小児科医・高橋孝雄先生が伝える「最高の子育て」⑦
「共感力」「意思決定力」「自己肯定感」3つのチカラが子どもをしあわせに導きます。
子どもにしあわせな人生を歩んでもらいたい。親なら、誰もがそう願うものです。そのために授けたいことは、誰かの気持ちに寄り添える「共感力」、あらゆるシーンで自分のことを自分で決める「意思決定力」。さらに、生まれてきてよかった、自分は自分でいい、と感じる「自己肯定感」の3つ。ひとのしあわせを守る、三つの勾玉のようなものです。これらがあれば、子どもたちはどんな苦境にも、さまざまな困難にも立ち向かっていけるだろうと思います。
「共感力」は「あの人、共感力があるな」と、相手にも感じ取りやすく、だれかを幸せにできる素敵なチカラです。「うちの子、成績はぱっとしないけれど、友だち思いで、共感力が高いかも」「もう少しお友だちのこと、自分のことのように考えてほしい。あの子はまだまだ共感力、育っていないのかな」と感じることはありませんか。さらに、自分でも実感しやすいものです。「あの人の考え、共感できるな……」という場面もしばしばあるでしょう。
「意思決定力」は文字通り、自分で考えを決めるチカラ。結果や成果にあらわれることが多いため、自覚しやすいチカラです。「やり遂げた! 自分で決めてよかった」「失敗したけど、自分で決めたのだから悔いはない」「いいと思ったのに失敗だったな。今度は別のやりかたにしよう」など。子どもが達成感を味わうためにはなくてはならないチカラです。また、はたからも見えやすいチカラです。「わがままで困ったと思うことも多いけど、自信をもって決められるところはすごいな」「日常のささいなことでも、うちの子はなかなか決められないみたいだな」などと思うことはありませんか。
「自己肯定感」は、もっとも主観的なものです。ひとと比べたり、評価したり、数値化することはできません。3つのチカラの中でも唯一、〝力〞ではなく〝感〞と表記されます。自尊感情と呼ぶこともあるようです。英語でも同じニュアンスをもって、セルフエスティームと表現されます。
たとえば、共感力や意思決定力を持っていたとしても、ほんとうに自己肯定感の高い状態にあるのか、自己肯定感にあふれた人生をおくっているのかは、本人にもわからないのかもしれません。ましてや、はたからただ見ているだけでは感じ取ることはできなくてあたりまえ。子どもの自己肯定感を、親はどのように感じ、汲んであげればよいのでしょうか。
「生まれてきて良かった」
そんな感覚が、自分の自己肯定感を感じ取っている瞬間なのかもしれません。
共感力と意思決定力が、育児環境や教育環境によって育まれていく部分が大きいのに対して、「自己肯定感は生まれつき遺伝子に組みこまれているのではないか」と。ぼくはそんなふうに感じています。
写真提供:ゲッティイメージズ
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