【トモニテお悩み相談】知っておきたい高齢妊娠,出産のリスクについて【産婦人科医監修】
そもそも「高齢出産」とは?何歳からのこと?
「高齢出産」という言葉は一般的には使いますが、実は医学用語ではないんです。
日本では「高年初産婦」という言葉を使っていて、「35歳以上の初産婦」と定義しています。以前は30歳以上を高齢出産と呼んでいた時期もありましたが、30歳以上で妊娠する人も増えてきて年齢も引き上がりました。
高齢出産については明確な定義はないんですよね。ただし、高年齢での妊娠、出産には注意すべきことがあります。
20代と40代の妊娠、出産は何が違う?
やはり、いわゆる「高齢出産」といわれる30代後半、40代の妊娠で知っておかないといけないことは、母親の年齢が上がってくると赤ちゃんの亡くなる割合が上がってくることです。これは40歳を超えると急に上がります。
妊婦の亡くなる割合も上がってきます。できれば早めに妊娠、出産を、というのはこういう理由があるわけです。
なぜ赤ちゃんが亡くなる割合が増えるのかというと、一つは高年齢の妊娠ではおなかの赤ちゃんの染色体の異常が多くなるからです。
たとえばダウン症候群だと、40歳では約100人に1人、45歳では30人に1人、ダウン症候群以外の染色体の異常も含めると40歳だと66人に1人、45歳だと21人に1人と増えていきます。
ダウン症候群は21トリソミーといって、21番目の染色体の異常です。染色体にはいくつも種類があって、染色体の番号が小さいほうになればなるほど早期の流産につながります。着床するかどうか、という頃に流産してしまいます。このことから考えると、ダウン症候群は比較的軽い染色体の異常、というわけです。
赤ちゃんのおもな染色体異常
- 21トリソミー(ダウン症候群)
- 18トリソミー(エドワーズ症候群)
- 13トリソミー(パトー症候群)
お母さんの問題でいうと、まず「妊娠高血圧症候群」が増えます。35歳以上で増えて、40歳以上になると急増するんです。
それに「妊娠糖尿病」。35歳以上と、25歳未満で比べてみると8倍も違いがあります。
というように、高齢出産になると、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病が増えて、それから常位胎盤早期剥離、前置胎盤とざまざまな問題が増えてきます。
当然のことながら難産になって、帝王切開になる割合も増えてくるんです。
高齢出産のママの妊娠中のリスク
- 流産・死産
- 早産
- 妊娠高血圧症候群
- 多胎妊娠
- 胎位異常
- 妊娠糖尿病
- 前置胎盤
- 常位胎盤早期剥離
高齢出産については、以下の記事も合わせて参考にしてください。
「高齢妊娠、出産」になったら? リスクを知って備えることが大切
高年齢で妊娠した場合は、リスクを十分に知っておくことが大切です。しかし今は、非常に妊娠中のケアが行き届いています。
たとえば「妊娠糖尿病」では、初期の段階から検査をします。昔は尿糖が出たら糖尿病と診断していたんです。今はもうそういうことは関係なく初めから調べます。
妊娠糖尿病と診断されれば、インスリンを打って血糖をコントロールすることになっています。妊娠中インスリンを打っている妊婦さんも珍しくありません。
常位胎盤早期剥離は非常に予測が難しいので注意が必要ですが、前置胎盤はエコー(超音波)検査で早期に診断がつきます。注意しながら経過を観察して、出血があれば早期に入院したりとか。
そういうふうに現在では昔より、高年齢の妊娠でも管理ができるようになってきていますから、恐れないで妊娠を継続してほしいなと思います。
しかし、お母さんが準備や心構えをしておくことは大切です。早産が起きやすいから、こうなったときは受診して誰に来てもらうとか。家族やパートナーとも十分にリスクについて相談して、前もって備えておく必要はあります。
日本は、周産期死亡率も、妊産婦死亡率も低い国です。要するに世界の中でも日本は安全にお産ができる国なんです。
医師のアドバイスをきちんと守っていれば、そこまで恐れず安心して過ごしてほしいと思います。
ただ初めから高齢妊娠、出産で大丈夫ですよ、ということではありません。リスクの少ない妊娠の適齢期があるのですよ、ということもお伝えしておかなければなりません。
出生前診断について考えておいたほうがよいことは?
