トモニテ
夜泣きする赤ちゃん

【小児科医ママに聞く】Q. 赤ちゃんがどうしても寝てくれません

A. 毎日、なるベく同じ時間に、 眠りやすい環境を整えましょう

 赤ちゃんが寝ないと親が寝不足になります。これは子育ての中でいちばんつらいことのひとつでしょう。

 まず、赤ちゃんは何時間くらい寝るものでしょうか。 下の図は月齢/年齢と睡眠時間との関係を示したグラフです(※1)。生後1か月で最も睡眠時間が短い子は約9時間、長い子は19時間のようです。ずいぶん個人差が大きいですね。

月齢/年齢と睡眠時間の関係

 睡眠時間は、民族や文化による生活習慣に影響されるので、何時間くらい眠るのが適正なのかということには諸説あります。しかも、新生児は昼夜を問わず寝て起きての繰り返しですし、2歳までの子どもは午前中にも寝ますから、それほどリズムが整うわけではありません。そこで私は、お母さんが朝10〜12時に眠気なく元気に活動できるというのが、赤ちゃんの適正な睡眠リズムではないかと考えます。

 ところで睡眠リズムが適正でないと、どうなるでしょう?4〜6歳の睡眠習慣と行動につ いて、次のA群とB群を比較した研究結果があります。

●A群 :B群の条件にひとつもあてはまらない子

●B群 : (1)21時以降に外出することが週2回以上ある、(2)布団に入るのが23時以降になることが週4日以上ある、(3) 外出先からの帰宅が21時以降になることが週3日以上ある、のひとつ以上にあてはまる子。

 その結果、①睡眠時間の長短は結果に影響がない、②B群のほうがA群より問題行動が多い、 ③遅寝遅起き、生活リズムが不規則であることは問題行動につながる、④寝る時間が早く規則正しいほど問題行動が少ない、ということがわかっています(※2)。

 やはり遅寝で不規則な生活だとよくないようです。では、早寝って何時に寝かせることでしょう? 世界17か国で行われた調査によると、日本の子どもの平均就床時刻は21時17分、最も夜更かしなのは香港で22時17分、最も早寝なのはニュージーランドで19時28分だったそうです。日本の子どもの総睡眠時間は11時間37分で最短、最も長く寝ているのはニュージーランドの13時間18分だったそうです(※3)。だから例えば21時に寝かせると香港では「早いね」ってことになり、ニュージーランドだと「遅いね」ということになるわけですね。

赤ちゃんが寝ている様子

 きっと21時頃には寝かせたいと思う人が多いでしょう。でも働くお母さんだったら、例えば19時に保育園に迎えに行って、 晩ごはんやお風呂をすませて......と考えると現実的には難しいですよね。だから生活リズムをどう作るか、どうしたら子どもを快適に寝かせることができるかを考えました。

 新生児の場合、部屋が明るくても暗くても、睡眠と覚醒それぞれが占める時間の割合は変わらないようです。一方、3か月の乳児では、部屋を明るくしておくと、暗いときに比べて入眠に時間がかかるそうです(※4)。 また、子宮内の音をカセットテープに録音して聞かせても、睡眠への影響はないことがわかっています(※5)

 寝具の選び方はどうでしょうか。次の3種類の寝具を比較した研究結果がありました。

●寝具A:掛け布団 :ポリエステル (520g)、敷布団 :ポリエステル

●寝具B :掛け布団 :ウール (900g)、敷布団 :ポリエステルにウールの敷きパッド

●寝具C:掛け布団 : 羽毛 (440g)、敷布団 : ポリエステルでシリカゲル入り敷きパッド

 これらの中で子どもが最もよく眠ったのは、寝具C。掛け布団が軽く、掛け布団も敷き布団もともに通気性がよくて寝具内の湿度が低いからでしょう(※6)。

 ちなみに子どもが夜中に起きるかどうかは、父と母の年齢、母の就業の有無、住居形態、子どもの性別、出生順位、身長、体重、カウプ指数(赤ちゃんの身長と体重のバランス)とはまったく関係がないという研究結果もあります。ただし就寝時刻が不規則だと、夜中に起きる確率が高くなるのだとか(※7)。

 まとめると、早く寝かせることが難しい場合は、いつも同じ時間に部屋を暗くして、通気性のよい寝具に寝かせるようにすると、よく眠ってくれるようです。

※1 Iglowstein et al. Pediatrics. 2003 Feb; 111(2): p302-7

※2 神山潤『日本小児科学会雑誌』vol.115.no12 2011 p1870-1879

※3 Mindell et al. Sleep Med 2010 Mar; 11(3): p274-80

※4 加地はるみ他『日本新生児学会雑誌』vol.22.no3 1986 p586-593

※5 田角勝他(周産期医学』vol.13.no.12, 1983 p1981-1985

※6 赤井由紀子他『医学と生物学』vol.153.no11 2009 p532-538

※7 羽山順子他『日本公衆衛生雑誌』vol.54.no7 2007 p440-446

夜中に起きる

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