【専門家監修】男性も育休を取れます!法改正で何が変わるの?
男性の育休取得率は13%
厚生労働省が2021年7月に発表した「令和2年度雇用均等基本調査」によると、育休の取得率は次のとおりでした(*)。
〈育休取得率〉
- 男性:13%
- 女性:82%
女性は8割超が育休を取っているのに対し、男性は1割強しか取っていません。
ただし、育休取得率の推移をみると男性のほうが急激に増加傾向にあります。
© every, Inc.
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女性の育休取得率は1996年(平成8年)の49.1%から2020年(令和2年)の81.6%へと約1.7倍になっていますが、男性は同じ期間に0.12%から12.65%へと約108倍にもなっています。
男性の育休取得率の元々の数字が低かったとはいえ、これから積極的な育休取得に向けて男性も企業も進んでいるということがいえるのではないでしょうか。
なぜ男性の育休取得は少ないのか
男性の育休取得率が急上昇しているのは一筋の光といえますが、しかし、女性の育休取得率8割に対して男性の1割は、少ないといわざるをえません。
ではなぜ、男性は育休を取得しないのでしょうか。
その答えを知るには、厚生労働省が令和元年7月に公表した「男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について」という報告書が参考になります(*)。
正社員男性に育休を取得しなかった理由を尋ねたところ、次のような回答が得られました。
〈正社員男性が育休を取得しなかった理由ランキング(複数回答)〉
- 1位:業務が繁忙で職場の人手が不足していた:27.8%
- 2位:会社で育休制度が整備されていなかった:27.5%
- 3位:職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった:25.4%
- 4位:自分にしかできない仕事や担当している仕事があった:19..5%
- 5位:収入を減らしたくなかった:16%
1位と4位は、いずれも「自分が仕事をするしかなかったから」という理由になり、合わせると48%にもなります。
2位と3位は、いずれも「会社の事情」になり、合わせると53%になります。
男性が育休を取得できない最大の理由は、会社の事情、と考えることができそうです。
ただ、5位も見過ごせません。収入を減らしたくなかったので育休を取得しなかったという人が2割近くもいます。
背景には、男性が世帯の収入の柱になっていることがありそうです。
育休を取得すると収入が減るという事実は深刻で、この点のサポートが男性の育休取得率を高めるカギとなるかもしれません。
イクメンプロジェクトとは、両立支援等助成金とは
男性の育休取得率を高めるには、企業と男性の努力だけでは難しいでしょう。そこで政府もイクメンプロジェクト(育児休業取得促進事業)を展開して、男性の育休を支援しています(*)。
イクメンプロジェクトの内容は次のとおりです。
〈政府のイクメンプロジェクトの概要〉
- 男性の育休を勧奨するため、全国的な普及啓発キャンペーンを実施する
- 企業担当者などを対象にしたセミナーを開催したり、職場内研修用の資料などの周知広報を行う
- イクメンを応援する企業や人などを表彰する
イクメンプロジェクトのほかに両立支援等助成金という制度もあります。
これは、育児休業や育児目的休暇を取得した男性労働者が生じた事業主に支給する制度で、企業にお金を渡しているところがポイントです。
両立支援等助成金はさまざまなコースがありますが、男性の育休促進に関わる出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)の内容は以下のとおりです。
〈両立支援等助成金の出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)の概要〉
- 男性労働者が、子どもの出生後8週間以内に、14日以上(中小企業は5日以上)の育休を取得した場合に助成金を支給する
- 企業に支給する助成金の額は、1人目の育休取得で285,000~720,000円。中小企業か否か、生産性要件を満たしたか否かで額が変わる
育休の期間「原則1歳まで」
ここで、そもそも育休とは何なのかを紹介します。ここでは、男女に関係なく、育休全体の仕組みを解説します。
育休とは、子どもが産まれて、その育児のために休業することを希望する労働者に、事業主が休みを与える仕組みです。育休の取得タイミングは、原則は子どもが1歳になるまでの期間になりますが、例外があります。
育休の延長については以下の記事でも詳しく解説しています。
パパ・ママ育休プラスなら1歳2ヶ月まで
育休の例外の1つが、パパ・ママ育休プラスです(*)。
両親共稼ぎで、ママもパパも育休を取得するとき、子どもが1歳2ヶ月になるまで育休を取得することができます。
たとえば、以下のように育休を取ることができます。
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この事例では、子どもが産まれてすぐにママが産休(産後休業)に入ります。ママ(女性)の場合は、子どもが産まれたあとも8週間は育休ではなく産休として扱われます。
そしてママは、産休明けにそのまま育休に入ります。
ママの育休の途中で、パパも育休に入ります。
通常は、子どもが1歳まで(1歳未満)で育休は終了しますが、この事例ではママ・パパともに育休を取っているので、パパは子どもが1歳2ヶ月になるまで育休を取得できます。
パパ休暇なら育休を2回取得できる
パパ休暇という仕組みがあり、パパが、母親の産休中(生後8週間以内)に1回目の育休を取得すると、そのあと子どもが1歳になる前に2回目の育休を取得することができます。
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産休中はママの負担が大きくなるので、そのときパパが育休を取れると、ママはとても助かるはずです。それを制度的にサポートするのが、パパ休暇です。
男性の育休取得日数は5日以内が50%台
男性の育休取得率が急上昇しているものの1割台にとどまっていることは先ほど紹介したとおりですが、男性の育休は取得日数も少ないのが現状です。
厚生労働省が発表した資料によると、男性の育休取得日数で最も多かったのは、5日未満で56.9%でした(*)。2位は2週間〜で17.8%です。2つ合わせると74.7%となります。
