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妊娠後期の頭痛の原因は?薬は飲んでもいいの?

【医師監修】妊娠後期の頭痛の原因は?薬は飲んでもいいの?

妊娠中のママを悩ませる不快症状の一つが、頭痛です。妊娠後期にも起こる場合があり、心配になるママもいることでしょう。この記事では妊娠後期の頭痛の原因や、注意が必要なケースについてお伝えします。
妊娠中のママを悩ませる不快症状の一つが、頭痛です。妊娠後期にも起こる場合があり、心配になるママもいることでしょう。この記事では妊娠後期の頭痛の原因や、注意が必要なケースについてお伝えします。

頭痛とは?

誰にでも起こりうる一般的な症状の頭痛は、医学的には「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に分けられています。

一次性頭痛とは

一次性頭痛とは 頭痛という症状が中心にあり、原因は不明です。頭痛の特徴から大きく、「片頭痛(へんずつう)」や「緊張型頭痛」、「三叉神経・自律神経性頭痛」などに分類されます。治療は頭痛そのものの改善となり、頭痛薬、片頭痛薬などが使用されます。

それに対して明らかな病気があってそのために起こる頭痛は二次性頭痛とよばれます。治療はもとにある病気の治療を行うことが必要です。

そのほか一次性頭痛には、咳こみ、運動や性行為、冷たいものの刺激で起きる頭痛なども含まれます。

治療はこのような頭痛が起きるきっかけを取り除き、自分のコンディションをよい状態に保つことで改善が期待されることがあります。薬に頼らず、生活習慣を変えることなどで改善することも期待できます。

二次性頭痛とは

原因がありその症状の一つとして起こる頭痛は 二次性頭痛に分類されます。頭痛に対しての治療ではなく、もとになる病気をはっきりさせて、その治療を行う必要があります。

たとえば頭部に外傷・傷害を受けたことによる頭痛や、頭や首(頭頸部)の血管障害によるもの、歯・耳・目・口など顔面に問題があって起きる頭痛などがあります。

高血圧や、脳の動脈がこぶのように膨れたり(脳動脈瘤)(※)、膨れたこぶが破裂すること(くも膜下出血)による脳出血などで 頭痛が先行する症状となることはよく知られています。

※脳動脈瘤:脳の動脈がこぶのように膨らんでいることを脳動脈瘤という。成人の未破裂動脈瘤の頻度は大きさの小さいものまで含めると2〜6%と報告されている。すべてが破裂するわけではないことも知られている。

もちろんこの分類はいつもはっきりと分けられるわけではありません。

もともと片頭痛もちの人が頭痛がひどくなり受診したところ、何らかの血管の病気が見つかったなどということがあります。

一次性頭痛とばかり思いこんでいて、実は二次性の頭痛であったのに、自己判断で受診をせず放っておくと一大事となってしまうことがありえます。

頭痛は、症状の特徴や頭痛以外に伴う症状を見ながら、複合的な要因がないかどうか気を付ける必要があるのです。

脳出血と、くも膜下出血

よく聞くことのある以下の言葉は 決して年齢の高い人だけに起こるわけではない病気です。

・脳出血

脳出血は、脳の血管が破れて、脳の中に血液が流れ出ることです。

妊娠高血圧症候群により血圧が上昇したり、分娩時のいきみなどで血管に負担がかかり、脳出血が起こったとされる報告があります。脳動静脈奇形、もやもや病が原因となっているケースもあるとされています。

※脳動静脈奇形:脳の中の血管の毛細血管を介さない血管走行の異常で血管のかたまりとなったような状態。原因ははっきりせず生まれつき(先天性)のことが多い。

※もやもや病:脳血管の一部がせまくなったり、塞がったりする病気で生まれつきのものです。塞がった血管を補うよう、ほかに細い血管が発達する。検査をすると細い血管が煙のようにもやもやとして見える。

・くも膜下出血

くも膜下出血は、脳の表面を覆っている「くも膜」と「脳」の間にある「くも膜下腔」という場所へ出血する病気です。原因として、脳動脈瘤の破裂が多いとされています。

一次性頭痛、二次性頭痛については以下の記事も参考にしてみてください。

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それでは もう少し妊娠に関わる頭痛についてご説明しましょう。

妊娠期と頭痛

妊娠中には、脱水症、貧血、妊娠高血圧症候群といった状態が頭痛に影響することがあります。ママとおなかの赤ちゃんへの影響があるので、医療機関を受診して治療をしましょう。

脱水症

つわりの症状は妊娠5〜6週頃から現れ、妊娠16週頃までにはおさまることが多いのが特徴です。ただしつわりの程度や期間には個人差があり、妊娠後期にまで及ぶママもいます。

脱水症になり、体の水分が不足すると、脳への血流も少なくなります。めまいや立ちくらみ、頭痛などが生じることもあります。

つわりが重症化する、妊娠悪阻については以下の動画も参考にしてください。

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臨月に起こる吐き気については以下の記事も参考にしてください。

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貧血

貧血とは、血液中のヘモグロビン(※)が少なくなることをいいます。ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶはたらきをしています。

妊娠中はママの体をめぐる血液の量が増えますが、特に増えるのが水分量です。ヘモグロビンなどの成分は水分ほど増えないため、ママの血液は薄くなった状態です。

ママの血液中の鉄分はおなかの赤ちゃんに送られるため、妊娠後期になるとこれまで以上にママは鉄分が不足し貧血になりやすくなります。貧血になると酸素を全身に運べず、脳への酸素が不足して頭痛が生じることがあります。