出生前診断はこれまでに染色体異常の赤ちゃんを出産したカップルや、カップルのいずれかが染色体異常を持つケースなどが行うこととなっていますが、高年齢で妊娠したケースも対象に当てはまります。
出生前診断で大事なことは、検査を行う前に夫婦、もしくはパートナー2人で十分に相談しておくことです。
一番簡単に行えるのは母体血清マーカーという検査で、お母さんの血液で調べます。
トリプルマーカー、クアトロテストとあって、最近ではNIPT検査というのも出てきました。これはおもに21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーを調べる検査です。
もしNIPT検査で陰性が出たとしたらほとんどが陰性だと考えてよいのですが、陽性だった場合も必ずしもダウン症候群などの異常があるというわけではないんですね。
この検査で陽性が出た場合は、羊水検査で確定診断をして専門知識を持ったスタッフ(遺伝カウンセラー)からカウンセリングを受けるというのが前提なんです。
ところが十分にカウンセリングが行えない、認定施設ではないところで受けた場合、
結果が陽性だったとしても、そのままにしてしまうケースがあります。
そうして悩んだ挙句、検査を受けた人たちがどうしたらよいかわからなくなって困ってしまうんです。
全国に十分に認定施設がないことも、専門の医師が行わない施設があることも問題ではあります。そして出生前診断は赤ちゃんの権利、女性の権利を考えると非常に難しい問題でもあります。
ただ、カップルで「出生前診断を受ける」と決めたときには、認定施設で遺伝カウンセラーから十分にカウンセリングを受け、結果が出たらどうしていくかについても考えたうえで受けてほしいなと思います。
以下の記事も参考にしてください。
【注意事項】
本記事は子育て中のママ・パパなど悩んでいる人々に役立つ情報の提供を目的とし、診療を目的としておりません。
本サイトでは正確かつ最新の情報を提供できるよう最善を尽くしておりますが、掲載された情報に基づく判断につきましては、ユーザーの責任のもと行うこととし、ご自身の判断により適切な医療機関やかかりつけの病院などに相談・受診してください。
本サイトのご利用により万が一何らかの損害が発生したとしても、一切責任を負いかねますのでご了承ください。
連載の目次
【トモニテお悩み相談】生理(月経)は実は必要ないもの?【産婦人科医監修】
第1回避妊以外の効果? 低用量ピルの話【トモニテお悩み相談 低用量ピル前編】
第2回ピルって怖くない? 副作用は?【トモニテお悩み相談 低用量ピル後編】
第3回【トモニテお悩み相談】かかりつけの婦人科・産婦人科は必要⁉︎【産婦人科医監修】
第4回【トモニテお悩み相談】辛いときの対処法 -【産婦人科医監修】
第5回産婦人科医が答える!悩み・疑問Q&A 生理編【1】【産婦人科医監修】
第6回産婦人科医が答える! 悩み・疑問Q&A 低用量ピル編【産婦人科医監修】
第7回産婦人科医が答える!悩み・疑問Q&A 生理編【2】【産婦人科医監修】
第8回【トモニテお悩み相談】もしものために知っておこう!アフターピル【産婦人科医監修】
第9回【トモニテお悩み相談】どれを選ぶ? 避妊方法について知っておこう【産婦人科医監修】
第10回【トモニテお悩み相談】妊娠中のセックス コンドームって必要?【産婦人科医監修】
第11回【トモニテお悩み相談】妊娠中にセックスはしてもいい?【産婦人科医監修】
第12回【トモニテお悩み相談】性感染症になると赤ちゃんに影響がある?【産婦人科医監修】
第13回【トモニテお悩み相談】生まれたときから卵子が減り続けているって本当?【産婦人科医監修】
第14回【トモニテお悩み相談】知っておきたい高齢妊娠,出産のリスクについて【産婦人科医監修】
第15回精子の機能は男性が高齢になると妊娠・出産に影響する?【産婦人科医監修】
第16回産婦人科医が答える! 悩み・疑問Q&A 高齢妊娠・出産編【産婦人科医監修】
第17回妊娠中に知っておきたい性感染症① 性器ヘルペスウイルス感染症【産婦人科医監修】
第18回妊娠中に知っておきたい性感染症② 性器クラミジア感染症【産婦人科医監修】
第19回