【医師監修】妊娠後期の気になるむくみ|原因や対処法について
妊娠後期にむくみやすい理由は?
妊娠後期にむくみやすくなる原因はいくつかあります。むくみは医学的には「浮腫(ふしゅ)」と呼び、皮下組織(皮膚の下部)に水分が溜まって膨れた状態をいいます。一見肥満と似ていますが、膨れている部分を10秒以上指で強く押して、へこみができればむくみ、できなければ肥満によるものです。いくつかあるむくみの原因についてみてみましょう。
ホルモンの影響
妊娠中には体に水分を溜めるためのホルモンが多く分泌されるようになっています。多く分泌されるホルモンの影響により、むくみやすくなります。
子宮による血流の圧迫
妊娠後期には子宮が大きくなり太い静脈を圧迫し、脚から心臓へ血液が戻りにくくなります。そのため脚の静脈から周囲の組織に水分がしみ出しやすくなり、むくみが現れやすくなります。妊娠中のむくみは、健康な妊婦さんの約80%に起こる症状で、妊娠による生理的な変化のひとつです。
血液量増加
特にむくみやすい時期が、妊娠中期(妊娠14週~27週)から妊娠後期(妊娠28週以降)にかけてです。この頃は、循環血液量(体をめぐる血液の量)が増加する時期で、妊娠30週以降は妊娠前に比べて30~40%増加します。そのため、水分が多く薄まった血液中から水分がもれ、皮下組織に溜まり、むくみが生じます。
よくむくみが出る部位
妊娠中のむくみは脚に現れる場合が多く、妊婦健診では、脚のすねを押したときのへこみ具合からむくみの有無や状態を診断します。手や顔まで、むくみが広がっていくこともあります。
むくみと体重増加の関係はある?
妊娠中、過度に偏った食事になると、塩分のとりすぎや、体重の増えすぎにつながることも。過剰な塩分摂取や体重の増えすぎにより、むくみが起きやすくなります。逆に、むくみが起こることによって体重が増加することもあります。
妊娠前に標準的な体型だった妊婦の場合、妊娠全期間を通しての体重増加目安量は 10~15㎏、妊娠中期から後期の1週間当たりの体重増加量は0.3~0.5㎏がよいとされています。
妊娠前のBMI (体重(kg) ÷ 身長(m)2)が18.5未満であれば12-15kg、18.5以上25未満であれば10-13kg、25以上30未満であれば7-10kg、30以上は5kg以内が目安とされています。
妊娠中の食事や塩分量、妊娠中の体重増加について詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。
むくみの解消方法は?
むくみを解消する方法にはどんなものがあるのでしょうか?いくつかの解消方法をみてみましょう。
塩分控えめの食事
食事での塩分のとりすぎに注意しましょう。塩分(塩化ナトリウム)は体内で塩化物イオンとナトリウムイオンに変わります。特にナトリウムは水分を吸収する性質があるため、塩分を過剰に摂取するとむくみやすくなります。
塩分のとりすぎは高血圧の原因にもなります。厚生労働省が目安として定める、妊婦さんの1日における塩分摂取量は6.5g未満です。妊娠中は特に、だしや香辛料をうまく使い、薄味を心がけ塩分を控えめにした食事をとるとよいでしょう。
塩分を排出する働きをするカリウムをとるのも効果的です。カリウムを多く含む食品には、次のようなものがあります。
- 果物(バナナ、夏みかん、メロンなど)
- 野菜・いも類(里芋、カボチャ、ニラ、切り干し大根など)
- 肉・魚(刺身には特に多い)
- 海藻類(とろろ昆布、乾燥ひじき)など
むくみがつらいときの食事や、塩分控えめのレシピ、妊娠中の食事について詳しくはこちらを参考にしてください。
マッサージ
脚のむくみの解消には、マッサージを行うのもよいでしょう。血行がよくなっている入浴後に、手のひら全体でふくらはぎをこすったり、くるぶしを持ち上げて手のひら全体でふくらはぎをもんだりするとすっきりします。
こんなむくみ解消方法も!
- 着圧ソックスをはく
着圧ソックスは、脚を適切に圧迫して心臓に血液を送り出す働きを助け、むくみを改善する効果が期待できます。ただし、あまり圧の高いものはお勧めしません。妊娠後期でおなかが大きくなり履きづらい場合は、あぐらのような姿勢や椅子に座るなどして履くか、ほかの人に履かせてもらうのがよいでしょう。
- 脚の位置を高くする
脚の位置を高くして頻繁に休息をとるようにしてみましょう。
- ゆったりとした服
スキニーパンツやタイツ、ストッキングなど、脚の血流を妨げる可能性のある衣服は避け、締め付けの少ないゆったりとした服を着るのがおすすめです。
- 適度な運動
適度に運動すると、血流がよくなってむくみの改善につながります。医師の指導のもと、軽い散歩やストレッチなどで、気分をリフレッシュしましょう。
こんなむくみに注意
まれに、病気が原因で妊娠中にむくみが生じることがあります。
むくみがあり、血圧が高い
むくみがあることが必ずしも病気に直結するわけではありません。しかし、むくみに加えて、血圧が高い、タンパク尿が認められるという場合には「妊娠高血圧症候群」が疑われます。おなかの赤ちゃんに影響する可能性があるため、気になる症状があれば医師の診察を受けましょう。
息切れ、咳、全身のむくみなど
脚だけでなく全身のあちこちにむくみがある、軽い運動をしただけでも息切れする、咳が出たり息を吐くとゼイゼイと雑音がする、などの症状があるときには、頻度は低いですが妊娠によって心機能が低下して心不全を発症する「周産期心筋症」の可能性があります。
全身に十分な血液が供給できなくなり、ママも赤ちゃんも酸欠になっている危険な状態です。該当する症状がある場合には、早めに受診しましょう。
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妊娠後期のむくみの多くは、ホルモンの影響や大きくなったおなかによる血流の圧迫が原因です。食事に気をつけ、マッサージや適度な運動でむくみを解消して快適な妊娠生活を送りたいですね。まれに、むくみが病気のサインとなっていることもあります。気になる症状があるときには、医師の診察を受けましょう。
参考:
「妊娠中の体重増加指導の目安について 」(一般社団法人日本周産期・新生児医学会)
「『妊産婦のための食生活指針』改訂の概要(2021年3月) 」(厚生労働省)
「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~解説要領 」(厚生労働省)
「周産期心筋症 」(国立循環器病研究センター)
・医療情報科学研究所(編)、『病気がみえる vol.10 産科 第4版』、株式会社メディックメディア、2018年
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写真提供:ゲッティイメージズ
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