【医師監修】 高齢出産。自然妊娠できる割合は?50代の自然妊娠は?
いわゆる「高齢出産」の定義とは
日本産科婦人科学会では、35歳以上の初めての出産を「高年初産」として定義しています。2人目以上の出産(経産婦)についての定義はありませんが、一般的に、おおむね35歳以上の妊娠、出産は「高年妊娠」や「高齢出産」と呼ばれています。
そして、近年増えているのが超高齢出産(妊娠)と呼ばれる、45歳以上での妊娠・出産です。
平均30.7歳。高齢出産の現状
厚生労働省による令和元年(2019年)のデータでは、第一子を出産した母親の平均年齢が30.7歳でした。30~34歳での出産が最も多く、約36%を占めています。35~39歳は約23%、40~44歳は約6%、そして45歳以上が0.2%です(※1)。
0.2%と聞くと、非常に少ないように感じるかもしれません。しかし、実際の数で見ると、1年間に1649人の女性が45歳を超えて妊娠・出産していることがわかります。45歳以上での出産は増加傾向にあり、中には50歳を超えて出産を迎えるケースもあります。
※1 出典:
「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況>表2 母の年齢(5歳階級)・出生順位別にみた出生数の年次推移」(厚生労働省)より
50代でも自然妊娠できる?
女性は45歳前後になると、毎月月経(生理)があっても、実は排卵がないということも少なくありません。また、日本人は平均するとおよそ50歳頃に閉経を迎えます(※2)。閉経すると、卵巣の機能が停止し、排卵がまったくなくなることになります。排卵がなければ妊娠できないため、閉経を迎える50代での自然妊娠は30代や40代と比べて、自然には厳しいといえるでしょう。
不妊治療を行った場合はどうでしょうか?
不妊治療には、タイミング法や排卵誘発法などのほか、生殖補助医療があります。生殖補助医療は、体外受精や顕微授精など体外で精子と卵子を受精させてできた胚を子宮内に移植する技術です。
2017年のデータでは、これらの生殖補助医療を受けた50歳以上の人は、563治療周期(人数ではなく、治療周期で数えます)あり、その中で妊娠できた例は4周期です。そして、そのうち1例が出産を迎えています。(※3)
※2 出典:「更年期障害」(公益社団法人 日本産婦人科学会)2018年6月16日更新
※3 出典:「ARTデータブック 2017年 PPTX版」(日本産科婦人科学会)
高齢出産、自然妊娠を望む際のリスクや気をつけたいポイント
女性は、年齢を重ねるごとに妊娠する力が下がります。35歳を超えての自然妊娠を望む場合、どのようなことに注意すればいいのか見てみましょう。
自分の体の状態を知る
35歳以上での妊娠・出産を希望する場合、まず一度、産婦人科を受診することです。これは、不妊治療を受けることが目的ではありません。
年齢を重ねることで、女性は婦人科系の疾患、たとえば子宮筋腫や卵巣嚢腫、子宮内膜症などや、糖尿病などの生活習慣病、発症する可能性が高くなります。これらの病気は妊娠・出産に影響することがあるので、まずは妊娠に問題となる要因がないかを病院でチェックしてもらいましょう。
そして、もし妊娠を妨げる要因が見つかった場合には、その要因に対する治療を受けることが必要です。特に排卵障害や子宮の内膜などに異常がある場合は、早期発見し治療を受けることで妊娠の確率が上がることが期待できます。
また35歳以上では乳がんの罹患率が上昇します。女性が罹患するがんの中で乳がんは頻度が高く、注意が必要であり、乳がんの健診も定期的に受けておくとよいでしょう。
毎朝、基礎体温を測定する
妊娠を望んでいるとき、必ず必要になるのが基礎体温の測定です。
基礎体温は、朝、目が覚めた直後のなにもしていない状態、洗面に立つ前の状態での体温のことです。
専用の婦人体温計を使って、舌の下に入れて測ります。測定は、ベッドで横になったままで行い、話したり口を開けたりしないようにしましょう。
測定した体温は基礎体温表に記入していくことで、折れ線グラフができあがります。このグラフを読み取ることで、月経周期がわかり、次回の排卵日を予測できます。
また、このグラフは医師にとって、ホルモンの状態や排卵の有無などを把握するための、非常に大切なデータです。
精度の高い診察や治療には必要なデータですので、受診の際には必ず基礎体温表を持って行きましょう。
基礎体温は、毎朝同じ時間に測らないといけないため、続けるのが難しいという方も少なくありません。 起床時間がずれたり、徹夜だったりした場合にはコメントを残しておくとよいでしょう。
不妊治療を受ける決断は早めに
年齢を重ねるごとに自然妊娠が難しくなるのと同じように、不妊治療による妊娠も年齢が上がるほどほど難しくなります。
これは、卵子の質が低下し、受精しにくくなることが原因です。
不妊治療は、受精までの道のりを助けることはできても、卵子自体を若返らせる方法はありません。治療が早いほど効果が高いです。
まずは、一度医療機関へ相談に行ってみることをおすすめします。
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晩婚化が進む現代では、妊娠を希望したタイミングが35歳を超えるということは珍しくありません。大切なのは、妊娠を希望した段階からどう行動するかです。自然に任せる場合でも、基礎体温を測る習慣を身につけ、1度は産婦人科を受診するようにしましょう。
参考:
・医療情報科学研究所(編)、「病気がみえる vol.10 産科 第4版」、株式会社メディックメディア、2018年
・「プリンシプル産科婦人科学 2 産科編」(株式会社メジカルビュー社)、2014年3月10日刊行
・「日本における超高齢妊婦の妊娠予後を検証」(国立成育医療研究センター)、202年9月閲覧
・「第2回妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会 2019年3月15日 妊産婦の診療の現状と課題 」(日本産科婦人科学会 日本医科大学 中井章人)、202年9月閲覧
・「殖医療Q&A(旧 不妊症Q&A)Q8.不妊症の治療にはどんな方法があり、どのように行うのですか?」(一般社団法人 日本生殖医学会)、202年9月閲覧
・「月経周期の正しい数え方・基礎体温のつけ方」(公益社団法人 日本産科婦人科学会 HUMAN+)
写真提供:ゲッティイメージズ
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