【医師監修】母乳には栄養がたっぷり!母乳のメリットと授乳中の注意点
母乳のメリットは?
母乳は、ママと赤ちゃんにとってさまざまなメリットがあります。母乳にはどんなメリットがあるのか、くわしく見てみましょう。
ママへのメリット
赤ちゃんのために毎日授乳を頑張っているママ。新生児の頃には、1日に10回前後授乳が必要になることもあり、昼夜を問わない授乳に疲れ果ててしまうママもいることでしょう。
しかし、母乳は赤ちゃんに栄養を与えられるだけでなく、母乳をあげるママの心身にプラスの効果をもたらします。
■産後の子宮の回復を促す
妊娠によって大きくなった子宮は、産後に元の大きさに戻るために収縮します。その収縮によって起こる下腹の痛みを「後陣痛(こうじんつう)」と呼びます。
授乳中に分泌されるオキシトシンというホルモンは、母乳の分泌を促す効果のほか、子宮収縮を促す働きも持っています。
授乳中に後陣痛が強くなるのは、オキシトシンの効果によるものです。赤ちゃんに母乳をあげることで子宮の回復が促され、出産後の出血量が減少します。
そのため、ママと赤ちゃんの体調に問題がなければ、産後はどんどん授乳することが勧められています。
■ストレスを和らげる
慣れない育児や睡眠不足で心の余裕がなくなりやすい産後ですが、オキシトシンはママの精神面にもよい影響を与えてくれます。
オキシトシンには、ストレスによる心身への影響を和らげる効果があります。赤ちゃんが母乳を飲んでいる姿に、心がほっこりして気持ちが落ち着くのも、このホルモンによる影響といえるでしょう。
■特定のがんや病気になる確率が低下する
母乳育児によって、閉経前の乳がん、卵巣がん、子宮体がんが減少することがわかっています。また、骨がもろくなる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や、関節リウマチ、糖尿病などの生活習慣病を予防する効果も知られています。
母乳育児には健康面、精神面でよい影響があるので、積極的な母乳育児が推奨されています。
赤ちゃんへのメリット
母乳育児は赤ちゃんにとって、栄養を得られること以外にも多くのメリットがあります。
■感染症にかかりにくくなる
母乳には、感染症から赤ちゃんを守るための免疫物質が多く含まれています。母乳を飲むと、免疫物質が赤ちゃんの小腸にとどまり、細菌やウイルスの侵入を防いでくれます。
■小児がんや生活習慣病になる確率が低下する
母乳は小児がんを発症する確率を低くします。また、赤ちゃんが将来、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病になるのを予防してくれることがわかっています。
■内臓への負担が少ない
母乳は消化・吸収しやすく、赤ちゃんのからだに優しい作りになっています。粉ミルクに比べて腹持ちが良くないのは、それだけ消化・吸収がしやすいということです。
母乳に含まれる栄養と特徴
母乳の成分や栄養素は、赤ちゃんの成長に合わせて変化していきます。そのため、同じママから出る母乳でも、時期によって見た目や含まれる成分も違ってきます。
ここでは時期による母乳の変化についてご紹介します。
初乳の成分と特徴
母乳の大きな特徴が、免疫物質を含むことです。
特に、産後3~5日頃に分泌される「初乳(しょにゅう)」には、赤ちゃんを感染症から守るために多くの免疫物質が含まれています。初乳は黄色く、少し粘り気があるのが特徴です。
初乳の成分を見てみると、ミネラルやたんぱく質などの栄養素が豊富で、栄養価が高くなっています。さらに、効率的に栄養を吸収できるような成分になっているため、内臓の機能が未熟な新生児でも効率的に栄養を摂りやすい作りになっています。
成乳の成分と特徴
母乳は産後1~2週間の間に少しずつ黄色から白くなっていき、粘り気も減って「移行乳(いこうにゅう)」と呼ばれる状態に変化します。
さらに移行乳を経て産後2週間を過ぎる頃には、母乳は白くサラッとした状態になります。これが「成乳(せいにゅう)」です。
栄養成分も、初乳から成乳になっていくなかで変化していきます。成乳になるとエネルギーが高くなり、脂肪や乳糖などの栄養素が多くなります。反対に、ミネラルやたんぱく質は初乳よりも減少します。
母乳栄養児の方がアレルギーになりにくい?
