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精子の機能は男性が高齢になると妊娠・出産に影響する?【産婦人科医監修】
男性が高齢の場合に何か影響はある?
高齢出産は医学用語ではなく、明確な定義はありませんが、いわゆる「高齢出産」といわれるのは30代・40代での妊娠・出産です。
「高齢出産」に関して詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
高年齢での妊娠・出産に関して、女性の場合は母体と赤ちゃんへのリスクが増えることがわかりましたが、男性が高齢の場合、何か影響はあるのでしょうか?
精子は作られ続けるが加齢によっての影響はある
出生後は卵巣内で作られない卵子とは違い、男性は高齢でも精巣内で精子は作られます。
70日〜80日間くらいで精子は作られています。
しかし、男性も30代と比較して50代くらいになると当然精液量も減り、精子の量・運動率も低下してきます。そのため受精させて妊娠する割合は下がります。
男性の場合は、男性が高齢になると流産が増えます。精子自体がDNAの異常を起こします。これは医学的には「DNAの断片化」といい、それによって流産率が上がってくるということはいわれています。
セックスの行為や回数が減る
男性の場合は年齢が高くなるとインポテンツ(勃起障害)でセックスができなくなるなど、セックスの機能が衰えるため通常の生活では妊娠することが難しくなります。
たとえば糖尿病だとたたないなど、勃起障害も起こります。
ただ、射精して精子を取り出せば人工授精などで妊娠させることは可能です。
コラム
男性も45歳を超えると染色体異常の割合や精神疾患が増えてくるなどといったデータも出つつはあるもののエビデンスとしてはまだ確証を得られておらず、女性ほど明確なデータではありません。
卵子の染色体異常は母体の年齢が上がるとそれに伴って増加します。そのような女性側のデータが多くありますが、それは女性側が悪いというわけではなく、男性と女性の生物学的な「差異」なのです。
精子の機能が下がることはある?
高齢男性の加齢による精子への影響に関してここまでお伝えしましたが、女性であると卵子が減るように男性の精子も何かしら機能低下することなどあるのでしょうか。
加齢だけではない原因があります
一般的には、肥満や糖尿病などはよくないといわれています。それから喫煙、ストレス、睡眠不足などは非常によくないですが、生活習慣の改善で精子の機能の衰えを先延ばしにできる可能性があります。
■加齢以外の精子の機能低下
⚪︎肥満
⚪︎喫煙の習慣がある
⚪︎PCやスマホのブルーライトを長時間あびている
⚪︎食生活(食品添加物、過酸化脂質の過剰摂取など)
⚪︎ストレス
⚪︎睡眠不足
⚪︎デスクワークなどでの血行不良
精子の数はそのときの状態、日にちの変動にもよるため、1回取っただけではわからないことがあります。精子を調べる場合は数回、少なくとも2〜3回取って調べることが大切です。
熱を帯びたPCをひざに乗せ、おちんちんに当て続けたら精子が減ると聞いたことがあるけれど本当?
エビデンスの確証はありませんが、高熱作業は避けたほうがいいです。
精子というのは温度に弱いんです。陰嚢(いんのう)の中にある睾丸(こうがん。精巣のこと)は正常な位置だと体外にぶら下がる形になって出てますよね。それは精子の温度を体温より低く保つためです。
精子が蓄えられている陰嚢にはヒダがたくさんあります。ヒダは皮膚の表面積を多くしています。ツルッとしているよりもグジャグジャとシワになっているほうが表面積が多いんですよね。
表面積が多いということは、どういうことかというと「熱を放出しやすい」んですよ。
精巣の機能を保つためには体温より低い温度を保たないと機能に影響を与えます。体外にぶら下がることによって、精巣の正常温度は約31〜33度になり平均体温より約3〜4度低い状態に保たれています。
睾丸が下がってきていない「停留精巣※」の人は、平均体温の36〜37度にずっとさらされます。そのため精子にとっては温度が高いまま保たれるため、無精子症になることが多いといわれています。
質問にある「熱を帯びたPCを睾丸に当てた」ぐらいでは大丈夫だと思います。ただ昔から、溶鉱炉など高熱にさらされる場所で作業している人は精子の数が少ないということはいわれています。
そのため、長期間にわたって睾丸が高熱にさらされる作業というのは避けたほうがいいかもしれません。
※停留精巣(ていりゅうせいそう):精巣が陰嚢内に存在せず、睾丸が下がってきてない状態。
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高齢妊娠で知っておきたい大切なこと
ライフプランについては、女性のみならず男性も考えることが極めて大切です。
産婦人科医の立場から言うとね、高齢妊娠は妊娠高血圧症候群や前置胎盤も増えて糖尿病も増えて……。母子のリスクが高く非常に危険なんだけれども、現在は本当に病院でよく管理ができます。ですから、高齢妊娠でも恐れないで妊娠を継続してほしいと思います。
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第19回