるとよいでしょう。
妊娠の可能性に関わらず、子宮や体からのSOSの可能性を見逃さないようにしましょう。
妊娠の心当たりがない場合
妊娠に心当たりがないのに、生理がこない、きても明らかに遅れているなどの場合には、次の可能性が考えられます。
生理不順の可能性
生理不順は医学的に「月経不順(げっけいふじゅん)」といわれます。
生理周期(一般的に正常周期は25〜38日以内で、上限は38~45日周期といわれている)が乱れている状態を指し、睡眠不足や疲労、ストレスなどによるホルモンバランスの乱れから生理周期は容易に乱れます。
【生理不順の要因】
- 睡眠不足や疲労
- ストレスなどによるホルモンバランスの乱れ
- 無排卵の場合
- 卵巣の働きが未熟
- 更年期に差し掛かっている
- 子宮の病気
- 甲状腺や下垂体など内分泌疾患
など。
生理不順は、子宮に何らかの病気があるサインの可能性もあります。その場合は異常に周期が長かったり、短かったりすることがあります。特に、性成熟期といわれる20代~40代の頃にみられる場合は、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)や子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)などの恐れもあり、注意が必要です。
子宮の病気の可能性
生理痛があるのに生理がこないとき、多少の遅れなら「生理不順」の可能性もありますが、生理以外のときにも生理のときのような痛みがある場合、その痛みは骨盤痛と称され、子宮の何らかの異常を知らせるサインであるかもしれません。
たとえば「子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)」や「子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)」は性成熟期といわれる20代~40代の頃に見られることも多く、生理痛のような痛みが強く出たりすることがあります。
それぞれどのような症状があるのかなど、詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。
受診の目安
いつもと生理の間隔が違うなと感じたり、生理痛の痛みや症状がひどい、辛いと感じる場合は 前回の生理と、前々回、そして半年前、一年前の生理とさかのぼって自分の状況を比較してみましょう。そのうえで一度医師に相談してみてもよいでしょう。
生理ほどではないが少量の出血がある場合
普段の生理よりも経血の量が少ないが、出血が見られた場合には、次の可能性が考えられます。
妊娠の可能性がある人は検査を。「着床出血」の可能性
「着床出血(ちゃくしょうしゅっけつ)」といって正常な妊娠の場合でも少量の出血が出ることがあります。全妊娠の8~25%にみられるといわれています。
月経開始予定日ごろに、数日ほど少量の出血や茶色いおりものが続き、あまり痛みは強くないことがおおいです。妊娠確認後もときに少量の出血が続くことがありますが、胎児(胎芽)の発育が確認されれば、問題ないので経過を見ます。
ただ、子宮に異常がある場合の出血との区別が難しいため、妊娠に心当たりがある場合は早めに産婦人科クリニックでで検査しましょう。
妊娠の心当たりがない場合
妊娠の可能性がなくても、ストレスやホルモンバランスの乱れから、無排卵性の生理、子宮内膜の癒着や子宮の発育不全なども、少量の出血で生理が終わることもあります。
痛みや気分不快などがつらければ、安静にして、しっかり休息を取ることで症状が改善することもあります。しかし、少量でも出血が続いている、腹痛がともなっている、何度も同じような症状がある場合には、早めに婦人科に相談しましょう。
生理がこないことを放置しない!
それまで生理がきていたのに、生理がこないということは、無排卵性の生理不順や子宮に何らかの異常があることもあります。そのまま放置しておくことで、病状が進行する可能性があり、不妊症の原因になることも。
生理痛があるのに生理がこないとき、妊娠の可能性があるならば早めに検査を行い、妊娠の可能性がない場合は、自分の生理周期の乱れで心当たりがないか考えてみましょう。
生理がきていなくても、生理痛がひどい場合や不安な場合は、一度産婦人科を受診してみましょう。
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妊娠に心当たりがある場合に、生理のときと同じような症状が見られるので、受診に迷うかもしれませんが、いずれにしても心配なときは一度産婦人科を受診してみましょう。
参考
・『NEWエッセンシャル 産科学・婦人科学』第3版、医歯薬出版、2004年
・女性の健康週間委員会、『最新版 女性の医学大全科主婦の友新実用BOOKS』、主婦の友社、 2010年
写真提供:ゲッティイメージズ
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