一方、女性の育休取得日数で最も多いのは10ヶ月〜で、31.1%でした。2位は12ヶ月〜で27.6%でした。2つ合わせると58.7%です。
この内容をまとめるとこのようになります。
- 育休を取得している男性の8割は1ヶ月未満しか取っていない
- 育休を取得している女性の9割は6ヶ月以上取得している
育児・介護休業法の改正で男性の育休はどれくらい取りやすくなるのか
育児・介護休業法が改正され、2022年4月から順次、新制度が導入されます。
そのなかには男性の育休取得を促進する方策も盛り込まれています。
男性はどれくらい、育休が取りやすくなるのでしょうか。
ポイントは次の3点です。
- 産後パパ産休(出生時育児休業)
- 育休の周知・意向確認の義務化
- 育休取得率公表の義務化
1つずつみていきましょう。
産後パパ産休(出生時育児休業)
産後パパ産休(以下、出生時育児休業)は新しい仕組みで、子どもの誕生から8週間以内に育休を取りやすくする内容になっています。
誕生から8週間以内は、女性(ママ)の産休期間です。そのためこの出生時育休は男性版産休と呼ばれることもあります。
出生時育休制度を使えば、子どもの誕生から8週間以内に、4週間までの育休を分割して2回まで取ることができます。
〈出生時育児休業を使った育休の例〉
男性(パパ)はたとえば、次のように育休を取ることができます。
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子どもの誕生から8週間以内では、母親は出産、退院、里帰り出産からの帰宅など大忙しになることがあります。
このときパパが分割して育休(男性版産休)を取れば頼りになります。
パパはそのあと、子どもが1歳になるまでに3回目の育休を取ることができます。
※出生時育児休業は2022年10月から始まる予定です。
育休の周知・意向確認の義務化
育休の周知・意向確認の義務化とは、労働者が会社に妊娠または出産を申し出たとき、会社側がその労働者に個別に育休の取得意向の確認をしなければならないルールです。
たとえば男性労働者が上司や総務部に「近く子どもが産まれます」と申し出た申し出たら、事業主はその男性労働者に個別に育休取得の意向確認をすることになります。
※この制度は2022年4月から始まる予定です。
育休取得率公表の義務化
育休取得率公表の義務は、企業に課されます。
常時雇用する労働者が1,000人を超える企業は、育休の取得率を公表しなければなりません。
これにより男性の育休を推進している企業なのか、そうではない企業なのかが世間に知らされるようになります。
※この制度は2023年4月から始まる予定です
育児休業給付金は男性も対象になっています
これは新制度の話ではなく、既存の制度の話になるのですが、育児休業給付金は、男性も受給できることをご存知でしょうか。
育休を取得すると、企業によっては無給になります。法律は、企業に育休制度を設置するよう求めていますが、育休期間中の給与の支払いまでは求めていません。
無給になると収入が途絶えるので、雇用保険から、収入を補填する目的で育児休業給付金が支給されます(*)。
育児休業給付金は男性も受給することができます。
収入が確保できれば、育休の壁は低くなるはずです。
育児休業給付金の内容は以下のとおりです。
〈育児休業給付金の概要〉
●条件
- 育休終了後に職場復帰する人に給付する(退職を予定している人は対象外)
●受給要件
下記、厚生労働省より引用しています
育児休業給付の受給資格は、育児休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月(※)以上必要となります。
なお、育児休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月(※)ない場合であっても、当該期間中に第1子の育児休業や本人の疾病等がある場合は、受給要件が緩和され、受給要件を満たす場合があります。
(※)育児休業開始日の前日から1か月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日ある月を1か月とする。
有期雇用労働者は、上記問2の要件に加え、育児休業開始時において、同一の事業主の下で1年以上雇用が継続しており、かつ、子が1歳6か月までの間に労働契約が更新されないことが明らかでないことが必要です。
●給付額の計算方法
- 給付額=休業開始時の賃金の日額×支給日数×67%
※支給単位期間の支給日数は、原則として、30日(ただし、育児休業終了日を含む支給単位期間については、その育児休業終了日までの期間)となります。
※育休開始から6ヶ月経過後は「67%」が「50%」になる
●給付額の目安は次のとおり
- 給与が平均して月額15万円の人
→育休開始から6ヶ月間は月約10万円、それ以降は月約75,000円
- 給与が平均して月額20万円の人
→育休開始から6ヶ月間は月約134,000円、それ以降は月約10万円
- 給与が平均して月額30万円の人
→育休開始から6ヶ月間は月約201,000円、それ以降は月約15万円
男性が育休中にやるべきことは
子どもができると、育児に家事に「やること」はたくさんあります。
まずパパが手始めにできることとしてはママに「育児と家事を分担するよ」と声をかけることです。
そして、夫婦で子育て・家事の分担について話し合う会議を開いてもいいでしょう。そのなかで、子育てでやることと家事でやることをすべて書き出して、自分がやることと、ママがやることを決めていきます。
やることをすべて書き出すことが意外に重要で、「こんなにやることがあるのか」という気づきが得られます。
共働き夫婦の家事分担は以下の記事で解説しています。
夫婦家事分担ボードについて、以下の記事で紹介しています。
イクメンが当たり前の時代になるように
育児は楽しくも苦しく、苦しくも楽しいものなので、夫婦が一緒に当たることが望ましいといえます。
育休を取得する権利は、育児・介護休業法によって女性にも男性にも与えられています。せっかくの権利なので、男性もしっかり行使していきましょう。
- 女性に比べて男性の育休取得率は少ない
- 男性の育休取得の推移は上昇傾向にある
- 男性の育休をサポートする制度がいくつかあるので利用しよう
- 2022年4月から順次、育休に関する新制度が導入される
- 育休を利用して育児と家事の分担を積極的に行おう
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