母乳のほうが、粉ミルクと比べてアレルギーになりにくいと聞いたことがある方もいるでしょう。
しかし、母乳育児によってアレルギーになりにくい・予防できるという明確な研究結果は得られていません。
また、赤ちゃんの食物アレルギーを予防する目的で、授乳中のママがアレルギーの原因となる食品を避けることは推奨されていません。必要な栄養素が不足する可能性があるため、栄養バランスの整った食事をこころがけることが大切です。
母乳で栄養は十分?栄養が足りなくなることはあるの?
赤ちゃんは生まれて数ヶ月間、母乳だけで育ちます。
しかし、母乳だけでは栄養が不足するのでは?そのうち母乳の栄養が減っていくのでは?と思われるママもいるでしょう。ここでは母乳の栄養について見てみましょう。
母乳のみで不足しがちな栄養
■ビタミンK
ビタミンKは母乳中に含まれる量が少ない栄養素です。そのため、母乳栄養の新生児は、ビタミンKが不足しがちです。
ビタミンKが不足すると、赤ちゃんの消化管や脳に出血がおこる「ビタミンK欠乏性出血症」という病気が起こる可能性があります。
そのため、日本小児科学会はビタミンK欠乏性出血症の予防のため、生後3ヶ月までは1週間おきに「ビタミンK2」を投与することを推奨しています。
また、産後の入院中や1ヶ月健診に「K2シロップ」と呼ばれるビタミンKの入った甘いシロップを赤ちゃんに与えることで、ビタミンK欠乏性出血症を予防するようにしています。
母乳中の含有量は少ないものの、ビタミンKを多く含む食品(納豆や緑黄色野菜など)を毎日のママの食事に取り入れることも大切です。
■ビタミンD
母乳栄養児はビタミンDが不足しやすいことが知られています。
ビタミンDは、日光を浴びると皮膚で合成されますが、外出の機会が減っている場合には、より不足しやすい状態になります。
ビタミンDが不足することで心配されるのが「くる病」です。ビタミンDの不足により、カルシウムの吸収がうまくできず、骨や歯の成長に影響が出る可能性があります。
くる病では、膝の関節の変形や低身長、乳歯がなかなか生えない、虫歯になりやすいなどの症状がみられます。
ビタミンDを多く含む食品(サケ、サバ、イワシなどの魚や卵黄など)を積極的にママの食事メニューに取り入れましょう。また、晴れている日には赤ちゃんと散歩をしたり、日光浴を楽しむようにするといいですね。
母乳の栄養はいつまで続く?
母乳育児を続けるうちに、母乳に含まれる栄養が少なくなっていくのでは?いつまで栄養があるの?と心配になるかもしれません。
初乳と成乳では栄養成分が変化しますが、成乳は成分が一定になるため、栄養が少なくなることはないとされています。
しかし、赤ちゃんは成長に伴って、必要なエネルギーや栄養がどんどん増えていくので、母乳だけでは栄養が足りなくなります。
この足りない栄養を補うのが離乳食です。離乳食からの栄養の摂取量が増えると、母乳を飲む量もだんだん少なくなり、母乳を卒業する日がやってきます。
母乳育児は栄養面だけでなく、赤ちゃんにもママにもプラスの効果があるので、卒乳するその日まで授乳による赤ちゃんとのふれあいを大切にしてくださいね。
母乳と粉ミルクの違い
母乳と粉ミルクには、比較するとどんな違いがあるのでしょうか?それぞれの強みを見ていきましょう。
母乳と粉ミルクそれぞれの強み
母乳と粉ミルク、どちらも、赤ちゃんの成長に必要な栄養を補給でき、赤ちゃんの健やかな成長に欠かせないものです。
■栄養や含まれる成分の比較
母乳は、初乳・移行乳・成乳へと変わっていき、含まれる栄養成分が赤ちゃんの成長に合わせて変化します。
また、母乳の成分は赤ちゃんの生まれた時期によって変化します。早産で赤ちゃんを産んだママの母乳は、正期産(妊娠37週0日~41週6日までの出産)のママの母乳よりも、脂肪分や、脂肪分を効率よく消化できる酵素を多く含んでいるのです。早産で生まれた赤ちゃんはエネルギーを多く必要とするため、エネルギーを効率的に消化・吸収できる母乳は、赤ちゃんにとって重要な栄養源になります。
母乳には、さまざまな感染症から赤ちゃんを守る、免疫物質が含まれているのも強みです。ママが新型コロナウイルスのワクチン接種をした場合、母乳を通して赤ちゃんにその抗体が移行することも知られています。