※ヘモグロビン:赤血球に含まれる成分の一つ。鉄分はヘモグロビンを作るのに必要。

詳しい妊娠後期の貧血は以下の記事も参考にしてみてください。

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血液検査で判定。食事の工夫や鉄剤の服用で改善します。

妊娠高血圧症候群

妊娠20週から分娩後12週までの期間に高血圧がみられた場合を、妊娠高血圧症候群といいます。妊娠後期に発症しやすく、高血圧のほかたんぱく尿がでることもあります。

妊娠を継続するのが大変過ぎてママの体が悲鳴を上げている状態です。結果として、血圧上昇(心血管・循環器障害)、たんぱく尿(腎機能障害)、ほかにも肝臓や肺への負担などが起きてきます。ママの体のさまざまな臓器に障害を起こし、ママと赤ちゃんをつなぐ胎盤がはがれたり、おなかの赤ちゃんの発育にも影響する病気です。

血圧が高いときの症状の一つとして頭痛がでることがあります。妊娠中に頭痛が起きたら、まず血圧が上昇していないかどうか、血圧測定を行いましょう。

すでに妊娠高血圧症候群と診断されているママは 頭痛が起きたら妊娠高血圧症候群が悪化したり、関連する病態を発症したのではないか、医療機関へ連絡する必要があります。

詳しい妊娠高血圧症候群については以下の記事も参考にしてください。

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妊娠高血圧症候群はママと赤ちゃんの生命にかかわる重大な病気で、かつては妊娠中毒症と呼ばれていました。誰でもかかる可能性がある病気ですが、どのような症状やリスクが伴うのでしょうか。今回は妊娠高血圧症候群についてお伝えします。

そのほかの原因

副鼻腔炎(蓄膿症)や虫歯(う歯)、歯周病、慢性中耳炎、かみ合わせの不具合(不正咬合/ふせいこうごう)・顎関節症などをそのままにしていませんか?

このような病気も知らないうちに頭痛の原因となっていることがあります。

妊娠に直接関連しない頭痛

妊娠中の時期を問わず、いわゆる頭痛(一次性頭痛)は起こることがあります。いつも以上にセルフケアをして頭痛が起こらないよう、または起きる回数を減らして快適に過ごせるよう定期的な診察(メインテナンス)をこころがけましょう。

代表的な一次性頭痛である片頭痛と緊張型頭痛は以下です。

片頭痛

片側または両側のこめかみあたりに、脈を打つような強い頭痛を片頭痛といいます。

吐き気をともなったり、光や音に敏感になったりするのが特徴です。

片頭痛は、睡眠中や寝起きに起こる場合もあります。

片頭痛薬については、妊娠中の服薬はのぞましくありません。

緊張型頭痛

緊張型頭痛とは、運動不足や心身のストレスにより、頭周りや首、肩、背中にかけての筋肉が緊張し、血流が悪くなるために起こる頭痛です。後頭部を中心に、頭の横側や首筋にかけて、締めつけられるような痛みが生じます。片頭痛と同じく、若い女性によくみられます。

妊娠中の頭痛、薬を飲んでもいい?

鎮痛剤の中には、赤ちゃんに影響を与える成分を含むものがあります。

また、頭痛には何らかの病気が隠れていて早めに治療が必要なケースもあります。

安静にして休んでも頭痛が落ち着かないときには、かかりつけの産婦人科を受診しましょう。自己判断で市販薬を購入・服用するのは避けたほうが安心です。

産婦人科医・大柴先生からのひとこと

いつもの頭痛に実は自分が知らなかっただけ、というような病気が隠れているかもしれない、ということを少しだけ頭の片隅に置いておいてください。

血圧が上がっていないか、いつもの頭痛と同じかどうか、頭痛以外の体の症状がないか、自分で自分をチェックし、気を付けることが大事です。

_______

妊娠後期に頭痛が起こると、不安になってしまいますよね。

原因を知っておくことで、落ち着いて対処できる可能性があります。

いつもと違う頭痛や、症状が改善しないときには我慢せず受診するようにしましょう。

参考:

・武谷雄二・上妻志郎・藤井知行・大須賀穰(監修)、「プリンシプル産科婦人科学 第3版②産科編」、メジカルビュー社、2014年

P107、P341

・医療情報科学研究所(編)、『病気がみえる vol.10 産科 第4版』、メディックメディア、2018年

・『PERINATAL CARE(ペリネイタルケア )』、メディカ出版、2016年8月号

・「『妊娠・授乳と薬』対応基本手引き(改訂 2 版)2012 年 12 月改訂 」(平成24年12月、社団法人 愛知県薬剤師会 妊婦・授乳婦医薬品適正使用推進研究班 発行)

(2021年3月閲覧)

・「国際頭痛分類 第3版 beta版 」(日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会)(2021年3月23日閲覧)

・「脳卒中対策の最新情報(Ⅳ)その他の脳血管障害(2)脳静脈・静脈洞血栓症 」(ドクターサロン64巻7月号(6. 2020))(2021年3月23日閲覧)

・国立がん研究センター がん情報サービス「貧血

(2021年3月23日閲覧)

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写真提供:ゲッティイメージズ

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