一方、粉ミルクなどの人工乳は、栄養が変わらず安定しており、母乳で不足しやすいビタミンKやビタミンDが含まれている点が強みです。また、医療機関専用ですが、低出生体重児用の粉ミルクもあり、赤ちゃんの状態に合わせた商品も開発されています。
■特徴の比較
母乳は、粉ミルクで必要な哺乳瓶やお湯の準備、授乳後の消毒などの必要がなく、その場で赤ちゃんに与えられるのが強みでしょう。また、粉ミルクを継続的に購入する必要がなく、経済的なのも魅力です。
一方、粉ミルクはママでなくても授乳ができるため、パパと役割分担しやすいのが強みです。また、ママの毎日の食事内容や体調に左右されることがないため、ママへの負担を減らせるのもうれしいところです。
粉ミルクは腹持ちがよいので授乳の間隔が空きやすく、ママがまとめて休める時間が多くなります。夜間の授乳間隔が空きやすいのは助かりますね。
粉ミルクの場合、調乳に時間がかかりますが、最近では液体ミルクも販売されており、時間帯や場面に合わせて使い分けることもできます。
母乳でも粉ミルクでも赤ちゃんは育つ
母乳でも粉ミルクでも、赤ちゃんに十分な栄養を与えることができます。
2015年度の乳幼児栄養調査では、生後3ヶ月までの授乳方法として、母乳育児は半数程度、残り半数は母乳と粉ミルクを併用(混合)や粉ミルクのみであることがわかっています。
どの授乳方法でも赤ちゃんは元気に育つため、ライフスタイルに合った授乳方法を選択することが大切です。
授乳期のママの食生活と注意点
母乳育児には、ママの食生活が関係してきます。食事について、どんなことをどの程度気をつけたらいいのでしょうか?
ママの食べもので母乳は変化する?
通常、ママの食事で母乳の栄養に大きな差が出ることはないとされています。
しかし、極端な栄養不足や偏食は、赤ちゃんの栄養不足につながる可能性があります。実際に海外の貧困国・地域では、赤ちゃんの頃から低栄養が続いたことで、発育不良になる子どもも少なくありません。
栄養バランスの整った食事を摂ることは、母乳の栄養不足を防ぎ、赤ちゃんに十分な栄養をあげることにつながります。
授乳期に摂るとよい栄養素
授乳期間中は、栄養バランスの整った食事を心がけ、特に下記の栄養素を多く含む食品を積極的に取り入れましょう。
■たんぱく質
たんぱく質は、筋肉や血液、細胞などを作るのに欠かせません。肉や魚、卵、大豆製品などに多く含まれています。
■葉酸
葉酸は血液や細胞を作るのに必要な栄養素です。ほうれん草やモロヘイヤなどの緑黄色野菜や、枝豆、いちごなどに多く含まれています。
食べ物からは十分な量をとることは難しいため、サプリメントを併用するといいですね。
■カルシウム
カルシウムは、身体の機能を維持したり、骨や歯を作ったりするのに必要な栄養素です。牛乳やチーズなどの乳製品、ちりめんじゃこやイワシなどの小魚に多く含まれます。
■鉄分
鉄分は、血液を作るのに必要な栄養素です。にんじんやかぼちゃなどの緑黄色野菜、レバーや赤身の肉や魚などに多く含まれます。
授乳中は注意したほうがよいもの
授乳中に避けたい飲み物は下記のとおりです。
■お酒
お酒に含まれるアルコールは、飲酒後30~60分で濃度が最大になり、母乳に移行します。飲酒した時間と、赤ちゃんの授乳のタイミングが近ければ、赤ちゃんがアルコールの影響を受ける可能性が高くなります。
また、長期間の飲酒や、飲酒量が多い場合、母乳の分泌量が減ったり、深く寝入ってしまって赤ちゃんの泣き声に気づけない場合も。
そのため、授乳期間中はアルコールを避けることが勧められます。
■カフェインを多く含む飲み物
授乳中は、カフェインの多い飲み物にも注意が必要です。日本では、授乳中のカフェインの摂取量の目安は決められていませんが、カナダ保健省(HC)ではコーヒーの摂取量の目安をマグカップで約2杯としています。
また、カフェインが多く含まれる飲み物として、エナジードリンクがあります。エナジードリンクの多くは、妊娠中や授乳中の飲用を控えるよう表示がされていますので、飲まないようにしましょう。
授乳中は薬をやめた方がよい?
授乳中は薬を飲まないほうがよいと聞いたことがあるかもしれません。
しかし、母乳を介して赤ちゃんの体に入る薬物量は、赤ちゃんに対する治療量の10%にも満たないことが多いため、授乳を禁止したほうがよいとされる薬物は意外に少ないのです。
授乳を禁止することを考慮する薬としては、赤ちゃんに大量に薬物が移行する可能性が高いものや、母乳の分泌を抑えてしまうもの、抗がん剤などが挙げられます。
もし、持病や病気の治療のために薬が処方されている場合は、医師に授乳中であることを伝え、比較的安全性の高い薬を処方してもらいましょう。
自己判断で薬を中止してしまうと、ママの病状をコントロールできなくなったり、悪化してしまったりすることもあるため、必ず医師に相談することが大切です。
母乳は冷凍保存・解凍で栄養は変化する?
赤ちゃんを預ける場合や、NICU(新生児集中治療室)に入院中の赤ちゃんに母乳を届ける場合など、母乳の冷凍保存が必要になることがあります。冷凍保存や解凍をすると、母乳の栄養は変化するのでしょうか?
冷凍保存・解凍と栄養の変化
母乳を冷凍保存しても、栄養や免疫物質はほとんど変わりません。ただ、解凍するときに、脂質や一部の免疫物質が減少する場合があります。
大幅に減るわけではなく、赤ちゃんの成長や感染予防の効果は発揮されますので冷凍保存を避ける必要はありません。
冷凍保存の方法と注意点
母乳を冷凍保存するときは、専用の母乳バッグを使います。搾乳するときや、母乳バッグに母乳を入れるとき、解凍して使うときは、必ず手を洗うようにしましょう。
母乳バッグには必ず搾乳した日付を書いておき、古いものから使います。冷凍庫では目安として3ヶ月保存できますが、解凍したものは冷蔵庫なら24時間、室温(25℃)なら4時間以内に使いましょう。
解凍は下記のいずれかの方法がおすすめです。
- 冷凍した母乳を冷蔵庫でゆっくり解凍する
- 室温で解凍する(解凍後に放置しないよう注意する)
- 人肌程度のぬるま湯につける(30~40℃で20分以内に行う)
- 流水をあてて溶かす
母乳は何歳まで?離乳食と一緒にあげてもよい?
母乳は何歳まで与えればいいかという明確な基準はありませんが、WHOでは、2歳かそれ以上、母乳育児を継続することを推奨しています。
離乳食を開始後や離乳が完了したあとも、子どもが欲しがる間は母乳を与えても問題ありません。
ただ、ママの職場復帰や保育園への入園などで、母乳を与えるのが難しくなる場合には、卒乳に向けて少しずつ授乳回数を減らしていくといいでしょう。
母乳での授乳に悩んだら
母乳育児では、おっぱいのトラブルが起こることもあります。おっぱいの張り、しこり、痛みが出たり、赤ちゃんがおっぱいをうまく飲めなかったりと悩むことも多いでしょう。
おっぱいトラブルは、早めに対処できないと乳腺炎になる場合も少なくありません。
かかりつけの産婦人科や母乳外来など、母乳について相談できる場所を事前に確認しておくと、もしものときに安心です。いつもと違うと感じたら、早めに相談することをおすすめします。
母乳には栄養たっぷり!無理せずじょうずに向きあって
赤ちゃんの成長に合わせた栄養素や免疫物質が含まれているほか、ママの精神や身体的なメリットもある母乳。病院や自治体など、さまざまなところで推奨されているため、母乳が出る場合は、積極的に赤ちゃんにあげられるとよいでしょう。
一方で、母乳の出方には個人差があるため、完全母乳ができる人もいれば、混合栄養の人、粉ミルク育児の人もいます。母乳育児ができないことに悩んでしまうママもいます。
どの授乳方法にも強みがあるので、無理はせず、自分に合った授乳方法を選んで問題ありません。赤ちゃんの体重がしっかり増えていれば元気に育っている証拠です!母乳や授乳は無理せず向き合えるとよいでしょう。
- 母乳は栄養面だけでなくママの体や精神面にもメリットがある
- 母乳育児中はママもバランスのよい食生活をしよう
- 粉ミルクでも赤ちゃんは十分な栄養を摂取できる
- 授乳は無理せず家庭に合わせて母乳・粉ミルクを使い分けよう
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